宇都宮近郊遠征。-蕎麦漫遊記121 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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お盆連休中のある日、おいらは午前十時の映画祭で『バベットの晩餐会』を観るため地元に張り付いていたので、午後も有意義に過ごそうと蕎麦遠征に講じてみたのでご報告。


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『十割りそば ひかり』(高根沢)- 蕎麦麺漫遊記121。


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まず訪ねたのがお昼しか営業していないので食べるチャンスがほぼ皆無の「十割そば ひかり」さん。蕎麦屋は大抵お盆期間も営業しているので、そこらへんは大助かりである。が、お客他にいなかったため、ご亭主ののんびり蕎麦談義をすることができました。


この店の仕組みは、そば粉を何種類か用意し、それぞれ十割で打っているので、食べ比べができること。おいらが訪ねた日は、越前大野産と茨城産、そして福島産の3種類の蕎麦が用意されていた。オススメ訪ねると茨城県産が1番、2番が越前大野産とのこと。そこで、おいらはそのまま茨城と越前の二枚を注文することにし、重ねておいらは店主に尋ねた。「ぼくそこそこ蕎麦好きで食べ歩いているんですけど、福島県産の蕎麦のなにがいいのか、いまださっぱり分からないんですよ。福島県産のそば粉の魅力ってのはなんなんでしょうね?(正直な気持ちである)。」


店主曰く、福島県産のそば粉の魅力は苦味とのことだ。焦げたような香ばしいコーヒーのような香りと味わいを楽しめるのが魅力。最高の焦げをもつ福島○○産と甘い福島○○産の長所を合わせ持ったそば粉がたまに出るんだけど、それはもう最高だよ。最高級のコーヒーに砂糖を入れて飲んでいるような上質な・・・何某。しかし、最近の福島県産の農家は・・・何某。(話しは永遠続きます@ぼくだけの宝物だ)


なるほど、最近の福島県産のそば粉の質が悪いのには理由があったのである。おいらの舌はその質の悪さを誰に聞くまでもなく、感知していたのであった。おれ天才。(おい)


ここの店主は相当そば好きと見えて、そばの話しが止まらない。おいらが蕎麦を打っていることを告げると、十割そばの打ち方から美味く提供する方法までこと細かく教えてもらえてしまったのでした。ここの店主だけが言っていることではないけど、そばは挽きたてが美味い、打ちたてが美味い、穫りたてが美味い、と思いがちだけども、それぞれ間違いであって、技術によって挽きたて以上に美味くすることはできるし、寝かす技術を心得ていれば、打ちたてや穫りたて以上に美味くすることもできる。これらは多くの名店の主人が言っていることであるけれども、ここの店主も言っておられた。ここの十割は打った後に冷蔵庫で1日寝かすんだそうだ。驚きである。十割を冷蔵庫なんかで寝かしてたら、美味くするどころかブツブツ切れそうなものだけども、ここの店主曰く、やはりそういうのもすべて技術で、ちゃんとやれば美味くなるとのこと。色々と聞けて、心から勉強になってしまったと言いたい。ありがとうございました。


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最初に提供されたのは、越前大野産。越前産のそばといっても、いろいろあるけれど、この店が使用しているのは、大野の在来種なんだそうだ。そばの実を見せてもらったら、普通のそばの実より二回りほど小さい実。それで・・・あっ、ま、蘊蓄をなんだかんだと書いていてもしようがありませんね。問題は味ですからね(因みに、この日はデジカメ忘れてしまって携帯撮影です。お見苦しい点すいません)


しかし見ただけ美味しい蕎麦であることが分かる。十割そばにも関わらず、蕎麦は均一に切られしっかりとつながっており、角もしっかりと立っていて、表面も艶を放っている。不味いわけがない。ふぅふぅ、美味そう。よし食べるぞ。ぱく。


ぐわぁぁぁわぁぁあぁぁぁっぁぁわっぁっぁぁっぁぁぁんん


脳みそをかき回された。感じたこともない香り。一瞬無に帰す自分。我に返って残り香を探すも既にそこにキミはいない。余韻を楽しませる香りじゃない。瞬間的に爆発する香りというシンプルな爆弾。なにが爆発したのかさえ、掴みきれないこの瞬間的な香りを前に、2度3度とおいらはつけ汁なしで蕎麦を口に運ぶ。どういう香りか分析できない。これはそもそも香りなのか。無臭の衝撃波ではないのか。分析不可能。機能しないおいらの脳みそ。ああ完敗。この現象を文字で表現しようと思ったこと自体間違いだった。


しかし特筆すべきは香りでなく、この蕎麦の口触りのよさにこそあると見る。歯や舌にねばっこくまとわりつくのかと思いきや、さほどの粘着をみせずにさらっと口内をすり抜ける。ねばっこいの軽い。矛盾しているじゃないか。しかしその矛盾が口内を通過していく。このタッチの絶妙さはなんだ。よく噛まなくても味わい深いから、もぐもぐせずとも味が届き、そばを口の中に置いておく必要がないから、数回のタッチでのどに蕎麦を送り込める。そして均等に見事な長さに保たれた十割の栄誉であろう喉越し。歯や舌同様に十割にして軽くつるつると胃に収まっていく。これは最高に美味しかった。


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あまりに完成された弱点のないその蕎麦を前に感動に打ちひしがれていると、さらに2枚目の店主オススメ茨城県産が供されるふーむ、これ以上の蕎麦なんて本当にあり得るのだろうか?訝しみながら、蕎麦を口に運ぶ。なるほど。これはおいらの知っている茨城県産の特徴をそのまま有している蕎麦である。良質な茨城県産のそば粉は、香り重視で繊細な味わいがするものが多い。おいらは茨城県産そば粉をお公家さんのようなそば粉と表現しているんだけども、ここのそばもその通りのものであった。確かに良い物ではあるけど、越前産を頂いてしまった以上、良質な香りだけをもってして最上とはとても思えない。口触りも優しすぎるし、まず蕎麦として強弱がたりない。


食べ終わったおいらに、店主がどちらが好みでしたかと聞いてくる。


おいらは迷わず越前産ですねと回答。なぜなら、かくかくしかじか、かくかくしかじかで、かくかくしかじかだから、かくかくしかだと、上に書いたようなことをリアルに伝えていくおいら。いやあ大抵の蕎麦好きが茨城県産のほうが好きだと言って帰るんですが、分かりますか、大野産の良さがと御主人。大野産のほう選ぶ方は本当の蕎麦好きですよと嬉しいことを言ってくれる御主人。この後も蕎麦談義に花が咲いたのでした。


しかしとても良い店見付けたな蕎麦漫遊初期に見付けた満点のお店は山奥にあるから、なかなか出向くことは難しい。その点、この店ならさほど遠くないし、人なども連れて行きやすいから重宝しそう。でもなあ、やっぱりここは一人で言って店主とまた蕎麦談義するのが楽しそうだ。篩のメッシュの話しとか、蕎麦打ちならではの話しが聞けて本当に勉強になるし、会話自体がワクワクして楽しかった。是非、また伺わせていただきます!


【高根沢】十割そば ひかり もりそば(越前大野産) ☆☆☆☆☆ / もりそば(茨城県産) ☆☆☆☆ / そば湯 ☆☆☆☆


【素材情報】

そば粉:国内4産地(福島、福井、茨城、栃木)を十割で

つ ゆ:有名カツオ節メーカーの無添加特上品を使用

薬 味:葱、わさび


(つづく)====