再訪・富士登山。練習登第1弾「転機となる大失敗をした磐梯越え(後編)」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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(昨日の日記のつづき)30分ほど山頂で休憩したおいららは取り敢えず、山頂直下の弘法清水小屋まで降りて、そこで“なめこ汁”などをすすりながらまた20分ほど休憩をとっていた(ここの“なめこ汁”はともて良い味付けでした。オススメ)。休憩しながらも、おいらの頭の中はそれはもう忙しなく動いていた。今回の登山ルートは、猪苗代湖を見下ろす表磐梯から入山し、裏磐梯に抜けるというおいらの登山史上初の縦断登山となっていた。磐梯山は表から見ると花が多く緑豊かな印象を受けるが、裏には爆裂噴火によって爆発した崩壊した荒々しい姿が待っているのである。磐梯山を本当の意味で楽しんだというには、この表裏を縦断してこそとおいらは考えた。今回の縦断ルートを可能ならしめたのは、表登山口までおいららを連れてきてくれ、また帰りは裏磐梯までおいららを拾いにきてくれたAさんBさんのおかげです。ここで感謝の意を表させていただきたい。ありがとうございました。兎にも角にも、縦断ルートを考えていて、現在までのタイムスケジュールは下記の通り。


表登山口発8:30→磐梯山山頂着12:10→磐梯山山頂発12:40→弘法清水小屋着13:00→弘法清水小屋発13:20


予定なら休憩を含めても12:30には弘法清水小屋をあとにしているはずだったから、50分の遅れであるが、初登山で山岳ガイド記載時間の50分遅れ程度なら許容範囲。おいららが下山に選んだ裏磐梯ルートは、もっとも人に歩かれていない川上温泉におりるルートだったが、山岳ガイドによれば、所用時間2時間50分とのことであるから、下山時刻は大凡15:20。下山場所の川上温泉においららを迎えにきてくれるAさんBさんには15:30頃までには下山できる旨伝えてあるからギリギリ間に合うはず。さらには、おいらの経験上、山岳ガイドに記載されている所用時間というのは、脚力不足で登り時間はオーバーしてしまうこと間々あれど、下りでオーバーすることはほぼない。おいらが山素人だった時も、下山時はガイド記載時間より相当早く下りられたものだ。弘法清水小屋を後にして本格的な下山開始。すると甲さん(この年富士山頂においらが連れて行くことになっている山素人さんのこと)がまさかのカミングアウト。「うち高所恐怖症やねん」へ?・・・・えぇぇぇ?!!! ちょっと待ってよ、高所恐怖症ってあの高所恐怖症のこと?「そうやねん」いやいや、そんなこと言ってもちゃんと登ってきたじゃない。「大丈夫やと思ってたんやけど、視界が開けている下りだとやっぱり恐いみたい。足震えて前に出えへん」


・・・・・な・・・・・な・・・・・な、なんてこったいの助!!えぇええ、だって高校生の時に遠足で奥白根山に登ったと豪語していたじゃない。だから富士山もへっちゃらみたいなこと言っていたじゃないか。「高校生のときは高校生のとき。いまはいまやねん」・・・・なっ・・・・、確かにおいらもそう思っていたけども(15年前のたった一度の登山経験を大上段に持ち出して、富士登山余裕もへったくれもないと)、でもそれにしたって、高所恐怖症とはね。まいった、、、こんなことがあるなんて。


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大丈夫、兎に角下りよう。下界が視界に入るから恐いのなら、目線を下げて足もとみながら下りればいいじゃない。それで取り敢えずやってみよう。・・・・なんとか黄金清水が湧いている拓けたあたりまで出る。しかし相当の時間を要してしまった。下りに時間が取られるから、フラットなところは少し急ぎ気味にしなければならないだろう。これは登山ガイドに記載してある所用時間まるまる掛かることも視野に入れておかなければ。


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「下りに慎重を要さないといけないみたいだから、フラットな箇所は少し急ぎ気味で行こうか。おいららが向かうのは、この矢印で表示されている川上方面だよ」「崖じゃないか!こんなところ行けるわけないよ!」「え?どこが崖なの?登山の醍醐味、稜線歩きじゃないの」「いやいや、こんなところ歩いていて、強風が吹いたらどうするのさ。完全にあの世行きだね」う~む。そう来るのか。強風が吹いてあの世行きなのは、どんな場面でも言えることではないか。稜線に限ったことではあるまい。というか、強風吹いてあの世行きなのは登山では当たり前の世界。富士山だって強風による死亡事故はよくある話しで、別に珍しい話しではない。可能性を恐がっていたらどんな山行も先へ進めないよ。いいから、まあいいから。まあまあいいから。いいから、いいから。まあまあ。いやいや、いいから。まあいいから。そんなことはいいから。いいから、いいから。とにかく、おいらが先に行くから、そろそろとでもついて来てよ。


