「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」中公新書)

サンドラ・ヘフェリンさんという 日独のハーフの方が書いた本が、
数年前に話題になりました。
私も実は結婚するまでは、「外人さんて・・」「ハーフって・・」と、
つい、他人を括りがちでした。

それが日本語教師になり、
日本に住む外国人やハーフの皆さんの嘆きを聞くようになりまして、
それまでの固定概念は捨てていかざるを得ませんでした。
私も途中までは、この本に出てくる「純ジャパ」の一人だったのです。

この本、読んで面白く、ダイバーシティへの理解も進む好著ではありますが、
それでも著者のちょっと自虐的な面が見られるのは、どうしても、
「本当は自分がハーフで自慢なんでしょう」
と、思われがちなハーフ本人でいらっしゃるからかもしれません。


うちの子らが口を揃えて言うのは、名前にカタカナの部分がありますので、

えー、お父さん外人さん?
(妻外国人・夫日本人の組み合わせって、ないよね!
・・・と日本ではかなり強く思われている・・)

えー、英語ペラペラ?

えー、英語話してみて?!

と、クラス替えごとに言われるのがとても嫌だったということです。

しゃべってみてと言われて、ああまたかぁ〜、
と思っていたそうです。



娘たちの言葉の変遷ですが、以下のようになっています。

生まれてからしばらく、ほぼ英語のみ
→3歳ぐらいからずっと日本語メイン
→高校から英語が日本語に追いつく
→23、25歳となった今は、英語の方がやや弱目のゆるバイリンガル。

保育園・幼稚園・小中学校までは日本の公立校、
高校と大学は日本の公立または私学です。
高校まで、英語の成績は全然たいしたことはなかったです。
二人とも、70点とか、平気で取っていました。
英語の勉強はしないでいて、取れるだけ点を取っとく主義のようでした。

自分らがハーフであるということは、常に少しの好奇の目にさらされ、
あまり根拠なく、お父さんが外人なんだ・いいなぁ〜、
というのについて回られて鬱陶しく、それでいてちょっと言動を間違えると、

ハーフだと思ってしょってる・いい気になっている

と言われやすいという、面倒なことがあるようです。

私は「ハーフが・・・」の本を自分だけで読んでおくつもりでしたが、
いつのまにか娘たちも読んでいて、
あそこはそのとおり、そこは、書いてあるほどでもなかった
・・と、一時期騒いでいました。

子供時代を過ごしたのが都内であったり、私が語学に関わっていたりしたため、
娘たちに起きることには、心の準備が割とできていて、
起きることはほとんど、想定内でした。

ひどくいじめられたり、注目を集められることもなく(顔は日本人なので)、
たまに本人たちから愚痴を聞くぐらいでした。

でも後から聞いたら、

「言わなかったけど、大変だったんだから!」

ということです。


私に思い出せるのはこのぐらいです。

顔は日本人だが、髪がカーリーな次女は、そこだけちやほやされました。
でもその髪を、クラスでは男子らに「ラーメン」「焼きそば」と呼ばれ続け、
しつこく呼び続けた子を、そのとき手に持っていた、
「ピンポンボールガン」(オレンジのアイスクリームコーンみたいなもの)
で叩いてしまい、私がその子のお母さんから怒鳴り込まれました。

顔が純日本人の長女は、「ハーフなのに、ハーフに見えないね」
と言われ続け、自分に顔が似ている母を恨んだそうです。

一回だけ次女が、仙川駅前で怪しいモデルエージェントにスカウトされました。
子供タレント事務所に属して苦労している親子さんを知っていたので、
お断りしましたが、あとで、ちょっともったいなかったかな? と思いました。

姉妹でNY在住の写真家のモデルになって、写真展に写真が出ました。
うちの庭で浴衣を着て写真を撮られ、蚊に刺されまくりました。

モデルとか、HPにちょこっと載るということは数回あります。
そこで収入があったなら、カツ丼ぐらい奢ってほしかった。

ただ、わかりにくい部分かもしれませんが、私は子供たちを、
二カ国語の両方とも十分でないセミリンガル、
二カ国語の両方ともに苦労するダブルリミテッド、
にならないようには気をつけていました。

なぜなら私は、日本語が【コンテクスト・ランゲージ】
(文脈から理解して使っていくしかない微妙な言語)であることと、
小さい時からの、たゆまぬ退屈な暗記時間を抜きにしては、
漢字のあるこの言語を使いこせないことを、強く意識していたからです。
で、母語は日本語に、英語はサブにすることに決めていたのです。

英語がまずくて日本語がネイティブであれば、
日本でも日本以外でも生きていけそうだ。
(英語をあとから追い上げることはできそう)

でも英語が母語で、日本語がまあまあできても、読み書きに難がある場合は、
学校や職場では、「外国人枠でなければ受け入れてもらえなさそう」だ。

それを考えてのことでした。

現在二人とも、大学時代から翻訳のアルバイトをし、
今の職場でも通訳と翻訳をしています。
残念ながら経験不足ですので、
それができてもお給料には全く反映していませんが、
ハーフであって得をしているのは、ここらへんかもしれません。

私が第二外国語として英語をある程度習得するまでには、
中学に入った時から今までの、長い時間が必要でした。
そこをかなり はしょれたというところで、娘たちはすごく得をしていると思います。



「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」より。

身も蓋もありませんが、こういうことは確かにあります。



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上記、いきなりご覧になって、ご気分を損なう方もいらっしゃるかも。
ごめんなさい。
でもこの本全体をお読みになったら、納得できることでもあります。

娘たちによると、自分達はⅢの、「語学だけハーフ」なんだそうです。

美人度は低いので、
日本にいながらまあまあ語学力をつけてくれたという意味で、
おかんおとんには、まあまあ感謝している、と言われたことはあります。

あんたがた、

「お父ちゃんは学校へ来るな」「英語喋るな」

とか言ってたこと、忘れとるがね〜。