「厳しい条件下で」 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

 ママ解放日の翌日は、海外遠征登山隊が合流して訓練山行が行われました。といっても、様々な仕事を抱えている社会人が日程を調整するのは至難の技です。今回は5名中3名しか集まりませんでした。

 今回の海外遠征ではわたしが登攀隊長を務めさせてもらうため、訓練山行の計画はわたしがやっています。この日は本来朝日岳東南稜をピストンして、アイゼン歩行の登下降や寒い中でのロープワークの確認をしようと思っていました。

 

 

 しかし、残念なことに、那須周辺は駐車場にいる時点で強風が吹く大荒れの天気。岩稜に取り付くのには適さず、

 

 

 前日降雪があり、樹林帯を抜けるまでラッセルを余儀なくされたため時間をくい、ルート変更をせざるを得なくなりました。ならばと、厳しい強風下となりますが、茶臼岳を目指してみようということになりました。海外で初めて厳しい条件にさらされるようでは遅い。先に体験してもらっていたほうがいい。

 樹林帯を抜けた後の風は厳しく、ゴーグルを装備に含めていない隊長がまずギブアップ。遠征でも全員が登頂できるとは限らない。待つのも訓練の一環ですと、隊長には途中の避難小屋で待機していてもらうことにする。

 もう一人のメンバーも行くのをやめましょうと提案してくる。この風では厳しいですよと。わたしとしてはなんら厳しいと感じておらず、なにか現状不具合が発生しているのですか?または行けない特段の理由がありますか?と問い、ないというので、ならギリギリのところまで行きましょう。無理なら適切に撤退判断とすればいい。突っ込み過ぎだけは気を付けましょう。

 

 

 因みに、海外遠征想定で準備していた装備がしっかり仕事をしてくれているわたしは、この強風の中でもぬくぬく。遠征への準備にぬかりなく、強風の中でもちっとも寒くない。山を趣味にし始めた時に買ったノースフェースの青いハードウェアは10年を越えるボロボロの代物でしたが、数日前に投稿した松木ジャンダルムの冬壁で勇退してもらいました。これから冬はこのマックロクロスケで山に挑んでいこうと思います。

 

 

 

 避難小屋から茶臼岳までのルートはさらなる強風が待ち受けていました。時折耐風姿勢をとりつつも進み続ける。山頂直下の分岐の風があまりにも強かったので、仲間に引き返しますか?と問うと、行きましょうとのこと。仲間もやる気が出てきたよう。

 

 

 かなり厳しい条件下でしたが、なんとか登頂成功。いい練習になったと思います。

 下山はホワイトアウト気味だったため、小屋に直接は帰れず、下山の登山道まで下りてから小屋まで登り返しました。

 

 

 

 短いですが撮影しておきましたので、荒天の那須を味わっていただければと。

 

 兎にも角にも下山することに成功。事故なし負傷なしと思いきや、登頂した仲間の一人は指先を豆粒程度凍傷してしまったとのこと。また、ネックウォーマーで登っていたので、ガチガチに凍ってしまったそれと顎が擦れて傷を負ったとのことでした。

 うーむ、いかん。登山隊のモチベーションが上がってくるのが遅い。装備もまだ十分に用意されていないようだ。今回は各人、ゴーグルやバラクラバなしというのが発覚し、またこの程度で凍傷になるようでは手袋の買い替えも必要か。装備の欠点や不足がこの時点で判明し良かった。参加しなかった2名も大丈夫だろうか?

 

 因みに、この日は他に3パーティ入っていましたが、1パーティは樹林帯に出ずに撤退。お客さんを連れたガイドさんは避難小屋で撤退。もう1パーティは強風で下山をすることもできないと諦めて避難小屋でビバーグとなりました。ビバーグした方たちが心配でしたが、事故の報道がなされなかったので、無事に下山したようです。

 取りあえず、厳しい条件下の山には入らないのが正解です。しかし、好条件の山ばかりやっていても成長は望めません。冬山の天気は急変するからこそ、どんな場合でも対応できる技術や装備が必要なのです。そういう意味では、うちの仲間もまだまだだったということです。いざという時なにかがないでは後の祭り。上手く訓練して高めていくことが肝要です。

    また、隊としてのコミュニケーション力も高めていかないとと個人的にも反省の多い山行となりました。遠征までまだ時間はある。個人から隊へ、パーティの強さを磨いていきたい。(おわり)