山行報告【槍ヶ岳北鎌尾根(春合宿・残雪期バリエーションルート)】3日目&まとめ | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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明朝は深夜からの雨が続き、風も強くテントをしまうのに一苦労の天候で、昨日のうちに抜けておいて本当に良かったと胸をなで下ろしました。7時前に槍ヶ岳山荘を出発して、槍沢ロッヂ周辺でデポしていたアプローチシューズを回収して横尾で履き替え、上高地には14時前に到着です。


厳冬期靴を背負うと雨で濡れてしまったテント等と相まってそれなりに重くなりましたが、やはり靴が変われば使う筋肉も変わるということで、上高地までの足取りがぐっと軽やかになりました。




因みに槍沢の斜面は、ほぼすべてシリシェードで下りました。過去最長シリシェードです。ザラメ雪でよく滑り本当に楽でした。


5. まとめ

北鎌尾根を12日で抜けるにはやはりそれなりに体力というか歩荷力が必要でした。自信のない方は万全の体力を身につけて挑む必要があるでしょう。というのも、水俣乗越から天井沢へ下りると、確かにエスケープルートは存在せず、そこで、わたしのように高山病になったり、例えば風邪を惹いたり、足首ひねったりと、まあいろいろあるわけで、となると、そういう状況でも戻ってこないといけないのだから、やはりギリギリの体力で挑むのはリスクがはらんでいると考えざるを得ません。条件が良ければ問題ないけど、悪い条件が揃った時のことを考えなければならない。体力はあればあるほど良いです。


登攀力はあまり必要ありません。マルチピッチ3級をしっかり登れれば問題ない。難しいところは全部巻けます。逆に、必要な力はアルパイン力です。はがれる岩への感覚や対処、ガレの歩き、ブッシュや氷の利用、まあ色々あるけど、北鎌の岩は本当によく動きました。下半身くらいの大きさの岩でも動く場面は何度かありました。岩を信用しないでテストしながら登ることが常態化していないようなアルパイン未経験者は危険です。


そして読図力とルートファインディング力。道標やマーキングは一切ないので、自分で納得するまで読図しなければならない。ブログからひろってきた写真頼みではミスする可能性がある。例えば、違う沢筋を水俣乗越と表記しているブログがありました。北鎌沢右俣に似た沢筋も案外多い。必要なのは納得できるまで地図を読むことです。


そして北鎌尾根上のルートファインディング。何本もトレースが付いてるので、自分で選択していく必要があります。尾根を直でいくのか、天井沢側を巻くのか、千丈沢側を巻くのか、常に自分の力量と雪の状態等を見極めて判断していく必要があります。


ここまでは何処にでも書いてあること。ここからがわたしが今回感じてきたこと。北鎌尾根に必要なのは自分力であると思いました。自分力というのは、ゆるがない自分ということです。兎に角、他隊が自分の読図と違うルート取りをかなりしていました。そういう時に自分力がないと惑わされます。他隊は他隊と割り切り、自分のそれまでに準備してきたことを信じることです。そこがぶれると時間がかかってしようがない。


山屋さんも出自が違えば、重要視していることが違うので、北尾根に入るレベルになったら、みんな似たり寄ったり、上回っている部分も下回っている部分もあたっりなかったり。つまりは優秀そうに見える他隊であろうと、それはそれと割り切って、現場では自分と仲間のみを信じる力が必要です。


例えば、今回わたしたちが北尾根を歩いていると、パートナーの後ろをぴったりくっついてくる登山者がいました。わたしたちが落石すると危ないので、先に行ってもらったのですが、その人、トレースが複数に別れていると必ず休憩しているんですよね。たぶんわたしたちを待っているんだと思います。そして、わたしたちが行くとまたぴたりと付いてくる。そのようなことでは困るということです。


残置ありきで北鎌尾根に入るのも、人任せの登山をしているとわたしは思います。わたしたちの真似をする必要はありません。残置は使ってもいいと思います。ただ残置のない状況でも抜けられるような準備はしておかねばならないでしょう。その準備をしない人は支点の安全性を現地で判断する気がないのと同義です。問題があると思います。


この自分力というのは自信ではりません。自信は過信につながります。自信なんてないほうがいい。ただただ謙虚に安全登山を追求し、自分で準備してきたことを信じて、現地で実行判断してくるということです。信頼できるのは自分と仲間だけだという意識がなければ、バリエーションルートでは、条件が悪ければ事故を起こすとわたしは感じて帰ってきました。


それと細かいことですけが、独標と槍ヶ岳直下では3ピッチザイルを出したわけですけど、結構ジグザグにルート取りすることになるので、ザイルの流れを綺麗にする意識を必要以上に持っていないと、ザイルをスタックさせたり、リードは重いザイルをひぃひぃと引くはめになります。


今回わたしはその点に気付いて、ザイルの流れを綺麗にすることに専念して、登ってきました。2回目以降は、本当にザイルの流れを綺麗に作れたので、そこはちょっと嬉しかったですね。


わたしが持っていたNPとヌンチャク数は下記だけです。


ナッツ:479

カム:キャメロット0.40.50.7

カム:キャメロットX4 0.4


ナッツは使わないものもありましたが、34回は使いました。確か9番は使わなかったけど、もっと大きいのが1つあれば欲しかった場面はありました。カムは4本完売したピッチがありましたが、上記くらいで十分残置を一切使わないでも北鎌を登れます。但し、カムを入れる場所がマーキングしてあるわけじゃないので、必要なギアの数は人によります。あくまで参考程度にお願いします。


アルパインヌンチャクは6本は必要ですね。アルパインヌンチャクは流れを良くするための補助に大活躍しました。


最後に、わたしはいままで靴下を汗でびしょ濡れにしたことはなかったのですが、北鎌ではなってしまいまいた。初日も靴下が結構濡れてしまい、2日目は予備に履き替えたら2日目はとうとう靴下どころか靴の内側までびしょ濡れもびしょ濡れ。雪でではありません、汗でです。いままでネオプレン製ソックスの必要性の議論には参加してきませんでしたが、今回の北鎌が厳冬期だったらと思うと、寒気がします。


長時間辛い行程を数日間歩く場合は、靴下はネオプレン製でないと靴を濡らして怪我ににつながる可能性大です。これからは厳冬期靴を履くときはネオプレン製ソックスと組み合わせて挑むことにします。好天の残雪期で本当によかった。




以上、多いに勉強になった北鎌尾根でした。北鎌尾根上から眺める雪化粧した槍ヶ岳は本当に素晴らしく、興味のある人は目標にする価値のあるルートだと思いました。わたしはオススメの好ルートであると断言しますよ。(おわり)