■追い詰められたプーチン。懸念される“核の前に化学兵器使用”の「禁じ手」 | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:追い詰められたプーチン。懸念される“核の前に化学兵器使用”の「禁じ手」2022.08.23より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/news/549252
 
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ロシアによるウクライナへの侵攻開始から6カ月。西側諸国から大量の兵器供与を受けるウクライナ軍の攻勢が伝えられますが、この先戦況はどう変化してゆくのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、各地で窮地に立たされているロシア軍の厳しい現実を詳しく紹介。さらに今後の戦争の行方を読むとともに、戦後の世界秩序をどう構築していくべきかについて考察しています。

ウクライナ戦争の推移

ウクライナ戦争はウ軍がロシア後方の補給基地、空軍基地を叩き、総反撃の準備が整ってきた。ロ軍はウ軍総反撃の対応策を取る段階になってきた。今後を検討しよう。

ウクライナでの戦闘では、ウ軍が、300km程度の射程も持つ弾道ミサイルかロケット弾を持ったことで、大きく変化した。ロ軍の弾薬庫や兵站拠点、司令部、空軍基地などを撃破して、ロ軍の攻撃力を大幅に減少させている。

特にクリミア半島の鉄道拠点でもあるアゾフスコイエの兵站拠点、サキ海軍航空隊基地、ベルベク海軍航空隊基地、フバルディアの発電所、マイスコイの軍用貯蔵庫などを次々に攻撃している。

2つの海軍航空隊基地の爆発で同部隊の戦闘能力が半減したようである。退避行動が遅れた代償は大きい。

このため、遅まきながら、クリミアから少なくとも航空機24機とヘリコプター14機をロシア本土などに退避させた。クリミアが戦場になってきたことで、航空機を置くことができないとやっと判断したようだ。

クリミア橋(ケルチ橋)に対してもミサイル等で攻撃したが、最新鋭のS350を大量配備して、防空体制を固くしていたので、迎撃できたようである。1機のUAVまたは1発のミサイルでは迎撃されることがウ軍もわかり、次回はミサイル攻撃では飽和攻撃になるはずだ。UAVでも複数機での攻撃になりそうで、ケルチ橋も長くはもたないと思われる。

そのほか、UAVでセバストポリの黒海艦隊司令部が攻撃され爆発があったが、迎撃に成功したともいわれている。それにしても、防空システムが黒海艦隊司令部にはないのであろうか。もしUAVとすると、制空権をロシアが持っていないことになる。

対空ミサイルで対処できずに、対空機関砲を撃つような状態である。対空レーダーを事前に破壊され、かつ早期警戒機を退避したことで、早期警戒ができなくなったようである。

逆にウ軍は、多様な手段でクリミアのロ軍を攻撃できるようになったということになる。

このように、クリミアのウ軍攻撃で大被害が出たことで、ロシア黒海艦隊司令長官のイーゴリ・オシポフ氏が解任され、ビクトル・ソコロフ氏が就任した。

宇ゼレンスキー大統領も「ロシア軍施設に近づくな」とクリミアの住民に注意をしている。ロシア系住民もクリミアの住宅を売りに出し、ロシア本土に退避しているようであり、住宅の売り出し広告が多数出ているという。

そのほか、ロシア本土のベルゴロド州のスタールイ・オスコル飛行場やティモノヴォの弾薬庫、リシチャンスクのロ軍司令部、ポパスナのワグナーの基地、メルトポリの司令部などをHIMARSや長距離ミサイルで叩いている。ワグナーの基地では100名以上が死亡して、200名程度まで拡大する可能性があると言われている。

この長距離ミサイルを大量にウ軍が持てるということは、ATACMSしかないと思うが、米国の見解によると、クリミア攻撃手段は、米国提供の兵器ではないと否定している。しかし、西側兵器の使用はOKであり、米国以外供与のATACMSである可能性は、否定していない。

ウクライナ製ミサイルとも最初、思ったが、これほど大量には作れないので、それはないはず。秘密裏にATACMS供与というのは、正しかったようだ。

戦術核の前に偽情報流し化学兵器を使用するロシア軍

このため、ロ軍は、ドンバス方面に優秀部隊を集めて、一点突破を志向し始めている。それがピスキーであり、ウ軍は、持ち堪えられなくて撤退をした。ここではTOS-1を大量投入して、大量砲撃をしている。ドネツク市の郊外であり、大量補給ができるからであろう。しかし、ピスキー占領までで、ロ軍も消耗が激しく、それ以上には攻撃できないようである。


