近況174.手の痕跡 ロダンとブールデルの彫刻と素描 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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安室奈美恵のコンサートより遡ることかなり前、都内にいた際に時間があったので、お気に入りの国立西洋美術館に赴いて、「手の痕跡 国立西洋美術館所蔵作品を中心としたロダンとブールデルの彫刻と素描」を覗いてきたので、その報告。



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あまり触れる機会はないけれど、数年前からわたしは彫刻に興味があって、絵画より彫刻の前に立ち止まってしまうことが多くなったのだけど、その理由はいかせんよく分かってないというのが実情で、それは何故かっていうと、彫刻の魅力はどこから来るのか、もとい彫刻の良さと悪さの違いはどこか、わたしにはいまだ掴めずにいるから。ロダン58とブールデル11点の彫刻が一堂に会している本展なら、なにか発見できるのではないかと楽しみにしていた展覧会です。


さて、大きなフロアを区切らずに作品をゴツゴツと配置していった簡素な陳列に、否が応でも軽薄な我が魂は持ち込みを拒絶されます。これは作品と向き合わない人には居たたまれない空間になるに違いない。わたしは作品を前にして、この簡素な空間から何かを得て帰ることができるのだろうかと少し不安になったとかそういうことを書いている場合じゃないんだ。先を急ごう。


わたしが展示品から今回強く感じたことは、彫刻はアートである以前にキセキのようなものだなという点。そして見る側になんらかしらの言葉を残す。ロダンの様々な突っ込みたくなるような躍動感溢れる構図よりも、単に対象をトレースした頭像の数々がそのことをわたしに教えてくれます。物にも魂が宿ると信じている人は多いけど、ロダンの頭像なんかを見ているとそのことについて考えざるをえなくなる。ロダンの頭像は対象をあまりに正確にトレースしているため、生身の人の頭がそこにあるかのように錯覚させられるけど、しかし、そこには魂は、言い換えるなら生気がないため、わたしはそこに死をみてしまう。ここまでの正確さをもって造形することができるのならば、人を作ることもできるかもしれないとさえ思えてくる。しかし、そこに生はない。


ロダンは頭像に意図して魂を入れてないだけで、これが他の作品になると生気に満ちあふれてくる。まず正確なトレースありき、しかしそれだけではダメで、そこに生気を如何に吹き込むのかが大事だと言わんばかりだ。絵画でも同じことですが、瞬間を切り取っているのに、その前後を感じずにはいられないというのが生気を内在させるということでしょう。わたしにはキセキだとしか言いようがない。


とかなんとかわたしはいまだ彫刻については基本的な域を脱していないのです。単純に感動してしまいます。またはこの感動も素人ならではの誤りなのかもしれまんせが、兎にも角にも、作品の出来不出来に関係なく、感じ入るものが多いのがわたしの彫刻鑑賞です。だから作品の善し悪しを本当には推し量ることがまだできてないと思う。まあでもそんな中でも、この展覧会には他に比しても素晴らしかったと思える作品が多数あったので、列挙して終わりたいと思います。


まずはなにはともあれ、ロダンの「国の護り(武器をとれ)」ではないでしょうか。これはいままで見てきたロダンとは一線を画していました。本館の常設展でも出会ったことのない作品です。ロダンはデフォルメを用いて内在からあぶり出していくタイプと思っていたのですが、これはなんちゅうか爆発しておりましたな。同じ空間にいてほしくないタイプの彫像です。わたしの仕事机の目の前にこの像があったらと思うだけで恐い。彫像にはなんちゅうか、絵画と違って物質ゆえの影響力というのが半端ないなと思うわけです。ええもう半端ない。


そうそう、珍しいといえば「泣く女」や「嘆きの獅子」も珍しかったですね。前者は大理石を台座に顔を浮き上がらせている作品で、後者がロダンにしては珍しい動物の彫像になります。ブールデルだと「絶望の手」とかが印象的でした。作品の前で長居してしまいました。なんつうか、想像を超える絶望感がそこにはあるのです。


まそんなこんな楽しんできた「手の痕跡」展ですが、なんと本展、作品の写真撮影が自由なんですねえ。普段の国立西洋美術館の精神をここでも貫こうというのです。いやあ素晴らしい、流石わたしが惚れ込んでいる美術館だけのことはある。え?じゃあなんで作品写真をアップしないのかって?それはあーた、シャッター音が鑑賞中のお客様の迷惑になるからに決まっているじゃないですか!わたしはブログのために美術鑑賞しているわけじゃないのです!!(え~~~)


わけで、写真は本館前庭に昔から展示されている作品のものしかありません。写真はこちらのわたしも愛してやまないロダン作「カレーの市民」のみでご勘弁ください。



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彫刻のよさは全方向から楽しめることですね。でもやっぱ彫刻は生で体感してその質量にふれて欲しいところです。本展覧会はお安くなっているので、興味のある方は是非足をお運びください。(おわり)