海老フライなんぞというものにまったく興味がないオレ。 ~ あんな店のこんな料理。Vol.5 ~ | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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本企画は、まだおいらのためにだけ書かれる実験段階の企画です。基本的には、食事の評を主観からどう切り離していけばいいのか、または切り離してはいけないのか、自分の内面と対話しながら悪戦苦闘することをコンセプトに書いていこうと思っています。たぶんほとんど褒められないと思う。お店側の皆さんすいません。というわけで、みんながどう読むのかは気にしないで書いていく。




ある日、ドイツ料理を共にしたお姉さまから美味しい海老フライを食べさせるお店があるよと情報提供された。おいらは海老フライなんぞというものにまったく興味がない。海老フライってなに?とさえ思っている。しかし、世の中には世界で一番好きな食べ物に海老フライを挙げるものがいたりするから無下にもできない。


だがおいらは、既に本件についての解答を得ている。ある種の人らがなぜ海老フライに執着するのか科学的に根拠付けられることをある時分に解明されたのだ。大事なのは、何故“海老フライ”がある種の人らから特別視されるのかという点には説明がつくということで、そして、おいらが海老フライになんら興味がわかないことも科学的に当たり前のことだということだろう。つまり、誰しもが同じスペックを共有していると我々は誤解しているけれど、じつはその前提からして、曖昧なものであると、そういうことなのだ。


兎にも角にも、おいらは海老フライになんら興味がないけれど、おいらの大の仲良しさんは“海老フライ”が大好物なのだった。なので、このお姉さんの情報提供を受けて、おいらは当然その仲良しさんに伝え、向かうこととなった。果てしなき海老フライロードへ。




『洋めし 御茶呂』(宇都宮)



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紹介されたのは、知っている人なら誰でも知っている(当たり前の言い回しだなおい)栃木県庁からほど近い老舗洋食屋さん「洋めし 御茶呂」さん。表にもでかでかと“海老”と看板を出しているくらい海老フライを名物料理としているお店。おいらも前を何度となく通っていたのですが、海老フライに興味が(以下略)


メニューを見る。なるほど聞いていた通りの値段である。@2300


2300円で物凄いでかい海老フライを出す。なるほどこれは心配だ。往々にして特大海老フライなんてものは、大味だったり、スカスカだったり、パサパサだったり、水っぽかったりするもので、良かった試しがない。何事も適度なサイズがベストである。


しかし、そんな心配は品が供されれば吹き飛ぶのであった。



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それは確かに美味かった。驚くほどのでかさながら、水っぽくも大味でもない。衣の中に海老がぎっしりと詰まっており、噛めば海老の味がしっかりと溢れ出す。これは海老の味を最大限に留めるためだけに揚げられた料理である。海老が美味い。難点は衣。まるで海老の味を閉じこめる仕事をやり終えて、御臨終しているような食感の死にようじゃないか。おいらみたいな揚げ物に興味のない人間は、衣にもそれなりの必然性を感じられなければ、食べる意味を感じないから、ここの海老フライは、バナナのように衣を向いて食べたほうがより海老をダイレクトに感じられて素晴らしいのではないかと思ってしまう。


と暴言のようなことを書いてしまってはいかん。揚げ物に興味がないんだから言っても始まるまい。それにここは老舗洋食屋さん。フライ一つにしても昔ながらの伝統というものがあるに違いないのだ。おいらのような若造がどうのこうのいうことはない。素材の味を閉じこめることに成功した時点で、そのフライ技術は間違いがないと褒めるべきだった。


ともあれ、おいらの感想なんぞはどうでもいい。おいらは海老フライに興味がないのだから。問題は仲良しさんの感想である。おいのら仲良しさんはこう言った。このかなり美味い海老フライを前にして、「おれの行きつけの店のほうが美味いね」と。




『とんかつ道楽 いさみ』(宇都宮)



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おいらが連れていかれたのは、なんてことはない、上野文具からほど近い誰でも店先を通ったことがあるであろう「とんかつ いさみ」さんでした。ここならおいら食べに入ったことあるよ。特段なんの感想も抱かなかったけどなあ。・・・。そうそうその時食べたのはとんかつなんだけどね。だってここはとんかつの店でしょ。そりゃとんかつ食べるよ。・・・。なるほど、ここはとんかつではなく、えびフライが美味いと。店先のショーウインド内を眺めると、確かにそこに“特大えびフライ定食”というディスプレイがあった。なるほどね、確かに大きい。しかしおいらはえびフライというものが(以下略)



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店に入ると仲良しさんが強行に“特大えびフライ定食+大鍋豚汁セット”にしろというので、素直に従う。人になにかを薦められたらそれに従う、これが薦められた際の正しいルールであろう。で、でてきました“特大えびフライ定食+大鍋豚汁セット”が。えびは最初から食べやすいように切られています。ふーむ、どれどれ、パクパク、もぐもぐ。いやはやなんとも。豚汁はどうかな。ずるずる。うーむ、ずずず。じゅるじゅる、ほほほ。もぐもぐ、じゅるごく。ふぅーむ。そういうことだったのね!


結局、美味いものの薦められ方というのは難しいと言わざるを得ない。だって、どう考えても2300円で提供されている海老フライより1280円で提供されているえびフライのほうが美味いなんてことは原則ないわけだから。しかし、仲良しさんはこちらのほうが上だという。それには「御茶呂」の衣がサクサクと立っていないからという個人的趣味と、費用対効果が起因しているらしい。確かにいくら海老の味がしっかりしようとも2300円も出して海老フライは食べたくない。そもそも特大の美味い海老を食べる必然性がないのだから、なにをか言わん。小さい美味い海老を自分が食べたいだけ食べればいいのであって、なにもそれが特大である必要はないのだ。つまり2300円の内のでかさへの希少価値代は無駄な出費ということになる。作り手の特大サイズを美味しく揚げる技量には感服するのだけど。


じゃあ1280円の海老フライならいいのかというとそんなこともない。一食に1280円出すならそれなりのものが食いたいじゃないか。やはり1280円で特大えびフライを頼む必然性がないとしか思えない。しかし、この店はそれで終われない。そこで絡んでくる要素が存在する。それが“+大鍋豚汁セット”の存在である。確か400円くらいの追加料金で頼めるそれを合わせれば1680円。一見高くうつるが、これが大鍋豚汁を食せば、滅茶苦茶安いじゃないかという、感慨にいきつく。


この大鍋豚汁。べつに美食という域のそれではない。しかし、我らが社会人男子の胃袋をつかんであまりあるものがある。素材も豊富に入っており栄養満点、量も満足、味付けも米に合うし、豚もとんかつ屋だから間違いがない。どうりで“+大鍋豚汁セット”を頼めと強行に言い張るわけだ。


でも、はっきり言おう仲良しくん。きみはこの“+大鍋豚汁セット”がこの店から消えても尚、ここに特大えびフライ定食を食べにくるのかいと。こないだろう。きみがこの店をベストしている理由の大半はこの大鍋豚汁にあるのだから。やはり費用対効果がどうだとか議論されている内はまだベストでないってことなんだろう。もっと問答無用な圧倒的なエビフライが日本にはあるはずだ。よし決めた。おいらは日本一美味い海老フライを探しに旅にでることにするよ!(おわり)