ドンバスのソルダーは、ロ軍最強部隊のスペツナズを投入したが、ウ軍も特殊部隊の守備部隊にしたことで圧倒できなかったようだ。この地域には、英国から供されたストーマー対空ミサイル自走砲を配備したことで、ロ軍KA-52攻撃ヘリが4機も撃墜されている。

ドンバス上空では、ロ軍とウ軍の戦闘機同士の空対空戦闘が発生したらしい。当面の激しい戦闘はドネツク郊外であるが、ここの戦いでもロ軍の攻撃が弱まってきた。

ロ軍はハリキウ市へも無差別砲撃を増加させている。ここもロシア本土から近いので補給できるので、砲撃を強化できるが、ロ軍部隊の多くを他地域に回したので、ウ軍陣地への攻撃ができないようである。

ウ軍の主力部隊も、南部ヘルソン州であるので、他地域ではロ軍陣地に攻撃することもできない状態である。しかし、ロ軍が手薄なイジューム南でウ軍が、イジュームに向けて少し前進している程度である。

ロ軍ワグナー部隊も撃滅されたので、攻撃力が相当に落ちている。

このような状況であり、ロ軍はウクライナで「これ以上どこにも攻撃できない」状況にあると、アンドリー・ザゴロドニュク元ウクライナ国防相が述べている。米軍も同様の見方をしている。

このようなウ軍の活躍と比例して、ロ軍の司令官の解任が増えていて、作戦担当の司令官の30%から40%が解任されているようである。

この状況を改善するために、ロ軍は、ウ軍が東部で化学兵器攻撃の偽情報を作り、報復としてのウ軍への化学兵器攻撃する可能性がある。戦術核使用の前に、化学兵器使用のようだ。

前回、疑問視したAGM-88対レーダーミサイルの発射方法であるが、ウ軍はアメリカの支援のもとでミグ戦闘機に搭載できるよう改修したとのことである。疑問が1つ解決した。

そして、サポリージャ原発では、核を盾にして、ロ軍の武器などの保管場所にしている。原発地域の非武装化を43カ国が要請しているが、ロシアは拒否している。しかし、フランスのマクロン大統領が、プーチンと会談して、プーチンがIAEAの査察を認めたというが、どうなりますか?

それと、ヘルソン州全体を指揮するロ軍司令部は、ヘルソン市から最終的にはメルトポリに移転したが、その移転先を攻撃されて、大打撃を受けた。このため、ヘルソン州でのロシア帰属の住民投票を9月11日にはできなくなり、大幅な延期になったようである。

そして、ヘルソン州のドニエプル川西岸地域に展開するロ軍では補給が細り、不満が高まっている。そのような事態の時、チェチェンのカディロフツィが憲兵隊的な役割で、ロ軍に補給がないために攻撃できない事態なのに、攻撃しないと叱咤したことで、現地ロ軍と銃撃戦になり、多数の死者が出た模様である。

ドミエプル川西岸地域のロ軍は、補給が細り、崩壊も時間の問題になっている。しかし、橋を補修すると、その途端にウ軍の攻撃を受けるので、補修をあきらめて、フェリーを大量投入して、それで補給を確保する方向でロ軍は事態を改善したいようである。

ドミエプル川西岸地域のロ軍30BTGの1万8,000名分の補給がそれでできるかどうかは疑問である。

しかし、ヘルソン州でも、ウ軍は本格的な奪還作戦をしていない。ロ軍の補給停止で、ロ軍が弱るのも待っているようであり、次は、いつウ軍が反撃を開始するのかということになる。攻撃兵器が足りないともザゴロドニュク氏は述べているので、西側からの攻撃兵器支援を待っているようだ。                                 

ウクライナ戦争後の世界秩序構築を見越し動き始めた中国

この状況でも、米国防総省は19日、ウクライナ軍に対する7億7,500万ドル(約1,060億円)規模の追加の軍事支援を公表した。ドイツや英国も追加援助を行っているので、益々、ウ軍の装備は充実してくる。

今回の支援でも、A-10攻撃機の供与はなかったようであるが、ウ軍はA-10の訓練を開始している。MIG-29も徐々に稼働機種が減ってきたので、欧米製の攻撃機にシフトするしかないようだ。

ドイツはPzH2000自走砲向けに、155mm榴弾「ボルケーノ」を255発供与するという。この砲弾は射程距離70kmで誤差5mの砲弾なので、防空ミサイルでの迎撃ができない。これは、アントノフスキー橋やカホフカ橋の砲撃に使える。HIMARSのロケット弾とは違い、落下速度は早いことによる。

