山行報告【槍ヶ岳北鎌尾根(春合宿・残雪期バリエーションルート)】1日目前編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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1. 前書き

今年の春合宿は、残雪期の槍ヶ岳北鎌尾根と決めました。私見ですが、現状の自分のレルで挑戦するのには問題のないレベルであると思えたので、単にルートを抜けるという結果を得るのみならず、アルパインルートでの多人数行動の統率力向上を視野に入れて、合宿という形式にしてみました。


当初最高4名で行く予定でしたが、紆余曲折あり、最終的に2名で挑むことになりました。予定していた目的は果たせなくなりましたが、結果的に、自分単体の中の成長を多分に勝ち得たので、とても良い山行になりました。以下、報告します。


2. ルートと行程

マイカー登山なので駐車場に戻るため、上高地からの入山としました。行程は23日で、1日目(上高地ー槍沢ロッヂー水俣乗越ー北鎌沢出合ー北鎌のコル)2日目(北鎌のコルー独標ー槍ヶ岳山頂ー槍ヶ岳山荘ーババ平)3日目(ババ平ー上高地)としました。1日目と2日目の幕営地は時間や体力により、前後する可能性があるのは計画に織り込み済みも、予備日は設けず、必ず3日間で帰るという計画です(帰れないようなら尾根に入らない)。


3. 装備

一般的な23日残雪期縦走する際の装備(幕営装備含む)及び食糧と一般的なクライミング装備(ハーネス1、ヘルメット1、確保器(兼下降器)1、環付3、カラビナ3、アルパインヌンチャク4、スリング(1202、スリング(601、スリング特長1)の他に、共同装備として、ハーフロープ1、カム4、ナッツ5、アックス(兼ハンマー)1、ハーケン1を追加、また槍沢ロッヂまでの歩きを考えアプローチシューズを装備に加えました。


今回の装備は上手くいきました。アルパインヌンチャクもトータル8ありましたが、完売したこともありましたし、カム、ナッツもしっかり使いました。アックスは必要ありませんが、ハンマーと兼ねているのでハーケン同様、不測の事態に必要なのでやむなしです。


唯一持っていく必要がなかったのはPASです。今回はすべてメインロープでセルフを取ったので、出番なしでした。軽くしたいときには、普段利用しているからといってPASを常に携行する必要はないですね。


それと、ビーコン、ゾンデ、スコップも装備に加えてあります。北鎌にこれらが必要と判断するかは人それぞれだと思いますが、わたしの個人的な見解では当然装備に加えねばなりません(よそのパーティが雪崩に巻き込まれる可能性のある山域に入る際には、自分のためでなく携行する)。


4. 山行報告1日目

本ルート完遂のためにもっとも必要な要素は体力です。3日間ずっと長時間歩きますので、体力に自信があると断言できる方にしかオススメできません。体力があってこその適切な判断、適切な技術行使です。または体力温存のための工夫も必要でしょう(荷を軽くするなど)。わたしたちは、上高地を530分に出て槍沢ロッヂに10時に到着するまで、厳冬期靴を担いでアプローチシューズで歩きました。




靴は歩きやすいもののほうが断然楽です。靴が変われば使う筋肉も変わります。結果的に体力温存に繋がるわけです。アプローチシューズは槍沢ロッヂ先の雪中に埋めてデポし、そこから厳冬期登山靴で移動しました。今年の雪は横尾まではほぼなかったので、これが大成功でした。




大曲までは一般縦走路と同じなので省きます。大曲から水俣乗越へルートを取るところからがバリエーションルートの範疇です。同ルートは標識もマーキングもない昔ながらの登山を楽しめる反面、読図力とルートファインディング力が必要になります。


水俣乗越を見つけるにも同じような沢筋が何本もあるので迷います。ネット上には水俣乗越を間違えて表記している記録があったり、水俣乗越自体を大変なので右に巻くという記録があったりします。




この日も、わたしたちが水俣乗越であると判断した方向とは、大きく違う右巻きをしているパーティが何隊もいました。何故、あんなに巻くのか?あっちが正しいのか?複数の隊に堂々と行かれると不安になります。しかし、人のトレースは関係ありません。自分で読図することを放棄したら最後、待っているのは遭難です。わたしたちはわたしたちなりに見出した水俣乗越を目指してルートを取りました。




水俣乗越は近く見えるものの、その実は本当に遠い斜面で、水俣乗越に到着するまでに大変苦労させられました。ともあれズバリ水俣乗越に出られたので、ルート取りは大正解です。あとは、天井沢を下降した後に、大きく右に巻いたパーティより先にわたしたちが出ていれば、より良い判断だったということになります。


因みに、水俣乗越までトレースがなかったので、この日わたしたちが一番乗りだったのですが、当初は水俣乗越を大きく右に巻くパーティばかりでしたが、わたしたちが水俣乗越を直に登るルートを取った後は、そのトレースをなぞるパーティばかりとなりました。


なんというか、前に歩いている隊について来ているだけじゃないの?人のトレースに惑わされちゃダメなんじゃないの?心配だなあなどと考えていました。(1日目後編につづく)