カラパイア:氷河期の氷河が地球の地殻を傾け、大洪水の流れに影響した可能性 2022年02月27日より転載します。
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![氷河期の氷が地球を傾けた](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/1/8/183a3e66.jpg)
地球最後の氷河期では、膨大な量の水が氷河の中に閉じ込められた。しかし一度それが解け始めると、壮大な洪水となって大地を削り、運河を作り出した。
長い間、地質学者たちはこうした大洪水のダイナミズム(力強さ)を解明できずにいたが、最近になってある重要な洞察がなされた。
それは古代の氷河は非常に大きく重かったため、その下にあった地殻を傾けたということだ。
だが、氷が解けてその上にのしかかっていた重量が抜けると、またも地殻は動き出した。それが洪水の進路に影響を与えたようなのだ。
氷河による地殻変動と洪水の流れを検証
今回カリフォルニア大学サンタクルーズ校をはじめとする研究グループは、古代の大洪水モデルを用いて、チャネルド・スキャブランドの通路2点において、氷河の融解による地殻の歪み(地殻均衡調整)が、洪水の流れと侵食にどのように作用したのか検証している。
氷河が溶け、大洪水を起こした名残として知られるのが、米ワシントン州東部にある「チャネルド・スキャブランド」である。
研究者らは、チャネルド・スキャブランドにある通路2点(チェニー・パルースおよびテルフォード=クラブ・クリーク)において 氷河の地殻均衡調整をモデル化し、洪水が起きていた氷河期の様々な時点におけるチャネルド・スキャブランドの地形を再現した。
![10](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/e/4/e4c7d360.jpg)
氷河融解による洪水の名残を残すチャネルド・スキャブランド photo by iStock
古代の氷河は地殻を傾けていた
これまで、古代の大洪水の進路を再現するにあたっては、侵食や堆積物の移動、環境の3次元力学、氷のダムの壊れ方など、それに影響しただろう様々な要因が検証されてきた。
しかし今回、現在の地形から過去の地形を推測して、当時の洪水の再現が試みられている。
「これまでは、高いところにある水の痕跡を見て、そうした洪水を再現しようと試みられてきました。ですが、そうしたものは、あくまで現在の地形に基づいたものです」と、研究の筆頭著者、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のタマラ・ピコ助教は述べる。
そうしてわかったのは、氷河の地殻均衡調整は地球の地殻に影響し、そこから生じた洪水の進路や振る舞いをも左右したことである。
「氷河はチャネルド・スキャブランドの地殻を毎年10ミリの速度で歪ませた。それは地域のプレートが上昇する速度を大きく上回っており、洪水の進路に影響した可能性がある」と、論文では述べられている。
「古代の氷河による大洪水は、氷河に左右された可能性が高い。それを再現することで、洪水がどのようにして地球と火星の地形を形作ったのか理解を深めることができる。」
![2](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/f/d/fdeeeb02.png)
チャネルド・スキャブランドの地図 image credit:USGS / WIKI commons
氷河による地殻変動の激しさ
最後の氷河期、北アメリカの広い範囲が氷におおわれていた。それはおよそ2万年前に解けはじめ、1万8000年前から1万5500年前に「氷河湖決壊洪水」である、「ミズーラ大洪水」が起きたと考えられている。
氷河湖決壊洪水は、氷河や端堆石(エンドモレーン)のダムに支えられた氷河湖が決壊することによって起こる洪水のことだ。
このとき、コーディリア山脈の氷の塊がダムとなって、クラーク・フォーク渓谷で水を堰き止めていた。こうして形成されたのが「ミズーラ氷河湖」だ。
だが、いくつかの要因が重なったことで、ダムが決壊し、ついには最初の氷河期大洪水が発生した。
水が大量に流れ出ると、再び氷のダムが形成され、またも水が溜まり始める。こうしたプロセスは、その後数千年の間に何度も起きた可能性が高い。
この時期、氷床の拡大と収縮による地殻の変化は、周辺の高さを数百メートルも変えただろうと考えられている。
![1](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/5/d/5d889c07.jpg)
photo by Pixabay
氷河期に起きた地殻変動の理解につなげる
今後、研究グループは、過去の大洪水の進路に影響しただろう様々な要素を考慮した上で、シミュレーションを行おうと考えている。
氷河期に起きた地殻の変形は、洪水の進路やそれによる地形の侵食にどのような影響を与えたのか? その理解は、正しい方向へ向けての第一歩だ。
この研究ではまた、大昔の地形が発揮したダイナミズムも示している。
深さ数百メートルの急峻な渓谷、枯れ滝、巨大な穴、こうした現在も見られる地質学的な遺物は、かつて巨大な力にさらされていた土地の物語を今に伝えている。
「実際にそこを訪れて、今は乾いている渓谷を削るために、どれほどの洪水が必要だったのか想像してみると、頭がおかしくなりそうです」と、ピコ助教は話す。
彼女によると、アメリカ先住民族たちに伝わる伝承には、大洪水も登場するのだという。
この研究は『PNAS』(2022年2月22日付)に掲載された。
References:Ancient 'Megafloods' Tilted The Very Direction of Earth's Crust, Scientists Find / written by hiroching / edited by parumo
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