■マンデラ効果とは何か?不特定多数が「偽の記憶」を真実だと思い込んでしまう集団的な誤解 | タマちゃんの暇つぶし

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カラパイア:マンデラ効果とは何か?不特定多数が「偽の記憶」を真実だと思い込んでしまう集団的な誤解 2022年07月24日より転載します。
 
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https://karapaia.com/archives/52278286.html
 
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 大勢の人が当たり前に知っている事実だったはずなのに、全部デタラメだったという経験はあるだろうか?

 例えば、映画「スター・ウォーズ」シリーズに登場するC-3POは銀色(本当は金色)という思い込みや、白雪姫の王妃のセリフは「鏡よ、鏡(Mirror, mirror on the wall)」であるといった思い込みだ(英語では本来「魔法の鏡よ / magic mirror on the wall」)。

 これをマンデラ効果と呼ぶそうだ。

 この効果が初めて知られるようになったのは2010年のこと。南アフリカの指導者ネルソン・マンデラは1990年代に釈放され、2013年に亡くなった。

 それなのに当時、なぜか彼が1980年代に獄中死したと思い込んでいる人間が大勢いたのだという。

 この集団的な誤解を説明するために、超常現象の研究家であったフィオナ・ブルームが提唱した概念がマンデラ効果なのだという。
 

マンデラ効果の原因は多次元宇宙かタイムトラベラーか黒魔術か?


 提唱者であるブルームの理論は単なる疑似科学で、マンデラ効果の原因は多次元宇宙の影響であるとしている。

 彼女はまた、アメリカのSFテレビドラマシリーズ「スタートレック」に登場するホロデッキの例えも用いている。

 ホロデッキとは超リアルな仮想現実を作り出す架空の装置のことなのだが、彼女によると、記憶の齟齬(そご)はソフトウェアのバグによるものなのだそうだ。

 ほかにもタイムトラベラーによって歴史が改変された証拠だとする陰謀論的な説や、サタンや黒魔術による攻撃によって生じた歪みだとする説もある。
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心理学者によると「記憶の誤り」と「社会的な作用」に原因あり


 一方、心理学者は、記憶の誤りと社会的な作用によってマンデラ効果を説明しようとする。

 たとえば、記憶障害のひとつに「作話」という症状がある。

 これは、起きてもいない出来事や経験を誤って思い出してしまう症状で、この症状が現れている本人には嘘をついているつもりはないのだが、話している内容は正しくない。

 このような偽の記憶の形成は、日常生活の中では比較的一般的なことで、色々なやり方で作り出される。

 そのひとつに「ディーズ-ローディガー=マクダーモット・パラダイム(Deese-Roediger and McDermott paradigm)」がある。

 これは関係性の高い単語を含む単語リストを暗記しようとすると、そこになかったはずの単語まで記憶されてしまうというものだ。

 ”ベッド”や”枕”といった単語が記載されたリストを暗記しようとすると、リストにはなかった”睡眠”という単語が含まれていたと勘違いするのだ。
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現実と想像を区別できない「ソース・モニタリング・エラー」


 記憶の不正確さは「ソース・モニタリング・エラー(source monitoring error)」でも生じる。

 これは現実と想像を区別できない現象で、心理学者のジム・コーンが「ショッピングモールの迷子」という方法で実証した。

 コーンは自分の家族に子供の頃の出来事をいくつか話した。その内のひとつは、兄弟がショッピングモールで迷子になったというものだったのだが、じつはこれは作り話だった。

 それなのに、これを聞いた彼の兄弟は実際にあったと信じたばかりか、さらに細かい内容まで付け足して語ったのだ。

 認知心理学者のエリザベス・ロフタスがこれをより大きな集団に対して実施してみたところ、被験者の25パーセントが偽の出来事を事実であると思い込んだという結果が得られている。

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2022年03月20日

 
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親しみのない事柄を省略してしまうスキーマによる認知の歪み


 だがマンデラ効果については、多くの事例が「スキーマ動因エラー(schema driven error)」によるものだろう。

 「スキーマ」とは、認知心理学の先駆者の一人であるフレデリック・バートレットが提唱した概念で、知識や経験の集合体のことだ。それは物事の理解を楽にするのだが、同時に歪みをも作り出す。

 バートレットは「幽霊の戦争」というカナダに伝わる伝承を被験者に読み聞かせるという実験を行なった。すると被験者はあまり親しみのない事柄については省略し、情報をもっと理解しやすいものに変えることに気がついた。

 このプロセスは「意味の後の努力(effort after meaning)」と呼ばれるもので、現実の状況でも起きている。

 例えば、心理学者の研究室の中にあるものを思い出してもらう実験では、大抵は記憶されているもの(本棚など)とほとんど無視されてしまうもの(ピクニックのバスケットなど)があることがわかっている。

 また被験者に記憶の中の時計を描いてもらうと、ローマ数字の 4 の部分が IIII ではなく IV と描かれる傾向にあるが、これもスキーマによる認知の歪みだ(時計では見栄えがいいために IIII と書かれていることが多い)。

 あるいはモノポリーのマスコットキャラが単眼鏡を着けているといったことや、お菓子のキットカットの綴りにはハイフン(Kit-Kat)が入るといったよくある勘違いもマンデラ効果の一例だ(なお、後者は単なる綴りの過度な一般化かもしれない)。
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記憶の誤りは広範囲に流布されることでよりリアルなものに


 よくある間違いは、集団の中におけるリアルになる。だが、それがネットによってより広範囲に流布されるようになると、誤解はいっそうリアルなものとなる。

 たとえば、1997年に亡くなったダイアナ妃の自動車事故のシミュレーションは、折々で本物の映像であると誤解されてきた。

 このようにマンデラ効果の多くは、記憶の誤りと社会的な誤情報とが組み合わさって作り出されている。

 ちなみに誤りの多くが些細なことであるという事実は、それが選択的注意や欠陥ある推論によるものであることを示唆しているだろう。

 もちろん、多元宇宙によって説明できるものでないことはいうまでもない。

 確かに多元宇宙は量子物理学者の研究結果と一致しているのかもしれないが、もうひとつの宇宙がきちんと発見されるまでは、さしあたり心理学の理論で説明した方が納得できるのではなかろうか?

追記:2020年6月の記事を再送してお届けします
References:Inverse / The conversationなど / written by hiroching / edited by usagi



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