近況570.上越のマッターホルンに挑む! | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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 昨年の322日、巻機山へバックカントリーしに入りました。その時登っていた尾根から来た方を振り返ると、ひと際目をひく山容がその先に鎮座していました。その頃というか今もですが、おもしろい山はないか面白いルートはないかと、探していた時期でもありましたから、おおマッターホルンのようなじゃないか!あれを登れたらおもしろそうだと帰って調べてみたら、なんてことはない上越のマッターホルンと既に親しまれている大源太という山でした。(因みに、大源太山は同山域に2座あるので注意)

 調べてみたら、大源太山は多くの方に季節関係なく登られていましたが、通常ルートではなく、北側から入るコブ岩尾根の冬期アルパインなら面白そうです。ちょうど会津のマッターホルンを登ったばかりだったので、



冬型暴風雪のマッターホルンに挑む!

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11979320951.html



 来年のマッターホルンはここにしようと1年寝かせていた計画がやっと日の目を見ることになりました。それが今から報告する大源太山コブ岩尾根(冬期アルパイン)です。冬期アパインとはいえ、コブ岩尾根から大源太山を取る同ルートは、ネット上に既に記録が残っています。それをそのまま踏襲しても面白くない。新しいことがやりたい。

 そこで今回は全装でコブ岩尾根に取り付き、大源太を落としたらそのまま七ツ小屋山へ繋げて謙信尾根を下りる周回ルートを計画(稜線上で適地を見つけて幕営の12日)。これならネット上に記録がない。全装でコブ岩尾根に取り付いたものの抜けられないと判断できたら、取り付きに戻り幕営して、翌日に空身で大源太だけアタックに切り替えないといけないし、稜線に抜けたものの大源太山から七ツ小屋山までの稜線がラッセル地獄だったら、これまた適切に撤退してこなければならない。記録がないだけで、考えることは山のようにある。面白い、ワクワクする。さあどうなったかは報告をどうぞ。



山行報告【大源太山コブ岩尾根(冬期アルパイン)】前編

メンバー:わたし(L)、他1名

12日予定ルート:清水―丸ノ沢出合―大畠ノ沢出合―Ⅱ峰―コブ岩尾根取付―大源太山―七ツ小屋山(周辺適地を見つけて幕営)

13日予定ルート:幕営地―清水峠―丸ノ沢出合―清水



●ルートについて●

 12日に全装にてコブ岩尾根経由で大源太山を目指し、七ツ小屋山との間の稜線で適地を探し幕営。13日はコンディションを見定めた上で、謙信尾根を下山する又は七ツ小屋山山頂でUターンして大畠ノ沢を下山するかの判断をする。12日全装でのコブ岩尾根登攀を困難と判断した場合は、大畠ノ沢出合まで撤退し幕営。13日に幕営装備をデポした上で、コブ岩尾根―大源太山―大畠ノ沢下降というルートで幕営地まで戻り、初日歩いた川沿いを下山する。



1.装備

 今回は2名で挑むも、ザイルは50mの他に10mを上げることにした。地形図と睨めっこすると、コブ岩尾根に取り付いた後もさほどの傾斜は確認できず、仮に50mザイルを背負っている者が滑落したとしても、10m背負っていれば、何処にいても残された者が降りてこられるだろうという判断から。

 支点用のギアは、カムとナッツは本当に微量とした(使う箇所はないとの判断から)。逆にスノーバーは2本、あとはもしものための土嚢袋と、悪天用の捨て赤旗を数本。今回気を使ったのは不要なギアをできうる限り減らすということでした。今回は幕営装備を担いでの登攀だから軽いにこしたことはない。必要なギアを間引くのはいけないことだが、工夫し減らす努力は必要だ(例えばPASはスリングで代用できるから置いていくみたいな)。今回は相当軽くすることができました。無駄というのは探せばまだまだ見つかるものだなあ。

 とはいえ、準備をしてもそれを持参しなければ意味がない。仲間が土嚢袋と赤旗を忘れてきた。「ヒヤリハットだな、注意しなければならない」と、お互い行き車内で意識を高め合う道中でした。



