Gigazine:2021年04月30日 08時00分「宇宙で最も極端な存在」であるブラックホールとは何なのか?より転載します。
 
貼り付け開始、

https://gigazine.net/news/20210430-ultimate-guide-black-holes/

by NASA Hubble Space Telescope

超高密度の天体であるブラックホールは、天体の一種でありながら非常に強い重力のために光すら脱出できないため、直接的な観測を行うことすら困難です。そんな「宇宙で最も極端な存在」であるブラックホールについて、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが特徴的なアニメーションムービーで解説しています。

The Most Extreme Things in the Universe - Ultimate Guide to Black Holes - YouTube


ブラックホールは宇宙で最もパワフルかつ極端、それでいて奇妙で複雑な存在でもあります。


Kurzgesagtによると、ブラックホールについて考える前に、まずは空間と時間について整理する必要があるとのこと。宇宙は空間と時間の中で存在していますが、空間と時間は固定されたステージのようなものではありません。


空間と時間はあくまでも相対的なものであり……


物体の質量によって空間がゆがむこともあれば、空間のゆがみが物体の動きを左右することもあります。


天体が空間上にあれば空間がゆがんで重力が発生しますが……


ブラックホールはゆがみどころではなく、まるで落とし穴のようなもの。


ブラックホールは巨大な恒星のなれの果てです。星が自身の重力に耐えきれなくなると重力崩壊を起こし、光速の4分の1という速度で圧縮されたコアが中性子星またはブラックホールとなります。


非常に大きな質量が高い密度で圧縮されたブラックホールは、時空を著しくゆがめています。


太陽の10倍もの質量を持つブラックホールであっても、その直径はわずか60kmほどだとのこと。


ブラックホールの一定の半径より内側では非常に強力な重力場が形成されており、光すらも脱出できません。この半径をシュワルツシルト半径と呼び、シュワルツシルト半径を持つ球面のことを事象の地平面と言います。


事象の地平面からは光さえ出ることができないため、外部からは真っ黒で何も見えません。


しかし、ブラックホール自体を観察できなくても、ブラックホールの影響を受けている天体を観察することで、間接的にブラックホールを観察することが可能。


また、多くのブラックホールには降着円盤と呼ばれる物質の円盤が存在しています。


ブラックホールの降着円盤に含まれる物質は光速の半分ほどの速度まで加速することもあり、粒子間のわずかな摩擦や衝突によって10億度もの高温に達する場合もあります。


そのため、事象の地平面は真っ暗な一方で、ブラックホールの降着円盤は信じられないほど明るいそうです。


事象の地平面のすぐ外側に近づくと、光がブラックホールを回って戻ってきて「自分自身の姿」がすぐそこに見えるとのこと。これは、重力によって光がブラックホールの周囲を回るためです。


重力は光だけでなく時間もゆがめます。強力な重力の下では時間の流れがゆっくりになるため……


事象の地平面に近づくと周囲の景色が加速したように見えます。


一方、遠くから事象の地平面に近づく物体を見ると、まるでスローモーションで動いているように見えるそうです。


ブラックホールの近くとそれ以外の場所で流れる時間の差を利用すれば未来へ行くことも可能とされていますが、ブラックホールに近づくことは非常に危険です。


ブラックホールが小さかった場合、事象の地平面にいる人間の頭と足にかかる重力が不均衡になるため、垂直方向に麺のように引き延ばされてしまうスパゲッティ化現象が起こります。


スパゲッティ化現象に襲われると、最終的に熱いプラズマの流れになってしまうとのこと。


なお、スパゲッティ化現象が起きるのはブラックホールが小さい場合であり、大きなブラックホールでは引き延ばされることなく事象の地平面を通過できると考えられています。


事象の地平面に入る人間を外部から観察すると、まるで人間が停止したように見えます。これは、重力が強いために時間の流れが遅くなるためです。


一方で、事象の地平面に入る人間の側からは、周囲は暗闇に包まれ、小さなスポットからのみ外部が見える状態になるとのこと。


事象の地平面の内部では時空がゆがんでおり、どこへ向かって前進しようとしてもブラックホールの中心へと引き寄せられてしまいます。


ブラックホールの中心にある特異点は重力場が無限大となる場所であり、全てが無限に小さく圧縮されます。


特異点に圧縮された物質は全ての特性を失うため、ブラックホールに存在しうる性質は質量・角運動量・電荷の3つしかありません。


個々のブラックホールに存在する違いは、素粒子の違いのようなものだとのこと。


時空の曲率と密度が無限大になる特異点は計算で扱うことができないため……


一般相対性理論を含む既存の物理法則が成り立たなくなります。


特異点が何なのかを考えることは非常に難しい問題です。


また、ブラックホールは死んだ星から誕生したために回転しているケースが多く、光速の90%の速度で回転しているブラックホールもあるとのこと。


ブラックホールが高速で回転している場合は、特異点が輪のような形になるリング状特異点を形成します。


回転するブラックホールの外側にはエルゴ球と呼ばれる領域が存在し、物体が光速以上のスピードで引きずられているそうです。


ブラックホールが最終的にどうなるのかについては、スティーヴン・ホーキング博士が存在を提唱したホーキング放射に基づく説があります。


量子力学的に考えると、ブラックホールの事象の地平面付近では粒子反粒子が生じる対生成が発生しています。


通常、対生成で生じた粒子と反粒子はすぐに衝突して対消滅しますが……


事象の地平面付近で対生成が起きた場合、一方が特異点に落ちていきもう一方が外部へ逃げるとホーキング博士は考えました。この外部へ逃げる粒子がホーキング放射です。


ホーキング放射で放出される粒子の質量はブラックホールに由来するため、最終的にブラックホールは質量を放出しきって消滅すると考えられています。


しかし、ブラックホールは非常に大きな質量を有しているため、全ての質量を放出して消滅するには膨大な時間がかかると見られています。


ブラックホールを理解することは現代の科学をもってしても非常に困難ですが……


だからこそ解き明かされていない謎が多く、探求する楽しみがあると言えるとKurzgesagtはまとめています。

 

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