今年は酉年。
それに因んでという訳ではありませんが、今回は 「アンデスコンドル」 について書きます。
 
 
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北園にある猛禽類舎
 
東山では2羽のコンドルがここ北園の猛禽類舎で暮らしています。
ここでは以前、ハクトウワシが暮らしていました。
 
 
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コンドルの解説板
 
「えさ」 「つばさ」 「あたま」 「むね」 「とし」 「あし」、それぞれの "ひみつ" が解説されています。
旧舎では本物の羽や卵が展示されていたのですが、ここではどういうわけかなくなってしまいました。
 
 
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 プッパ (オス)
 1990年5月12日生まれ 26歳
 
 
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ピッピ (メス)
1993年5月13日生まれ 23歳

コンドルはとても長寿。 60年以上、生きるのだそうです!
 
 
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オスのプッパ君
凛々しいですねえ。
 
 
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立派なトサカ、ひだひだの皮膚と肉垂、きれいにハゲた頭、そして、ふさふさの白い襟巻き。

間違いなく男前です。
 
 
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きっとメスの心を鷲づかみ、いや、コンドルづかみにするでしょう。
 
 
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こちらはメスのピッピちゃん

頭は同じように禿げていますが、白い襟巻きがとてもチャーミング。
 
 
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そして、ルビーのようなきれいな赤い目

オスとメスでは、体の大きさだけでなく、こんなに容姿が違います。
 
 
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どうよ? 俺の翼
 
コンドルと言えば、この立派な翼でしょう。
 
 
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一番長い羽の長さは80センチ!
 
 
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 両翼を広げると、何と3メートルあるそうです!!
 
 
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 ペアでそろって日光"翼"
 
 
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羽も使っているうちにいたんできます。
そのため、羽は1年に1回、生え替わるそうです。
 
 
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鳥の羽というのは、すべて "いわゆる鳥の羽" のような形をしているものだと思っていました。
しかし、"いわゆる鳥の羽" の下には、ふわふわっとした羽毛 (?) が生えているんですね。 とても暖かそうです。
 
 
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コンドルの餌やり
 
アニマルトークの一場面です。 食べているのはオスのプッパ。
餌はオスとメスを檻で分けて、別々に与えているそうです。 そうしないと、プッパがピッピの分まで横取りして食べてしまうからだそうです。
 
 
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コンドルは野生では死んだ動物を食べ、生きている動物を襲うことはないそうです。
故に足は細く、爪は鷲や鷹のように鋭く曲がっていません。
餌は、鶏頭、鶏肉、馬肉、レバー、ホッケ、マウス、ひよこを与えているとのこと。
 
 
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コンドルの 「素嚢 (そのう) 」
 
ちょっとわかりにくいですが、赤い丸の部分がプクッと膨らんでいるのがわかるでしょうか。
これ、「そのう」 と言うそうです。
 
「素嚢 (そのう ) は消化管の一部分で、膨らんだ形状をしているうえに管壁が厚くなっており、消化に先立って食べたものを一時的に貯蔵しておくための器官である。」
(ウィキペディアより)
 
これはコンドルだけでなく、多くの鳥にあるそうです。
野生では、食べられる時に食べられるだけ詰め込んでおくということでしょうか。
東山では餌は週に2回。コンドルたちはそれを、2、3日かけてゆっくり消化します。
 
 
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こちらはメスのピッピちゃん
 
コンドルに頭に毛がないのは、死肉の中に頭を突っ込んで食べるため。毛が生えていると血液や体液が羽に付着して不衛生になるからだそうです。
動物の習性と体のつくりの関係はとても興味深いです。
 
 
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大きな肉片を丸呑み
 
 
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噛んでいる様子はありませんでした。
 
 
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旧コンドル舎
 
懐かしいですね。サル舎の前にありました。
この獣舎は 「新ゴリラ・チンパンジー舎」 の建設のため取り壊され、今はもうありません。
 
 
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北園のちょっと奥まったところにあるワイルドな感じの獣舎でした。
でも、それがコンドルたちにとってはよかったようで。
現在の獣舎は、人通りも多く静かな環境ではないので、繁殖は多分難しいだろうと飼育員さんが話していました。(悲)
 
 
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話は変わりますが、実は私、最近になって考え始めたことがあります。
動物園の使命に 「教育・環境教育」 というのがあるのですが…
 
しかし、本当に動物園は自然や環境教育の場となりうるのでしょうか?
 
