https://gigazine.net/news/20210107-dwarf-giraffes/
キリンは平均体高が約4.8メートルという「地球上で最も背の高い哺乳類」です。しかし、アフリカでは体高が通常個体の半分しかないという「背が低いキリン」が2頭発見されており、専門家を驚かせています。
Skeletal dysplasia‑like syndromes in wild giraffe
https://link.springer.com/epdf/10.1186/s13104-020-05403-9
How a Dwarf Giraffe Discovery Surprised Scientists - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/01/06/science/dwarf-giraffes.html
平均1.8メートルという人類の平均身長をも超える長さの首が最大の特徴として知られるキリンは、首だけでなく足まで長いという地球上で最も背の高い哺乳類です。しかし、アフリカではそんなキリンの特徴に反するかのような「背が低いキリン」が複数回確認されています。
初めて「背が低いキリン」が確認されたのは、ウガンダのマーチソン・フォールズ国立公園。キリン保護財団とスミソニアン保護生物学研究所に所属するマイケル・バトラー・ブラウン氏らは2015年、同国立公園で体高わずか2.8メートルのヌビアキリンを発見したときに「思わず二度見しました」と語ります。このキリンは、首は通常個体と同様に長いものの脚が短く、「馬の体にキリンの頭部をくっつけたように見えた」とのこと。このキリンは「ギムリ」と名付けられました。
2017年にはナミビア中央に位置する私設農場内で体高2.6メートルのアンゴラキリンが見つかっています。問題のアンゴラキリンを実際に捉えた写真が以下。「ナイジェラ」と名付けられたこのキリンについて、キリン保護財団のデイヴィッド・オーコナー代表は「正直に言えば、フォトショップだと思いました」とコメントしています。
ブラウン氏らは問題のキリン2頭を多角的に撮影した写真にデジタル測量技術を用いることで、各部位の寸法を通常個体と比較。その結果、この2頭は通常個体よりも橈骨(とうこつ)と中手骨(ちゅうしゅこつ)が著しく短い「低身長症」であるという結論を下しました。
低身長症はその名の通り低身長をきたす症状の総称で、多くは遺伝子疾患が原因です。低身長症は人間だけでなく、犬・牛・豚などの家畜に見られますが、野生動物にはめったに確認されない症状とのこと。問題の2頭がどういった要因で低身長症となったのかは不明ですが、研究チームは「飼育下の動物に見られる低身長症は近親交配による遺伝的多様性の欠如と関連している場合が多い」と言及しました。
キリンは野生下では成体となるまでに半数が死亡するため、確認された2頭は生存能力において特に劣るわけではないと見られていますが、ブラウン氏は低身長が生み出すさまざまな問題を挙げています。ブラウン氏はキリンは捕食者に襲われた際には走ったり蹴ったりするものの、問題の2頭は脚部が特に短いためにこうした防御行動をとれないという問題に加えて、2頭の体高がメスよりもはるかに小さいという問題があると述べて、「誰かが踏み台でも持ってきてくれない限り、この2頭は交尾できないでしょうね」とコメントしています。
キリンは生息地の消失と密漁により過去30年間で個体数が40%減少したと推測されており、ヌビアキリンなどの種は絶滅の危機に瀕しています。研究チームは、ナイジェルは2020年7月に生存が確認された一方でギムリは2017年3月以降確認されていないと述べて、「キリンの個体数減少に対抗するため、キリンの調査と監視を今後も続ける予定です」とコメントしました。
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