山行報告【槍ヶ岳北鎌尾根(春合宿・残雪期バリエーションルート)】1日目後編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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水俣乗越からは天井沢の急斜面を下降し北鎌沢出合を目指します。しかし、ここではっきり書いておきましょう。今回の山行の核心は天井沢のシリシェードでした。天井沢のシリシェードは地獄への近道です。シリシェード技術がないと相当危ないです。わたしはシリシェードにそこまでの意識がなく、単にスピードの出そうな斜面のシリシェードを楽しみに、何の気無しにシリシェードに突入してしまいました。


そしたらもうスピードが出る出る。あっという間に数十メートル。そろそろ減速しようかなあとピッケルで雪をまさぐるも減速しない。あら?これもしかして滑落停止しないと止まらないんじゃない?というか滑落停止でも止まらないスピードに達しているんじゃないの?そう気付いたときには遅かった。早速、おりゃと反転して滑落停止に挑むも、突き立てたピッケルは身体ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がり、それでも何度か試みた滑落停止で最終的に止まりました。


ここのシリシェードは思った以上にスピードが出ました。判断ミスです。ネット上の記録にシリシェードが楽しいなんて書いてあったけど、わたしにはここの天井沢をシリシェードで最高速に挑む技術がなかったです。まだまだでした。その後は減速をかけつつのシリシェードでおりました。




天井沢を下っているとと初めて槍ヶ岳北鎌尾根を目視することができます。とても長い尾根ですが、こうやって目にできればやはり興奮しますね。


その後北鎌沢出合を目指しますが、北鎌沢も似ている沢筋が結構あるので、読図力が必須です。道標もマーキングもないです。出合には顕著なケルンがあるなんて書いてありますが、今回はありませんでした。


出合には先に着いている団体パーティが1隊いて、テントを張っていました。1450分ですから、わたしたちもそろそろ幕営しても良い時間帯なのですが、明日中にどうしても山頂に抜ける必要があったので(3日目は天候が崩れる予報)コルまで登る決断をしました。




北鎌沢右俣を登っていきます。「北鎌沢右俣は、登っていると分岐が何度も出てくるが、兎に角分岐を右へ右へと分岐を取り、最後だけ左に取れと書いてあります(最後右に行くとクライマーズホイホイにはまる)」とよく書いてあります。


しかし、雪があるこの時期はそんなのは関係ありません。自分でルートを見出せばいいのです。この日北鎌沢右俣にはトレースがなく、ここを行くのもわたしたちが一番乗り。自由にルート取りできました。最初の分岐で定番の右ではなく、左に取り、そのままストレートに尾根上までつめました。




分岐を左にとると、北鎌のコルの1つ隣の尾根のような場所に出てしまうのですが、簡単なトラバースをすれば、北鎌のコルに出られるので問題ありません。わたしたちがその隣の尾根のような場所に到着したのは1830分。暗くなる前にテントを張ろうと、北鎌のコルへのトラバースは翌日に残し、張れそうな箇所に幕営しました。2-3テンで1角が宙に浮くくらいのスペースなので、真似する際は注意が必要です。あしからず。




因みに、この日、北鎌のコルの幕営地まで上がってきたパーティはいませんでした。水俣乗越の登りも北鎌沢出合右俣の登りもトレースを刻めたので大満足です。しかし、結果的に13時間行動でバテバテとなってしまい、翌日の行動開始が遅れたので、15時前の北鎌沢出合到着時に幕営したほうが良かったかもしれないという考え方もできます。結果は神のみぞ知るなので判断はつきかねますが、個人的にはその日にできることはその日にやっておいたほうが、翌日の行動計画の正確性が増すので、これで良かったかなと思っています。


水については、上高地から槍沢ロッヂまでは2人で2L、槍沢ロッヂで5Lにして、北鎌コル付近まで上げました。が、これは失敗で、北鎌沢出合で水は簡単に補給できるので、わたしたちは水を早く担ぎ過ぎました。というか幕営した後に水を作ればいいだけなんで、水を上げる必要はそもそもなかったのかも。無駄な体力を使ってしまったわけです。早く飯にありつけて良かったという面もあるにはあるけど。


さて、書いておかないといけないことは、わたしはこの北鎌沢右俣の急斜面の登りの途中で体調が悪化してしまい、非常に足取りが重くなってしまいました。コル付近まで出るのに1830分とかなり遅くなってしまったのもわたしのせいです。


その時は、単純に睡眠不足だと考えていたのですが、今となっては高山病であったと結論付けています。北鎌のコルの標高は2520mなので、この標高と高山病が結びつかなかったのですが、ヒマラヤ遠征の時とまったく同じ症状だったから、今となれば間違いありません。前夜発の2時間睡眠や13時間のきつい行程もさることながら、天井沢のシリシェードでの滑落停止からくる無意識のストレスが、原因だったのではないかと考えています。この標高で高山病症状は出たことがなかったので、単純に睡眠不足とかではないのかなと、思っています。ともあれ、初日の北鎌のコルへの登りはパートーナーに救われました。パートナーもここが一番の核心であったと語っています。(2日目につづく)