2.山行記録(312日)





 大源太山コブ岩尾根に取り付くためには、清水から長く川沿いを歩かなければなりません。天気は予報通りよくなく、ガスは出ているものの風はないという感じ。





 河原へ降りて堤防を越えると、丸ノ沢出合。





 今年は雪がないので、たぶん例年より厳しい渡渉を求められたに違いない。個人的には2月に松木ジャンダルムでドボンしているので、嫌な予感が押し寄せる。慎重にこなしました。仲間にも落ちないでくれよと願うような気持です。一度ドボンすると心境が違う。あれはあれでいい体験だったのだな。






 丸ノ沢に入った後も、右に左に渡渉を繰り返しつつ、歩くルートを見定めながらの進軍です。眼前に大源太山コブ岩尾根らしき姿を目にすることができる時間もあったが、基本ガスっていて、目的地を目指すには地図読みが必要な状況でした。目的地が見えないので、一部右往左往したものの、結果的には上手く狙った場所に出た。弱層テストをすると、15㎝程度の新雪の下に固い層が、あきらかな弱層。おまけにベアリングまで入っている。これはまさに雪崩頃の状態だ。斜面の登り下りは注意しなければならない。

 とはいえ、新雪はさらさらではなく、重い湿った雪。起こるとしたら湿雪表層雪崩または、湿雪全層雪崩か。重い雪だから斜度がゆるいところより、斜度が急なところが注意だ。行くとき一気に行く。





 しかし山行は継続すると仲間と確認。今回は大畠ノ沢を下降する可能性が低いので、雪崩るような斜面には入らない。雪崩の危険はルート上には存在しないと判断。気を付けるのはデブリが左右に走っているコブ岩尾根までの取り付きだろう(ここは急いで登った)。

 さて、コブ岩尾根をルートファインディングすると、どうにも雪が少ないことが分かった。ほとんどブッシュが出ているような状態だ。見栄えのするトサカ岩周辺は雪の上を快適に歩けるはずなのだが、どこもかしこもブッシュが出ている。藪、藪、岩、雪、藪、岩、藪、雪というまさに春山の様相。これは難しい山行を余儀なくされるだろう。





 今回はスキルアップに来ているので、ブッシュを逃げていきなりトサカ岩に取りつくことはせずに、できる限り下のコルに取りつきそこから詰めることにした。





 藪との格闘のはじまりです。





 藪があまりにも濃いため、尾根を藪トラバースすることもあります。こんなのもはや雪稜歩きとは言えません!





 基本落ちても死なないので、仲間とは間隔をあけてノーザイルで進んでおります。 トラバースを駆使しつつも、尾根に出られそうな時はその都度登りつめる。









 トサカ岩が見えてきました。・・・が、目の前岩肌が露出している?!岩に雪がうっすらと積もっているのが一番やっかい。蒲田富士の岩稜で敗退した記憶が蘇ります。ルート選択がカギです。





 雪の下の岩は暖かさからか凍結しておらず、ボロボロとはがれる岩ばかりでした。掃除をしつつ、下の仲間に情報を落としながら慎重に登ります。ここもノーザイル。落ちても死にはしないので、スピードを優先させます。





 ルート選択ドンピシャ。見事尾根に出ました。楽し~





 そしてトサカ岩で記念撮影。尾根上の雪もいかにも崩れそうなそれです。長居は禁物。





 その後ブッシュ帯を利用したトラバースを1回して再度尾根に登りつめる。





 その先を見上げるとまだまだブッシュと岩の薄雪が待っていた。うーん、腕がなるぜ。雪庇に注意ね~と後ろに声をかけつつ、リッジを抜けているとそれは起こった。足元がのリッジが崩壊したのである。仲間からの止めて止めてとの声が耳に入る。

 滑落停止すべく繰り出したピッケルは、無情にも下の固い層か岩肌にはじかれてしまうのだった。(つづく)