「プルートゥ PLUTO」 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

 

 1月に表題の舞台を観劇したのだけど、書くのを忘れていたので今更だけれど書く。

 

 森山未來さん

 

 特段意識したことのない俳優さんだったのですが、わたしが観劇した舞台への出演率が非常に高いのは偶然なのだろうか。「五右衛門ロック」で初めて観劇し、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」で虜になった。いや、なにかで虜になってヘドウィグを観に行ったの順番か。それがなんだったのか思い出せない。もう年か、年だな。

 

 彼が出演している映画に好きなものはない。彼は生で観てこそじゃないか。ヘドウゥグの森山未來さんは本当に素晴らしかった。

 

 初演の「プルートゥ」は見逃した。結婚1年目だったのでそれどころではなかった。

 

 結婚5年目に突入しようかという今、偶然にも再演する。これを観に行かない手はない。妻に“森山未來”を体感させるよい機会だと思えたが、残念、チケットは2枚取れたものの、妻は今年から働き始めたので、その仕事と公演日がかぶってしまう。

 

 これはもう1人で行くほかないわー

 

 さて素晴らしい舞台でした。

 

 あの原作の主題を3時間でよく表現できたなと思う。AIが絡んでいる本作の内容は、原作を読んだときより、はるかにこちらも考えていて、そういう意味でも興味深かったし、クライマックスでは思わず泣いてしまいましたわ。

 

 演出が振付師・ダンサーでもあるシェルカウイさんということで、当然ダンスが本公演の見どころになっているわけだけど、森山さんも土屋さんもそっちの人だし、なにより「世界最高水準9ダンサー」とうたわれた面々が躍動するシーンのなんと素晴らしいこと。

 

 原作がマンガだから普通に演劇化するとベタっとしちゃいそうな点をダンスが完全に払拭しているというか、オリジナルまで昇華させている。舞台装置の使い方、ロボットの造形、プロジェクションマッピング等、褒めるところは数あれど、結局その中で躍動しているリアルな生命が素晴らしいので、まさに画竜点睛となっている。

 

 しかし演者に対して要求の難易度が高い舞台でした。ロボット役には3人のダンサーがマニピュレイターとして寄り添ってロボット役を操っているように見せているのですが、これは演者の息がぴったり合ってないと、観ている側もこの演出いらなくね?と鼻白んでしまうから失敗は許されない。その難題を見事に演者はクリアしていましたね。

 というか、この演出のせいで、ずっと舞台にして舞踏を観ているような気分となりえたし、また、この設定が最後のクライマックスに非常に有効に活かされていく。いやはや素晴らしかった。

 

 初演はNHK Eテレで流れた時に鑑賞しているのだけど、初演時よりたぶんダンスシーンが3割増しくらいになっていて、より原作との別物感が出ていたように思う。浦沢先生の原作好きなんですよ。わたしが最後に通して読んだマンガにして、最後に買い揃えたマンガでもあります。(※注 マンガは結婚してから読まなくなった)

 

 あの原作は舞台にできないでしょと思っていたけど、それはわたしの想像力や発想力が乏しいからであって、プロはしっかりとまったく違う切り口を用意して仕上げてみせる。シェルカウイさんの演出した「プルートゥ PLUTO」には脱帽です。御見逸れ致しました。

 

 さて、森山未來さんはよくも悪くも駒として機能しておりました。アトムは主役のようでいて主役ではないのです。そして、今回の舞台では土屋太鳳さんが初舞台を踏んでいましたが、2役の演じ分け&ダンスありの難役を見事に演じきっておりました。彼女はまだ幅が広くないけど、突出したものを持っているので、このまま成長していってくれるといいですね。

 

 

 兎にも角にも、初演より再演のほうが良かった気がすると書くのは簡単だけれど、初演はTV観賞で、再演は生観劇、比べるのは無粋というものでしょう。目の前で繰り広げられた集団芸術。リピート再生できないソレはわたしの血肉となりました。AIが人間を越える(た)のは間違いないけれど、AIが映画や舞台を観て、説明できませんと言いながら理屈ぬきで涙を流す日は来るのだろうか。わたしは来ると思ってますが。(おわり)