タタッ タタッ タタッ タタッ・・・・
庭でスキップの練習をする勘太と勲。

Very, very good, Kanta
Don’t give up, Isao

ヘブンとトキは、兄弟を縁側で見守っています。

おクマさんが、季節外れの桜がわずか咲いているのを見つけました。

返り咲きですたい。
不吉の知らせと言いますけん
なんもなかなら よかですが・・

庭下駄を履いて木に近寄り、2輪3輪咲いている花を見上げるヘブン。
Poor thing…It’ll be cold soon… (かわいそうに。まもなく寒くなるのに)
Hello.. (やあ・・)

アエテウレシイ

振り返るヘブンと、見返すトキ。
二人を隔てる空間に、ほんの少しの花弁が散って行きました。


いつも賑やかな朝餉、今日の蜆汁も美味しいです。

ア〜・・・・オイシイ ママサン

一同、少し安心したようです。
小声でおフミさんが「大丈夫そうね」と言い、おクマさんが、
「『あ〜』言っとりますけん」と。

なぜか一同、蜆汁を一口飲んでは次々と「あ〜」。
で、「あ〜言うな、はしたない」と司之介さんに言わせています。

ヘブンは小骨をとって欲しいと妻に頼み、息子たちに、

パパ子供みたい

笑われています。

ーーーーワタシ オオキイ コドモ

毎日ヘブンの魚の小骨をトキが取っていたこと。
花田旅館の平太さんの魚。

ヘイタサン ナツカシイ イトコンニャク・・・

トキと顔を見合い、声を合わせて

・・・ジ・ゴ・ク〜!

こうして、つい昨日のようなかつての日常が、
どんどん思い出の中に溶け込んで行きます。

平太さん元気だろうか。
この前行った駄菓子屋の主人の声が
お鶴さんそっくりで・・

つい、司之介さんとおフミさんも思い出話になります。

ママサン サッキ マタ ヤマイ
オオキイ イタミ キマシタ

ヘブンはトキにだけそっと告げます。

黄昏時が迫る座敷、虫の声が高く低く聴こえて来ます。

サカナ オイシイデシタ

あれほど嫌っていた糸こんにゃくを、今度食べてみると言い出すので、
トキは 明日にでもおクマさんに言っておくと答えます。

キノウ サイタ サクラ
ワタシニ サヨナラ イウタメ サイタ
ーーーーなに言うちょるのもう。
オボエマシタネ (これはヘブン語で、「覚えていますね」でしょう)
シヌトモ ナク ケシテ イケマセン

はい 子供とかるたして遊びます
ーーーーネガイマス
かるた終わったら・・スキップします。

ヘブンの髪に散ってきた赤い紅葉をとるトキ。

勲できるようになるまで・・
それから テテポッポ・カカポッポ真似して
虫捕まえて
子供達大人なったら ベア飲んで酔っ払います
ようけ酔っ払ったら またスキップします

ウン ナンボ スバラシイ

ふふ・・
はは・・



シツレイナガラ オサキ ヤスマセテ イタダキマス




夫婦の習慣は、皆が寝静まった夜半まで、一人起きているヘブンが執筆を続けることでした。
うっかり音を立てて、
Shut up!
と怒鳴られようと、たゆみなく聞こえてくるペンが紙に立てる音が、
二人の、一家の安心の証でしたでしょう。
お先にお休みなさいを言うのは、トキの言葉のはずでした。

シツレイナガラ オサキ ヤスマセテ イタダキマス
ーーーーふふ・・失礼ないです。おやすみくだされ。
アリガトウ

笑い合ううち、ヘブンはトキの肩に頭を憩わせます。

安心のため息をつき、目を閉じるヘブン。
トキの大きな目から こぼれる大きな涙の粒がヘブンの着物にも落ちます。

寂しく赤い紅葉が、風に運ばれて縁側を離れました。


いよいよ色を深めていく赤い夕陽です。

二人が初めて気持ちを確かめ合ったのも、
赤い夕日に照らされた宍道湖畔でした。


松江。
ヘブンが喜びそうな寂しいお寺です。
墓前にカチリと、小さな硬い音を立てて置かれたのは
ヘブンの望んだように、小さな骨となって小さな瓶に入り、
大好きな松江の寂しいお寺にたどり着いたヘブンの魂です。

サワ:ほんにヘブンさんが喜びそうなところですねぇ
庄田:寂しいところがお好きでしたもんねぇ
司之介さん:あの世でも、寂しい寂しいとはしゃいどるじゃろう
おフミさん:はしゃいどるでしょうねぇきっと

庄田が、錦織も一緒ですと、遺品のハットをトキに渡してくれます。
「やっぱり兄貴のだったんですね」
と丈。

そのハットも、小さな瓶と一緒に墓前に備えました。

ありがとうぞんじます。
錦織さんも。

さわとトキは、寺の門に向かって階段を上がって行きます。

取り乱した?

と、訊いてくれるのは親友だからこそ。
トキは首を振ります。

ううん。
もう母親だけん。

それに、最後があまりに静かであっけなくて
取り乱すひまがなかったいうか、取り乱せんかったいうか・・
もう・・ほんにあっけなくて・・
だけん・・だけん・・

友に身を預けます。

さわは、

取り乱せちょる
もう取り乱せちょるよ

肩を抱き、背をさすってくれるおサワの前でなら、
トキの抑えていた涙が いくらでもこぼれてくるのでした。

なして・・
なして・・



東京。
勘右衛門さんとヘブンの写真が並ぶ簡素な机。

おフミさん:何遍見ても妙ですよねえ。この二人が並ぶだなんて
司之介さん:ペリー覚悟言って、木刀で遅いかかっちょったけんのう

トキが「おじじ様 八雲をよろしくお願いいたします」と言い、
おフミさんは、トキの実父でありながら
その夫のヘブンに会うことのなかった人にも思いを馳せます。

「傳様にも ご紹介してごしなさい」


そこへ、外から案内を乞う声が。

It’s been a long time, Otoki Shisho….
(お久しぶりです。おトキ師匠)

はるばるとシンシナティから訪ねてきた、イライザさんでした。