考え始めたきっかけは、今、NHKがシリーズで放送している 「プラネットアースⅡ」 でした。動物好きな方は、間違いなく観ているのでは。
昨年12月25日に放送された第1集のタイトルは 「極限の地のサバイバル」
 
獲物を求めて一面雪に覆われた高山を滑空するイヌワシ
険しいヒマラヤの奥地で子育てをする孤高のユキヒョウ
密林のジャグルで獰猛なケイマンを狩るジャガー
灼熱の荒れ野でキリンを群れで襲うライオン
 
圧倒的な映像美で、荒々しい自然の中で逞しく生きる動物たちの姿を映し出していきます。
しかし、私にはそれらの映像がどうしても動物園の檻の中で暮らしている同じジャガーやユキヒョウたちの姿につながらないのです。
 
そもそも、大自然の中で生きる動物と、動物園という人工的な環境の中で飼い慣らされた動物を比較すること自体に無理があるのかもしれません。
 
しかし、動物園というのは、本来、動物たちが暮らしている自然環境やそこで暮らす動物たちの姿を人々に伝えるために動物たちを飼育しているのではないのか?
 
両者のあまりの落差に違和感を覚えずにはいられません。
 
動物園で動物を飼育展示する意味とは何なのか?
動物たちの野生における "本当の姿" を知れば知るほど、その意味を考えさせられます。
 
それでも世の中には、限られた人員、限られた予算の中で、少しでも動物たちの生き生きとした姿を見せようと努力している動物園もあるようです。
 
最近、こんな本を読みました。
 
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「動物翻訳家 心の声をキャッチする、
飼育員のリアルストーリー」
片野ゆか/著  集英社
 
何かと制約のある中、知恵と工夫で、動物本来の行動や能力を引き出そうと奮闘する動物園の飼育員たちの取り組みを紹介した本です。
 
 
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 本の裏表紙の 「アフリカハゲコウ」
かわいいイラスト

その取り組みのひとつに、「秋吉台自然動物公園サファリランド」 で行われている 「アフリカハゲコウ」 のフリーフライトの話が出てきます。
 
 
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鳥の一番の特徴で、一番美しい姿は何なのか?
それは鳥が羽を広げ、大空を自由に飛んでいる姿です。
 
この当たり前だけど、どこの園も行っていない大型鳥類の "自由飛行展示" に秋吉台サファリランドは挑戦しました。
YouTube に、フリーフライトの様子がたくさん投稿されていますので、見たことのない方は、一度、観てみてください。

動画ではなかなかその迫力は伝わりにくいのですが、大きな体のアフリカハゲコウが、飼育員の合図に合わせて大空を悠然と羽ばたく姿は、きっと見る者に感動を与えるに違いありません。
 
この本には他にも、
埼玉県こども動物自然公園 (ペンギン)
日立市かみね動物園 (チンパンジー)
京都市動物園 (キリン)
で行われている先進的な取り組みが紹介されています。
 
自然の有り様には到底かなわない。
けれど、何とかその姿に近づけるために工夫と努力を惜しまない。
日本に、こういった気概のある動物園は一体どのぐらいあるのでしょうか?
 
自然界で、きらきらとその命を輝かせながら生きている動物たち。
動物園はどこまで動物たちの "本当の姿" に迫ることができるのか?

動物園で暮らす動物たちの命を価値あるものにするためにも、私たちはもっともっと工夫しなければなりません。
 
 
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それが動物たちに対する最低限の礼儀だと私は思います。