よみやすさ(@大人図書館Vol.7) | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録



図書館のベストリーダーの上位に入っているというだけで、右にならえで予約しといた東野圭吾著『虚ろな十字架』を読んだ。重いテーマだが、とても読みやすい。数時間で読めてしまった。読みやすいぶん、主題の掘り下げは足りない気がするけど、内容をまったく知らずに読み始めたおかげで、単なるメインストーリーの展開1つに「おおこういう話し」なのかと、素直に驚くことができて良かった。


そこで読書趣味ではなかなかこういう機会には出会わないものだなと気付いた。映画では新作であれば予告を観ず、レンタルであれば内容や縁者をあえて調べず借りる、こんなことはよくある話し。ジャンルも知らずに読みだした小説なんてあっただろうか。なかった気がする。ああ古典はそうか。古典を読むと、超有名な作品をなんと青春小説じゃないか!とか、ベタベタな恋愛小説とはね・・・、と驚かされる。


因みに、最近は東野先生の本は率先して読まない。読みやすいのは素晴らしいことだが、読みやすいだけで身にならない気がするからだ。『天空の蜂』を読んだ学生時分には、原発について知る良いきっかけになったけど、あの小説も今読むと掘り下げ感が足りないとか感じるのだろうか。大人になってからの東野圭吾作品との付き合い方が今ひとつ分からないと思う今日この頃。そんなわたしの東野先生のお気に入り作品は、御多分に漏れず『白夜行』と『容疑者Xの献身』だったりします。(★★★・・)




順番の回ってきている予約本がない凪に入ったので、久しぶりに図書館の書棚を渡り歩いてみた。して目にとまったのは、先週末に劇場版が封切られた伊坂幸太郎著『グラスホッパー』。伊坂先生のファンって最近多いよね。一時期はちまたに東野圭吾ファンがあふれかえっていたけど、少し前から「伊坂幸太郎のファンです」という定型詞をよく耳にする。こんなことを書くわたしは当然伊坂幸太郎の著作にはまったことがない1人であり、なんともぬるい話しだなあと思う数々の作品は、読みたいと思うどころか敬遠の対象だったりした。つまるところ、わたしはファンタジーというジャンルが好きじゃないのです。だからハリポタとか、指輪物語とかにもはまらないのでしょう。


やはりそこは出自がダークサイドの人間にとって、不幸は不幸であって、そこは誤魔化さず書くべきだと思ってしまうし、伊坂先生は本当の不幸というものを知っているのか、提示されている不幸とその当人の描写のギャップに戸惑ってしまうのだな。とわたしはハリポタのハリーにすら思っているのですから、単にファンタジーがあわないだけなのかも。ファンタジーの住人にだって、すぐおまえ甘いんだよ!とつっこでしまいます。(すいません)


そんなわたしでしたが本作にははまりました。これは面白い小説であり、さらにはとても悲しい小説です。従来の伊坂作品同様の読みやすさは健在でありつつ、先言及の甘さが嘘であると伝えています。逃げられない現実があり、それでも生きていかないといけないので妄想空想ファンタジーが必要になってくるのが人生ってことなんだな。


つまりは、シェイクスピアよろしく、生きるか死ぬかそれが難題だの話しであり、自殺も恐くてできないという話しなのだった。傑作!(★★★★☆)




ジャンルが飛びますが、予約していた小野正嗣著『九年前の祈り』の順番が回ってきたので読む。表題の芥川賞受賞作を含む短編集ですが、全編で1つと解していい作品となっています。表題作に限って言及すれば、現在と過去を交錯させながら、ある一点に向けて話しを進めていく手法は構わないのだけど、現在のエピソード(日本の田舎)の美しい文章と過去のエピソード(外国)の表現レベル差が激しすぎて、なんとも居心地が悪かった。冒頭なんて本当に気持ちよく読み進められていたのに残念です。外国にちゃんと取材に行って書いたのかしら?(★★☆・・)