山行報告【八ヶ岳1泊2日(アイスクライミング・冬季登攀)】1日目 後編 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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1日目南沢までのつづき)

南沢小滝は思っていた通り小さい滝でした。傾斜もゆるめで、新人教育に適しているような滝です。栃木でわたしが何度も入っている松木沢にはもっと厳しい滝がいくらもあります。ネット上に小滝で練習して、大滝勝負と書いている人が多いのも頷けます。


因みに、大雪のあとの八ヶ岳です。やはり南沢にアイスで入っているのは、私たち以外では一組(2名)だけでした。


兎にも角にも早速登るわけですが、今回の隊編成だとわたしが一番上手い(ということになっている)ので、わたしがリードしなければなりません。思えば、セカンドやトップロープですら登ったことのないルートを、いきなりリードで登ったことなどないわけですが、その重大さには取り付くまで気付かされません。


それは氷に取り付いて、最初のスクリューを入れようと氷で止まっているときに始めて気付かされるのです。もっとバーティカルな滝でもすいすい登れていたのに、これが私的未踏でリードとなると、傾斜が緩くてもなぜか腕があっという間にパンプするのです!ようするに無意識に余計な力が入ってしまっているわけです。無駄にアックスを強く握っているとか、強く振ってしまっているとかなんらかしら原因があるのでしょう。兎に角、すぐに腕がやられました。


そして掴まっている腕がきつくなると、スクリューを入れることになかなか集中ができません。となるとスクリューも入らない。張り付いている時間は増える一方。きびしい!


私的未踏のリード、ここまできつかったか。いやさ言い直させて欲しい。私的未踏のリードがきついわけじゃない。私的未踏のリード体験が始めてだったからきつかったのだ。こんなに余計な力が入ってしまったのは今回だけだと思いたいが、これは来シーズンどこかの私的未踏でリードしてみないことには分からないこと。取り敢えず、来シーズンの検証材料として棚上げしておこう。


そんなこんな、わたしは予想外にも苦戦してしまいましたが、南沢小滝を一発で落としたというためには、絶対にテンションをもらうわけにはいきません。頑張ってパンプした腕をレストし、楽な姿勢を探し探しなんとか抜けました。はぁ良かった。


南沢小滝ノーテンで取ったどー!


滝の上は広めのステージになっており、支点の構築をしなければなりませんが、かなりの積雪量で、事前確認しておいた左サイドの立ち木の残置は雪の下。でもおおよその目星はつくので、そちらに向かいます。ズボ、ズボ、まさか滝の上でもラッセルを余技なくされるとは・・・・って、ん☆?!※?●?!△!


足もとの雪を掘ると、そこは雪水なのでした。言うなれば凍りかけ間際の池と言ってもいいでしょう。わたしの両足はそこに完全に水没していたのです!!!


フ○○ク!! 急いで、池から飛び出ますが、来た方向に飛び出すわけには行きません。来た方向は凍った滝です。戻れば最後、滑落するのみ。とにかく、奧へ奧へと向かいます。ずぼ、ずぼ、ずぼ、ずぼ、フ○○ク!!!


やっとの思いでステージ端まで来て、足もとを確認。足は水を吸った雪でつくね状態になっていました。触っても簡単に落ちるような雪ではありません。フ○○ク!!でも足の感触からすると、靴下は濡れていないようです。そこは助かったようです。


兎に角、支点を作らねば。ん?雪水に突き刺し使ったアックスも雪水が張り付きつくねに

なっております。穴が、、穴があかん、、いや、それより手袋があかんわ。いや、まず支点こうして、あっ、、、、!?


滝下へ落ちていくトップロープ・・・


トップロープが落ちたことで、はたと我に返る自分。冷静さを取り戻し、隣で滝に張り付いているチームに声をかけ、トップロープを借りてロープを上げさせてもらい、トップロープのシステムを構築。




その後は後輩2名がトップロープでクライミングし、わたしもリードした時よりも難しめのルートを一本登ってみました。


しかし、先ほどはあんなに苦戦した南沢小滝も、リードでなければ滅茶苦茶簡単。やはり無意識での緊張、これこそが大敵なのです。結局は経験をつむほかありませんな。。今回はこれを知れただけでも収穫です。


後輩2名は、今シーズン始めは同じくらいの力量だったらしいのですが、1名が遙かに上手くなっているようで、鼻が天狗のようになっておりました。切磋琢磨できる相手がいるというのはいいことですなと、しみじみと・・・・・おや?


どうやら、靴下が濡れだしているようです。濡れだしている気がする。いや、確実に濡れてるってこれ!冬季登山靴は簡単に浸水しないようにできています。それが災いしました。やはりわたしの靴は水没し、確実にびしょ濡れ状態と化していたのです。この日は偶然にも予備の靴下まで履くという靴下2枚履き体勢だったので、外側の靴下が濡れてもまだ素足を冷やすことはありません。しかし、素足に濡れが到達するのは時間の問題でしょう。ピンチ!!


八ヶ岳、そこは本州一寒いと言われている場所です。八ヶ岳は冬季入門的な位置付けですが、寒さにかぎっては何処よりも寒い。現に快晴無風のこの日だって、美濃戸口のエクストレイルの温度計が-17℃を指し示していたのですから宜なるかな。そこからそれなりに登ってきたこの地点はより相当寒いのはお分かり頂けることでしょう。


頃合いだったのでトップロープを撤収して行者小屋へ目指します。時間がないので南沢大滝を目視するのは諦めました。わたしは冷静を装っておりましたが、素足が凍る前にテントを張って靴を脱げるか、時間との勝負になっていました。せっせと進まねばなりません。






兎にも角にも、この日は足が凍る前にギリギリ行者小屋へ間に合いました。あと20分も遅かったらアウトだったでしょう。素足が冷やされると手指も動かなくなり、全身に冷えが来ます。冬季に靴が濡れるのは死活問題なのです。




火を焚き難を逃れたあとも、就寝までずっと靴を乾かし続けました。分解できるパーツは全て分解して、完全に乾いたと言い切れるまで乾かしました。ここまで乾かすことができたらもう安心だろう、そう思いました。


問題は靴下です。この日は普段使わないでザックに入っているだけの予備靴下を、なんの因果か重ね履きしてきてしまったのです。つまり予備も濡らしてしまったということです。靴は乾いても完全にびっちょりの靴下をカラカラにまで乾かすのは困難です。


そこで、後輩が予備の靴下を貸しますとの提案をしてくれたので、その提案に甘えさせていただくことにしました。ありがとうWさん。




さて、こんな状況ですが、明日の赤岳主稜はGO!!です。行者小屋に来る途中、赤岳主稜のルートを視認できるところがあり、そこでコピーしてきたルート図と見比べながら、取り付き確認、全体のルートの確認ができたからです。行者小屋から山頂へのトレースも問題なく付いていました。天気予報は明日も快晴無風。人も入っているようです。


絶好の赤岳主稜日和。行かないわけにはいきません。今日はアクシデントがありましたが、本番は明日です。私的未踏のアルパインルート。全ピッチをわたしがリードします。うーん、ゾワゾワしてきた。今日は足の宙ぶらりん初体験、両足の水没初体験、トップロープ落と初体験と、失敗とアクシデントの連続であった。今日は厄日だ。声に出ていた。明日はどうだ。(2日目につづく)