昔は、民謡や郷土芸能のテレビ番組がゴールデンタイムにあり、
同居の祖母がNHKのそんな番組を見ていました。
火鉢にみかんを乗せて皮を黒焦げにしながら、
そういうのを一緒にぼーっと見ていたりしましたが、
あるとき、「郡上おどり」というのが出てきました。

「春駒」という踊りを保存会の人が踊って見せてくれて、
子供だった私はものすごく惹かれました。
なんか、

え〜、こんな面白いものがあるの?

という感じで、ざわざわしたのでした。


私はもともと、一家で一人だけ着物と浴衣が好きで、
お正月とお盆には着せてもらっていて、お盆の提灯行列や盆踊りが大好きでした。

けれども当時の東京の江戸川区では、盆踊りに行くと
テープで流す東京音頭と八木節という感じで、面白いものではなかったのです。
なので、大人になって、佃島の盆踊りにちょっと行ってみたりしました。


それがある日新聞で、あの郡上おどりが、東京に出張してくるという記事があったのです。


そのときはもう結婚して、子供は二人とも幼稚園。

「そりゃ〜!」😆

という勢いで、初めて、郡上おどり体験に行ってきました。

途中からは、現会場の秩父宮ラグビー場の駐車場になりましたが、
初回からしばらくの間は、その近所の梅窓院というお寺の境内で開催されていました。

初めて行った時は人出の多さと、十種類もあるという盆踊りに圧倒されました。
あんなに難しそうなのに、ずっと踊ってきたのか、上手な人が多くて驚きました。

一番初めは見るだけのつもりでしたが、血が騒ぐというか、
これで踊らないのはあり得ないでしょうという気持ちになり、
普段着でしたけれども、夫に幼児二人を任せて、途中から踊りました。

見様見真似ですが、一曲が長いので、繰り返しているうちになんとなく、
モノマネであっても踊ったような気持ちになれます。
(しかし、すごく下手だったに違いありません)


翌年は準備万端。

自分は確か、浅草橋の問屋さんかどこかで、数百円という安い浴衣。
子供たちと夫には、その頃出始めたユニクロの浴衣と、
セットになって帯と下駄のついているものを買いました。
子供のには確か、共布で巾着も付いていたと思います。

そのとき、あまりにも安い浴衣は縫製が今ひとつで、ゴソゴソして着にくいとか、
襟が特に厚ぼったくできていて、「暑い!」ということも知りました。
反物から仕立ててもらう贅沢は、ごく近年のことです。

高校生ぐらいからは、子供達はついてこなくなりました。

楽しかったこととして覚えているのは、長女が中1のとき、
私があまりに行きたがるので、一度郡上までつきあってくれたことです。

当時次女は、年間300日以上の練習のある吹奏楽団にいて、
夏休みなんかあってないようなもので、親子が2手に分かれたわけです。

車ではないので、新幹線の名駅でめちゃくちゃ迷いながら、
電車を乗り継いで行ったのでした。
長良川鉄道から見る、川の中に立つ釣り人が印象深かったです。

そのとき二泊したのは、踊り会場に便利な旅館「磨墨」(するすみ)さん。

郡上は馬処 あの磨墨の
名馬出したも ササ気良(けら)の里

と謳われた名馬の名前ですね。

長女はほとんど踊らず、彼氏と携帯で喋っていましたな。
踊りながらたまに見かけると、勝手にかき氷を食べていた。
今でも旅館磨墨の前を通りかかると、まだまだ親子が密着して、
それがいつまでも続くように錯覚していた、
今よりは随分若くてアホな母親だった自分を思い出し、ちょっと切なくなります。


郡上おどりin青山に通っていたある時、
確か次女が4年生ぐらいだったと思うのですが、ベストドレッサー賞というのをいただきました。

え、偉いのは(浴衣のコーディネイトもヘアもやった)私じゃん!

と思ったのですが、なんと商品には、郡上のお宿、
「小野荘」ペア宿泊券と、副賞に「お昼寝に最適のロング座布団」を頂きました。


当時我が家はお金があまりありませんでした。
TDLに行ったのは赤ちゃんのときと、子供らが小学校高学年になってから。

また、初めて新幹線に乗ったのは、吹奏楽の全国大会に行ったとき
(行かないという選択がなかった)という感じでした。
お受験をしなかったとき、

なぜさせてあげないの?

と周りから訊かれたという、ちょっとおハイソなエリアに住んでいながら、
一生懸命節約を心がけていました。

もちろん、すっごく行きたいからと言って、聖地郡上市八幡まで、
親子四人で新幹線に乗って行けるわけもない、と思っていました。


でも、ペアチケットがここにある・・。

どどどどうする、実家に子供を預けて夫婦で?

いやいや・・一人の親が一人の子を連れて?

いやいや・・

と激しく悩みましたが、

どうせ帰省貧乏で貯金0じゃわ!
行っちゃえ!

と、そのときに初めて郡上に行ってきたのでした。

続きますね。





勝手に載せるので、みつかったらすごく怒られると思いますが、
とりあえず変装をした感じにして、ペアチケットをもらった晩の写真を載せます。
私が子供たちより背が高かったというのと、
私と夫の下駄が「もうすぐ草履」ぐらいにすり減っていたのが、よく見るとわかります。