とうとう映画も終盤に差しかかります。長かったですね。
というより私の、この駄弁が長いのですよね。
でも今日で私の ご勝手映画案内も最終回となります。
ああここ数日、どっぷり終戦後の昭和の日本に浸かって、楽しかったです。


さて、胸に一物秘めたような、思い詰めた感じのマリコ。
苗字は名古屋。
昔、名古屋章さんという俳優さんがいらっしゃいましたが、
出身地は東京都千代田区だそうです。
名古屋という苗字は珍しいのではないでしょうか。

さてそのマリコ・ナゴヤ。
街の公衆電話から誰やらに電話をし、その指示通りなのか、
帝国ホテルへその人物に会いに出かけます。
今は明治村に一部移築された、
フランク・ロイド・ライト設計のインペリアルホテルが出てきます。

マリコが部屋に入るところを、客室入口から15mぐらいしか離れてない、
ホテルの変なバーで、たまたま飲んでいた子分3がめざとく見つけます。

「ほうほう、誰かさんがお盛んだと見える」

なんて、悪ぶってうそぶいています。

マリコが届けたメモは果たして、悪党一味が計画中の銀行強盗の、
すごく詳しいプランニングなのでした。
そう、マリコは、悪党一味に潜入した(本当はいい人の)エディから頼まれ、
これを警察の方へ渡しに来たようです。




子分に目撃され、エディとマリコの裏切りはもう、悪党たちにバレバレです。

ツルハシをふるっている工事人夫も、もちろん悪い人の仲間です。
どこやらへ急ぐエディの周辺には、人力車や、
ちょっと意味不明な飾り物の屋台などがあります。
クリスマス近くなのか。

電柱の看板のなんだか物凄い漢字を見ると、
アメリカのチャイナタウンでロケしたのかなと言う気がします。



映画の最初から使い回しが激しくて、
いろんな場所に出てくる「富士ビール」のトラック。
写真ではあまりよく見えないと思いますが、
「日本で一番味が良いビール」とボディに書かれています。

このバスには、銀行強盗を指揮する悪者のサンディが乗っています。
でも、マリコにチクられたので、この企ては失敗してしまうのでした。
トラックが走り回っている後ろに、歌舞伎座などが見えています。
東銀座。

次の場面からは、日本ロケかなと思います。
富士ビールの車が無理やり入ってくる辺りは、神田須田町かもしれません。



家に入ると、いきなりお風呂がある家。
そこで風呂に浸かっている人は、サンディの2番目の子分です。たぶん。
サンディーは誤情報によって、警察と内通したのはこの人かと思い込み、
いきなり入ってきて、お風呂に浸かっているところを何発も銃弾を打ち込み、
殺してしまうのでした。


さて、マリコが当局に内通しているのは、悪党一味は先刻ご承知ですが、
マリコはそうと知らず、普通にボスの借りている日本家屋に帰ってきます。
そこをサンディに、「この裏切り者め!」と突き飛ばされて、
見ていてもすごく痛そうな転び方をして、
敷石の上に膝とか脛をぶつけるシーンがありました。
見てて「あたたたっ!」と言ってしまったぐらい、痛そうでした。
最初にエディがマリコに飛びかかった時もそうでしたが、
この頃の映画の中の男って、女性に対して全然手加減しません。
すぐビンタとかするし。


さて、どういう展開か、サンディは今度は、エディと子分3を連れて、日本人経営の真珠のお店に行って、「真珠を見せてくれ」と言います。
お店は近代的なビルの中ですが、廊下に面した壁は障子で、外を歩く人の影が見えます。
悪人はこの真珠店の主人の首に、空手チョップをお見舞いし、主人は簡単に気絶してしまいます。
銀行強盗に失敗して、普通に真珠を盗みに来たのでしょうか。



でも、一味が真珠屋さんで悪さをしているところへ、警察の車が向かうようです。
裏切りが、実はばれていたエディもまた、空手チョップの一撃で簡単に気絶、
床に伸びてしまいます。
サンディと子分は、真珠のネックレスをかけてある、
やわなスタンドにエディの首を引っ掛け、立たせておこうとします。
が、それはさすがに無理、二人が手を離した途端にエディは床に崩れおれます。
でもそれがよかったのです。
巡査が来て、中の確認もせず、
いきなり障子越しにバキュンバキュンと拳銃を撃ってきたのですから。
障子に影絵になっているのは、なんか本当に、
紙とかで作った影絵のように見えますが、どうなんでしょう。

さて、子分も撃たれ、孤立無援のサンディ。
部屋を飛び出し、階段を降りかけると、
下からまた警察が駆け上がってきますので、
仕方なく一階分、階段を上がって屋上に出ます。

屋上は、いきなりですが屋上遊園地。
そう、このビルは浅草の松屋デパートメントストアだったのです。
隅田川も、川にかかる橋もよく見えます。



お正月のような晴れ着を着た 日本の坊ちゃん嬢ちゃんの乗った汽車に、
轢かれそうになりながら逃げ回るサンディ。
とうとう、高いところにある「地球儀のアトラクション」に追い詰められた挙句、
乗り込みます。
これがまあ、すごい高所にありながらあまり落下防止策もなく、とても怖いです。

このシーンで、多分スクリプトでは、

Clear the rooftop! (屋上から客を出せ!)

とか書いてあると思うのですが、映画ではなまりのきつい日本語で、

やねをあけろ! やねをあけろ!

と言っています。

雑です。



警官も何人も駆けつけて、遠慮なくバキュンバキュン発砲しますが、
どんどんサンディに撃たれてしまい、
「果実」のスタンドと押しひしぎつつ、倒れたりします。
ウェスタン映画のようです。




エディとサンディは、銃弾を詰め替えることもなく、
六発以上、ずいぶんたくさんお互いに撃ち合いますが、
とうとうサンディは弾に当たり、絶命し、動かなくなります。

ラストシーンは、いつか湯上がりに駆け抜けた、
谷中のお寺らしいところを、手を繋いで歩くマリコとエディです。

エディが帰国するときに、マリコは一緒にアメリカに行くのでしょうか。
言葉も不自由ないし、踊りも踊れるし、
もともと日米をフットワーク軽く行き来していたマリコですので、
私は心配していません。
こうなったらもう、幸せになってほしいです。

長々とおつきあいくださり、ありがとうございました。

「東京暗黒街・竹の家」は、
「クライテリアンチャンネル」に申し込むか、DVDを買うしかないようですが、
よかったら是非ご覧ください。

私はとても面白かったです。



懐かし写真館

かつての帝国ホテル




実際に乗ったら怖いに決まっている松屋屋上の地球儀の乗り物





当時の浅草松屋の屋上。三十坪の秘密基地と呼ばれていたようです。






ちょっと胸がきゅんとなる、銀座のネオンサインの数々