作者は

母校の日大新理事長にご出世なさった、時の人、林真理子さんです。

 

六条御息所 源氏がたり 1、光 2,春 3,空 

 そして、小説 STORY OF  UJI

計4冊の大作です。

 

読んだとばかり思っていたのは

同じ、六条御息所語りの瀬戸内寂聴さん物でした、ああ勘違い。

『源氏物語の女君たち』  第4章 六条御息所 でした。

思い込みはあな おそろしや

(間違って、購入してしまっただよ( ;∀;読んでいましたよ

 

断片的ですが「和楽」という画報で・・・・・かって掲載されたそう・・・・

時代考証は山本淳子教授、挿画は千住博画伯の景色のみで現わされた「源氏物語」

豪華絢爛のしつらえですぞ。

 

ここ暫く、PCと睨めっこの日々。

帰宅後は、ワンコのお世話と、PCでの「見放題、アニメ平家物語」「再放映メジャークライムオールシーズン」東山紀之さんの「スパイゲーム」にハマりまくり、お目目酷使。

 

ようやく、本と対峙する決心がつきました(笑)

 

紫式部作(ほぼ定説と収まりましたね)「源氏物語」

いづれの御時か、やんごとなき際にはあらねど優れてときめき給う更衣腹に世に無く清らなる男御子が誕生。その彼の一生で、関係した女君遍歴を「みやび」「あはれ」「はかなし」「うつくし」と基準を示しつつ、四季を巡りて、「無常」を表現した物語。

主人公は勿論、源氏という「家臣」に落とされた皇子の復権。彼 光輝く君は、その折々

青春、壮年と自己の美意識に沿った女君を求め続け、目線は常に源氏の君で、式部も

価値判断を彼にそそぐ。

式部作 本編が歴史書で言えば、記紀にあたる原本。

 

で、「六条御息所 源氏がたり」は、光源氏が関係を持った一女君(愛人)である

「先の東宮の妃であった、六条あたりに豪邸を持つ、御息所」の

成仏出来ない、

源氏を許せない霊魂の呟きです。

 

瀬戸内寂聴さんが書いた「女人源氏物語」は、女君たちの生の声(あくまでも作者の解釈でしたが)が

鮮烈な秘めたる心がジンジン響きました。

 

それを、新手法とばかり、六条御息所一人の怨念にしてしまった、その御息所に共感が持てないと、「長い永い、愚痴」物語となります。

夕顔を下賤と切り捨て、その忘れ形見も、父が藤原左大臣になっても、母の夕顔の出自が低いと、「人」とは認めませんし、注意も向けません。

上の尊称を許されない「明石の君」は、受領あがりの出自なれど(紫上の女房の一人でもおかしくはない身分です)

祖をたどれば、自分の一族の系譜。

故に、「憎む気」は無いと、むしろ、味方する。身びいき過多過多です。

私は若気の至りで、「高貴な朝顔斎院」を、幼馴染の源氏の求愛を拒み通した「カサカサ女」とかって評しましたが、カサカサは、六条御息所でしたわいなぁ、(関節が外れましたわ)

 

(東宮様がお隠れにならず、今少し長生き為されたならば、私は立后して中宮の位に立てたはず。一族の期待を背負い、延喜の政変にも失脚せず、必ずや桐壺帝の後の世を我が世の春としたものを)秘めたる望みは、娘の立后。自分が望んでも実現しなかった「最上の女人の地位」を一門に得る事。祟れば、軌道修正できたものを、朱雀から幼い冷泉帝へ。源氏の企てをお得意の怨念で阻止しない。

遺領で、優雅な生活は出来る。

都一番の教養人、美人、趣味人と自他とも認める佳人。

これ、覚悟して書いています。ナンセ、御息所、恐ろしいのですもの。

でも、ご本人は生霊も死霊も、幽体離脱、ましてや夕顔や葵上を取り殺したのは私ではないと無実を訴えます。

本編の六条御息所は、藤壺の宮もかくやと思えるほど、「雅」なのですのに。

美を愛する教養豊かな、あらゆることにおいて一流人である彼女の挫折は、東宮が早死にしたことにあります。約束された后の位置は、泡と消え、同情の中、忘れ形見の姫宮と共に宮中を下がります。気位だけは高貴なまま、彼女は、長い寡婦生活に入ります。

藤壺に相手にされず、「高貴な仰ぎ見る年上好み」の自分の美貌に自信満々の若き源氏は格好の相手を見つけたのです。

既に、光る君には、「気に染まぬ気位高い正妻の葵上」が居られます。

何故、御息所は、源氏の君を受け入れたのでしょうか。

その間の経緯は、式部は見事にぼかします。

御息所は、女房の手引きのせいにします。

何度も何度も繰り返し、主張します。

咎は全て、手引きする側近く使える女房のせいと。

召人に責任をなすりつけるのです。

うわっほ、源氏物語は、高貴な血筋の美貌の男のレイプ遍歴かいな、

関節が再び外れましたわいな!