一方、ロシア軍は、窮地に立つことになる。この窮地に北朝鮮軍が参戦するようであり、その動向に焦点が当たることになる。

一方、前回に述べた8月下旬、カザフスタンとの国境に近いアストラハン州のアシュルクで、ロ軍とベラルーシ軍が合同軍事演習を行うとしたが、8月末に行うロシアの大規模軍事演習に、中国軍も参加するとし、極東地域の大規模軍事演習「ボストーク2022」となり、インド、ベラルーシ、モンゴルなども参加するという。

ということで、カザフスタン近くで数日演習後、極東地域に場所を移動させて演習することになった。これは、中国がロシアに軍事演習に参加する見返りに、場所を変えさせたようである。

ロシアは、中国やインドに不満を持っている。ロシアの味方ではなく、西側諸国を敵対視しないことにイライラしていた。その上、カザフスタンはロシアから離れて、中国にシフトしたことで、カザフにはより以上の不満があった。

この状況で、中国はロシアの「カザフへの敵視」から「日本への敵視」に変えさせて、極東での演習に切り替えさせたようである。

ロシア安全保障会議議長パトルシェフ氏の日本を敵視する発言は、この文脈から出ている。中国国内も反日的なムードにして、ロシアを変化させて、反日に巻き込んで、中国はカズフスタンを助けた。

このため、秋葉安保局長は17日、中国・天津市で、中国外交担当トップの楊潔篪氏と会談したが、この会談は中国からの要請で行われ、一連の根回しである。このため、日本政府もパトルシェフ氏の反日発言に過剰反応しなかった。

というように、ニュースを読むとき、いつも一連のニュースをつなげて見ることである。それが日本の評論家・学者の足りない所ある。その裏に隠れた意図を読まないと、正確な世界情勢が読めないですよ。

中国の習近平国家主席は、9月にプーチンとの会談のため、中央アジアを訪問するようだ。停戦に向けてロシアの条件を話し、11月にはバイデン米大統領と会談し、戦後体制を話すことになる。

ロシアの本当の味方は、オルラン10を大量に失った代わりとして、1,000機の偵察ドローンを提供するイランと工兵、輸送隊、砲兵、特殊部隊を派遣する北朝鮮、シリア、ベラルーシであろう。

イランは、ロシア支援というわけではないが、早期に核兵器を持てば、第2戦線を中東に作ることができる。この対応で、イスラエルは、サウジやトルコと国交正常化し、かつ、イラン攻撃時にサウジ領内を戦闘機が飛べるような合意もできている。

しかし、中東で戦争が起きると原油価格の高騰を招くことになるし、ウクライナ戦争が終了していないなら、第3次世界大戦になる可能性もある。勿論、ロシアはイラン参戦を期待しているようだ。

しかし、それでも、現時点ではロ軍の劣勢は如何ともしがたい。北朝鮮軍が参戦しても同じである。少し敗戦を遅らせることしかない。

どちらにしても、ロシア敗戦に向けて、次の世界秩序を考えて、その準備をする必要になってきている。

この時、中国の重要性が出てくる。中国も米国と調整したいようである。

次の世界秩序構築を中国も見て、動き始めたようだ。

米中が経済合理性で協議し決めるしかないロシアの行き先

ロシア敗戦後の世界秩序


ロシアは、核兵器を持つので、戦争での敗戦はない。ロシア国内での反戦活動や国内選挙での国民の声により、戦争を終わらせるしかない。

ウ軍もロ軍をウクライナ領内から追い出すまでしかできない。ロシアの改革は、民主化することと、ウクライナへの賠償と戦争犯罪の追及で行うことになる。

この過程でプーチンを国外に追い出すことになる。そして、ナヴァーリヌイ氏を民主化のトップに据えることになる。ここまでは前回と同じであるが、民族国家群に分割できるかどうかが分からない。

その方向には、中国は反対するからである。中国としてもロシアの存在が必要であり、西側諸国との対決のためには、仲間が必要であり、その中核がロシアであるからだ。

この調整を米国と中国で行い、中国をロシアから離すしかない。

中国も経済合理性のないロシアとは、そりが合わないようであり、欧米側は、経済合理性で中国とは会話ができる。

経済合理性で、中国と協議して、ロシアの方向を決めるしかない。

しかし、イランなどの参戦で中東に火が点けば、第3次世界大戦になり、このシナリオとは違うことになる。これを心配するが、まだ、その心配は早いようだ。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年8月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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