和の町医者日記より
一番思うことは、医者が患者に処方するものは、
まずは「希望」じゃないか、という単純な教え。
普段の診療でも、ユーモアを大切にしている。
どんな状況でも患者さんは「希望」を求めている。
それがたとえ嘘であってもいい、と思う患者さんが多い。
そのためには、「永遠の嘘」をつくことすらある。
薬をどうこう言う前に、まずは「希望」を処方したい。
それができるプロが医師という職業。
精神科医 中井 久夫医師が教えてくれたこと。
「白衣を着ず、人として患者に寄り添う」
「パイプいすを患者さんのベッドサイドに持っていって
20~30分座っていなさい」
「患者さんが入院した初日には一晩一緒に過ごしなさい」
中井 久夫医師
神戸市内にある自宅の電話番号を患者に伝えることも
あった中井医師。
「治療者は患者と山頂で出会い、どこに次の一歩を
踏み出せばよいかを共に探りながら、安全に麓まで
寄り添う役割。
回復の道で患者を一人孤独に歩かせてはいけません」
「何よりも大切なのは希望を処方すること」
「真実を伝えることは大切です。
ただし、一度に話すのではなく、何度にも分けて話すこと、
希望を添えて話すこと」
これは、亡き日野原 重明医師が、1990年にインフォームド・
コンセントの考え方を広めようと開いたシンポジウム
『病気を知って病気とつきあう』での言葉です。
日野原 重明医師
日野原先生も中井先生も、もうこの世にいない。
いま、僕が後輩にそれを教える番が来た。
若い医師たちに「希望の処方の仕方」を教えている。
「希望の医療」という「炎」だけは、僕が死ぬまで
燃やし続けたい。
寒い夜は、歌を聴いてください。