ここ十日ほど、私は落ち着かない日々を過ごしていました。
結婚以来初めての、半分ひとり旅の準備をしていたためです。
半分というのは、今度の計画では、
訪ねる相手とつきあいの深い夫が、
後半に合流することになったからです。

この旅行は、去年、行く直前に怪我をして中止になったものを、
仕切り直して行くことになったのでした。

NZ帰省の時には、さすがに行き慣れたところですし、
手配から何から夫に丸投げで、のんびりしていましたが、
今回はちゃんと自分でやらなくてはなりません。

さて、いろいろな都合が重なって、5月後半に行くつもりが、1週間早まりました。
そうなるとは思わなかったので、
出発前日までの三日間に、前からの予定がぎっしり入っています。
夫は出張でそのあたり、ほとんど家にいませんし、出発の朝も、出張先から直行で出社してしまったため、
会わずに出かけることになりました。

すぐ人に訊いてすませるという依頼心があるので、
いつもいる人がいないと、それで結構心配になってきます。

エスタは期限内ではあるけれど、これは何か、自分ですることがあっただろうか。
アメリカ政府に断られることはあるのか。

スーツケースは4日前に詰めて、
自分が不在の間に家族に出してもらいます。
ぎりぎりに支度するのがいつものことなためか、
そんなに前に詰めようとすると、
何が要るのだったか考えても、よくわかりません。

また、成田で国際線に乗り換えるのだけれど、
荷物の送り先は、チェックインする方のセントレアでよかったのかな、成田かな?
などという、基本的なことも、よく考えたらわかりません。
いちいち調べたりします。

モバイルWiFiはネットで予約したものの、
iPadやiPhoneの設定は、どのようにしておかなくてはいけないのか。
なにかあったでしょう、たしか・・
海外ローミングはオフにしないと大変だとか、
機内モードはいつオフにするべきかとか。

うっかりミスをしない人って、こういう状況にきっとお強いのでしょうね。
うらやましいです。


自分でもあきれますが、ぎりぎりになって、

「ところで、正しい行き先で切符買ったかな」

などと、今更考えても仕方ないことを考え出しました。

だって、もし間違えていたら、
日本橋三越のライオン前と、銀座のそれとを間違えた、
どころではないおおごとになります。
路頭に迷います。

夜中にガバと起きて、迎えてくれる人たちとのメールを確認し、ほっとしたりしています。

こんな自分を励まそうと、

大丈夫、数回ではあるけれど、
一人で二人の幼児を連れて、NZ帰省ができたではないか。

と思ってみたのですが、それがもう15年ぐらい前のことで、
別にいろいろ覚えているわけでないことに気がつき、
なんだか逆効果な感じになりました。

二人子供の手を引いて、全員の荷物を背負って、
香港や韓国で一泊して飛行機を乗り換えたり、
トラブルがあって電話で問い合わせたり。
本当に、あんなことができたのは私なのでしょうか。


「ねえ、夫は金曜日に名古屋にいなくて、
私は土日に帰省するから名古屋にいなくて、
月曜日はまた夫は名古屋にいなくて、
また帰ってこられないかも知れないでしょう。
下手したらあんまり会わないうちに出発しそうです。
細かいことがわからないし、
おっちょこちょいなので、不安なんですが」

「じゃあ、木曜日ぐらいまでに、どうぞなんでも聞いてください」

「ドンワリー、ユーアー・OKですよ!」

OKですか?

「たぶん」

たぶんでした。



また何かあってドタキャンになったら嫌だなぁ。
昔は入院、直近では怪我と、2回その経験があるだけに、
迷信的な思いも胸を去来します。

突然、思いました。

いいなぁ、パリス・ヒルトン。

だって、ある日思い立って、
ビジネスクラスで、パリでもロンドンでも行けるんでしょう?

ドタキャンしたって、HISの人が優しく、

「パリス様、ではどの日にお乗りになりますか?」

って、向こうからきいてくれるのでしょう。
好きなところへ好きな時にお行きになるに違いない。
ああ、私も来世ではそのような身分になりたいものだ。


しょうもないことを考えているうちに、どんどん時間は経って行きました。

出発まではなんとか無事にと願い、
どんな階段も手すりにつかまって上り下りしましたから、
転んだのは、この3週間では一回だけです。

二つのゴミ箱を倒しながら、えらい音を立ててころびましたが、
幸い怪我は打ち身だけでした。

夫はそんなとき、

「ったく君はなにをしているの?」

というようなことは言ったりせず、

「本当に気をつけてよ?
一人でアメリカに行くのは嫌ですから」

と言ってくれるのでした。

足を向けて寝るとバチが当たりそうな出来た夫ですが、幸い無事に出発でき、今はシアトルで寝ていますので、
どっちに向いたらいいのかは いまいちわかりません。
とりあえず、心の中で感謝しておきました。

夫よ娘たちよ、私は無事に到着して、
今日はもう、着いてから三日目の夜です。
生徒に手厚くお世話をされていますので、心配ご無用です。

20日の朝9時は、年に一度の町内会の掃除です。
どうぞよろしく。

トマトの芽欠きは晴天時にお願いします。