自分が抱いていたイメージが、国が違うとすごく違っていた、というお話二つです。

アライグマって、可愛いですよね。
私はアライグマを、アニメの「あらいぐま・ラスカル」を見ていてすっかり好きになりました。





確か、ラスカルに角砂糖をあげたら、せっせと川で洗って溶けてなくなってしまい、
ラスカルったら、キョトンとする・・・
可愛いね、ラスカル!
という場面もありました。





でもよく調べてみるとあれは、目がとても悪い、プラス、掌の触覚が優れていて、
水中に手を入れて、触れてきた獲物を素早く獲るための行動なのだそうです。
水がないところでも、掌を擦り合わせたりするのですって。

これは、猫が赤ちゃんの時、お母さんのおっぱいを両手で押して、
もっとお乳を貰おうとする行動が、
長じても飼い主の人の肩や腰などを押してくれる形で残ったとか聞きましたが、
そういうことと、この行動は、似ているのでしょうか。

あの押し押し、もみもみについて、猫の飼い主に訊いてみたら、

「押してもらってありがたいけれど、ほとんど効かないよ」

とのことでした。


そのアライグマが、東京都下のC市、我が家の近所に出ます。
前に住んでいた賃貸のゴミ集積所にも出て、
ちょっとでも鉄扉が開いていると入ってきてゴミを荒らすので、
「みなさん気をつけましょう」という張り紙がありました。

名古屋ではネズミ一匹見たことがないのに、これには驚きました。

ラスカルは、赤ちゃんのときに少年に拾われて、とても可愛く、
大きくなってもそれなりに普通に可愛かったけど、
大人になってから森へ帰すこととなり、私たち可愛い子供たちの涙を搾りました。

少年の名前はスターリン。またはスターリング。
忘れたけど。


ところがです。
アライグマは、カナダやアメリカでは、ゴミバケツを開けて、
一度に二匹も三匹も中に入り込んで、ゴミを漁る、嫌われ者なのだそうです。
デイビークロケットの帽子は後ろにふさふさの尻尾が垂れていますが、
あれもアライグマなのだそうです。

考えたら気持ち悪い・・・

アメリカのドラマ、What we do in the shadows でも、
隣人に嫌がらせをするために、たくさんのアライグマを
隣人の家のゴミ置き場に放すという場面があって、

ああ・・ラスカル、嫌われ者だったんだ・・・

と、ちょっとがっくりきました。

これが、抱いていたイメージが、本国ではずいぶん違っていた一つの例です。

ちなみに我が家は東京都ではありますが、畑がたくさんあって、
アライグマと狸とハクビシンがいます。

夕暮れ時に歩いていると、猫よりは大きくてちょっと太っていて、
モタモタしている動物が歩いているのに出くわしますが、
よーく見ると、そのうちのどれかです。
たいてい狸かな。

あんなのがいたのでは、ゴミを出すときに、
カラスネットなんかかぶせても防げないのでは、と一度は思いましたが、
あの子らは昼間は見かけませんので、カラスネットでもいいのかなやっぱり。


あとあれです、朱鷺。
朱鷺と書いてトキ。
読めましたか?

私は日本語教師なのに、朱鷺は、読めるけど書けません。
でも今日からは書けるようになりました。
さっき、「なんだ、鳥の上に路がのっかてるだけじゃん」て、わかりましたから。


で、朱鷺です。

去年、久しぶりに墓参も兼ねてNZへ帰省しました。
その帰りに短期間、長女の働くシドニーに滞在したのですが、
着いたその日に大きな公園を歩き始めてすぐに、
大きくて灰色っぽい大きな鳥が、近くをさ〜っと、ささ〜っと飛んでいるのが目につきました。
全然人を怖がるとか警戒する感じではありません。

さっそく検索したところ、Australian white ibisと出てきました。
オーストラリアの白い、何か?

頭と尻尾や脚が黒く、他は白い、と言いたいが、ちょっと薄汚れた感じに白い。
なので、配色でいうとちょっと鶴っぽいのですが、
首が短くて嘴が曲がっているので、鶴と見まごうことはないでしょう。
白鳥よりは小さいが、鴨よりは大きいというサイズ感も、なんとなく中途半端です。
あんだけ大きいのに、なんとな〜く安っぽい感じを受けました。

調べたところ、アイビス=ibis といえば、朱鷺のこと。

朱鷺といえば私が子供の頃に、すでに絶滅が危惧されていて、
私もその名を聞くと、ちょっぴりざわざわしてはいたのです。
なんとかしてあげなくちゃならないような気になったというか・・。

そらが今回、以下のような記事を見つけて、
朱鷺のことはそこまで心配してあげなくても良かったのだ、とわかりました。

ほっとすると同時に肩すかし。


記事です。

「トキはなぜ絶滅しなかったのか
 日本で「絶滅」といえば「トキ」、「トキ」といえば「絶滅」というほど種の保全のシンボルになっています。これはトキ*1の学名が Nipponia nippon という、いかにも日本固有種のような名前が大きく関係しているのかもしれません。また、日本での野生絶滅へと至る道筋が明確に映像化・紹介されたという意味でも象徴的なのでしょう。しかし実際には、トキは日本の固有種とも絶滅種ともされていません。 なぜトキは絶滅しなかったのでしょうか。絶滅しなかった理由を知るのも新鮮な見方かもしれません。」



あらら・・。

でも、ずっと心の中で大事な鳥だと思ってきましたので、急には止まれません。
なので、シドニーでばっさばっさと飛んでいる鳥が、
「オーストラリアの白い朱鷺 」
なんだと知ったときは、つい、すごくありがたみを感じてしまいました。


ところが、こっちの知り合いにその話をしたら、

あの鳥はすっごい嫌われ者よ?

と、言うのです。

なんでかというと、どこでも入り込んできて(ラスカルか〜)、
特に生ゴミのゴミ缶を漁るために、現地では

bin chicken

ゴミ箱チキン

と呼ばれているのですって。

チキンかぁ・・
せっかく朱鷺なのに、行動面に問題があって嫌がられ、
ゴミ箱チキンと呼ばれてしまっていたのでした。

それを知り、あの鳥に対するありがたみが、秒で失われました。

そういう新しい視点でオーストラリアン・ホワイト・アイビスを見ると、
季節の変わり目で植え替えの進む王立植物園で、
ほっくり返された土に芋虫とかがゴロンゴロンいたのですが、
それを数羽で歩き回って、一生懸命、ガンガン召し上がっていました。

ふむ。
流石にゴミ缶鶏・・

と、最初に勝手に喜んだために、激しく見下してしまう私なのでした。

ちなみに、

トキ・・鳴呼、朱鷺よ・・・素晴らしく、かわいそうな貴重な鳥・・

と思ってきたニッポニア・ニッポンですけれど、
よく見ると容貌的にはオーストラリアの兄弟と同じで、
なんとなく「禿げたおじさんぽい」というか、エセ芸術家っぽいというか、
特に可愛いわけでもないのに気がついてしまいました。

大人になるって、幻滅の連続ですよね。



上がオーストラリア・ホワイト・アイビス、下が日本の朱鷺です。




みなさんもオーストラリアにいらして、この子らを見ても、
毎日毎日、どこにでもいますので、写真なんか撮らなくても大丈夫ですよ。

良かったですね。