雨夜の品定めに始まり、紫上との睦まじい夫婦語りでの女君評、それに御息所も、薄雲女院(藤壺中宮)も、夢に現れ おしゃべりな源氏に抗議します。

 

ああ、そうなんだ。これは絶対的優位に立つ源氏の君の価値観と、それの基盤となるべく教養の権化の六条御息所の美意識の対決なんだわと思い至りました。

 

教養とは何でしょう。誰もが手本と仰ぎ見る手跡の文字の美しさ。季節の折々に合った色彩の紙、ああ、やはり、流石と世の評判の賛美を一身に受ける他者の眼の評価。

季節を映す匂い、薫物、薫香。

心映えは、御息所はあげません。わずかに娘の気質を褒めるのみ。

アンジェリーナジョリーが演じたマレフィセントの美しさに似通うような氷の美。

 

たとえ、災いが降りかかり、不遇となっても、紫上のおそばを離れる女房は一人もいなかったと。これは、藤壺の宮も御息所も、一人残された愛娘の斎宮も

誰も出来なかった「大人大人しい心映え」であり

紫上だけが持つ長所、下の者への心配りでしょう。

身分に縛られ、身分だけが「高貴さ」の証し。

男たちは完璧な身分で我儘が許される(源氏、匂宮、薫大将、頭中将、柏木、髭黒、冷泉院)女君は上品、中品は「経済」で縛られ、

「家」の為に自分の好みは問題にならない。

    中島潔 画

 

あらららら

拒み通した朝顔の斎院は

身分、財産、品位共々、六条御息所に劣らないし、高貴な出自の為、正妻候補ではありませんか。

東宮の妃となるので出自は良いであろうが、女王でもないみたいだし

延喜の政変に一族が左右されたとあるので、菅原、橘氏かも、藤原氏以外でしょうか?

 

ここでガガーリン

源氏が身分にこだわり、六条が嫉妬に苦しんだのも自分の身分に欠けを持っていたから。

 

如何せん

個人的に、林真理子女史描く 六条御息所、突き放してしまったのが敗因ですわいな。

生霊になり、死霊になり、怨霊にならざるを得なかった自分を嘆いてこそ、六条御息所ですわいな。

 

TVアニメ「平家物語」公式サイト (asmik-ace.co.jp)

 

 

 

 原作者は古川日出夫氏

こちらの、宇治物語も、林真理子氏とは違った、斬新な切り口で

宇治の世界を描きます。

『女たち 三百人の裏切りの書』…紫式部の怨霊がモノホンの宇治十帖を語り出す趣向。

 

時代の先を読み取る不思議な目を持つ、びわ

心優しき重盛、運命を受け入れる徳子、新しい感覚の平家物語

 

私が小説家であったなら

紫の上の 源氏がたりを書きませう。

葵上、紫上、女三宮と、明石の君の琵琶を主旋律に、女楽の調べに乗せ

光源氏と男達を雨夜の品定め宜しく

光る君の正妻たちの一人語りで 評しましょうぞ。


 

そして

 

宇治へ

 

 

 

宇治では、八の宮の姫君 大君(宮の正室腹故、女王)中君(若君)が

源氏の孫である匂宮、一応末子の薫の君を巡り、

大君亡き後の浮舟と身分だけでは評価がつけにくい

新しい女君が登場します。

夕霧の愛姫、六の君

そして

面変わりした、秋好中宮

我が子唯一の世慣れした、明石中宮

 

もはや、紫上に繋がる「若紫」はどこにもいません。

 

蓮の台では、共に連理と誓った藤壺の宮の手を源氏はきっと・・・とるに違いありません。

 

誰よりも

恨み

絶望し

忘れ去りたいのは、紫上にとって、光る君その人。

往生することも

乃ち

出家を止められ

それも、残される自分主体の源氏です。

あらゆる道を絶たれた紫上は

六条御息所よりも

怨霊になってしかるべきです。

 

 

源氏物語は

貴女を何千年にもわたり

哀れの名の元

閉じ込めた

古典の檻です。

 

 

それでも

貴女は式部に植え付けられた

大人大人しい気質、麗質で

諦観だけを支えに

思いやり深く、あり続けるのです。

 

走って私達の前に登場したあの日の少女のように

 

源氏の手を離れ

 

貴女を自由にしてあげたい

 

父宮に捨てられた孤児ような境遇で

継母の憎しみの呪詛を聴きながらも

自分を育て上げたのは

貴女自身の麗質ですもの

 

『さはみづからの祈りなりける』

 

源氏物語から

貴女こそ

 

 

お一人で立たれた御方ですぞ