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最大の山場、幅80㎝の稜線を心底おっかなびっくり渡る甲さん。


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稜線脇を見下ろすと上画像のような感じ。確かに落ちれば死ぬけどね。こういう按配だから、もっとも人が通らない登山ルートになっているのだろうけど(川上温泉口方面)、


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例えば、人が通らないため(この日もこのルート上では誰とも出会わなかった)、磐梯山の固有種であるバンダイクワガタが山のように咲き誇っておりました。それはもう登山道上にまで咲きまくっているような按配だから、逆にそういった貴重な植物を踏まないようにこちらが気を付けなければいけないようなレベルの登山道。


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裏磐梯の荒々しい風景も楽しむことができるし、五色沼方面の眺望も素晴らしい。おいらにとっては願ったり適ったりのルートだったけど、高所恐怖症である甲さんにはこの眺望の良さが仇となる。「いい眺めだなあと」一言呟けば、恐いから止めてと静止されるおいらなのであった。


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徐々に稜線歩きにも馴れてきてもらったと思った矢先に現れたのは、稜線からかなり下の火口原まで下りる急登箇所。急登といっても難易度の高い下りではなく、たんに急なだけという単調なものであったが、如何せん、高所恐怖症の甲さんにとっては、地獄の沙汰としか思えない。転んだら最後転落死じゃないかと。いやまあ確かに下りで転べば死ぬでしょうけども、それを言っていたらきりがないじゃない。いいよ、慎重に行こう、慎重に。


途方もない時間が過ぎ去り、おいららはようやく急登を抜け出した。あとは長い長い火口原を北に突っ切り、鬱蒼とした樹林帯に入れば、その先が川上温泉登山口だ。いやあしかし、これは相当なタイムロスをしてしまった。登山ガイド記載の所用時間どころでは収まらないに違いない。今から相当ペースをあげなければならない。しかし、甲さんの体力に急ぐ余力などなく、ペースをあげるのは困難。できうる限りの速度でゴールに向かうしかないのだった。


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「あんな急な崖みたいなところを下ってきたんだから、体力残ってなくて当然だ。逆に無事に下りてこられたのを評して欲しいくらいだね」とわけの解らないことを言っている甲さん。そしてゴールまでの道のりも長かった。黙々と火口原(因みに火口原とは“中央火口丘と外輪山との間の平地”のこと)を進軍します。このペースではダメだ。ざっくり見積もっても登山ガイド所要時間を1時間はオーバーしてしまうに違いない。ゴール地点まで迎えに来てくれるAさんBさんに遅れる旨、連絡しなければ。15:30待ち合わせだったから、16:30待ち合わせに変更だ。甲さんの携帯で下山時間が1時間遅れる旨を伝え、無念なおいら。15:30でも1時間余裕を見たつもりだったのだから完全な誤算、おいらの失敗であった。


しかし、おいらが反省すべき最大の失敗は、この瞬間に起こっていた。おいらはこの時点でまだ地図を見るということをしない人間だったのだが、それが災いした。要するにおいらも山素人に毛が生えたレベルだということを再認識させられてしまうのである。この時点でおいらがいたのはだだっ広い火口原の中心当たり。結構な距離をポイントのない状態で歩いていたから、山ガイドの地図を眺めても、正確に自分たちがいる場所を把握することはできない状態にあった。そこで、おいらは大凡の経過時間などから居場所を目算し、16:30には下山できるであろう旨、AさんBさんに告げたのであるが、じつはこれが大きな誤りであった。


結果から書けば、おいららが下山できたのは17:15。登山ガイドに記載されている所用時間2時間50分を遥かに上回る4時間35分も下山に掛かってしまったのである。下山にこれほど時間を要すなんてとても想定できなかったが、問題はそこではなく、AさんBさんに遅れる旨告げる際に、おいらが正確に自分の居場所を地図と標高から割り出さなかったことである。割り出さなかったのには理由がある。おいらはこの時点で割り出すスキルを持ち合わせていなかったのだ。今回の場所のようなだだっ広い火口原の中で、自分の居場所を割り出すには、標高または緯度経度の情報を得る術が必須である。がしかし、この時点でおいらはそういった情報を知る術を持ち合わせていなかった。いままではこのようにだだっ広い上に長いルートを歩いたことがなかったし、その上今回は自分のペースで歩けてなかった。さらには初めて車と待ち合わせている迎えがいる登山。様々な条件が重なりあってのミスだが、やはり山遊びは食い気味でスキルの向上をはかる意識がなければ、ある時ある瞬間御陀仏に成り得るということをキモに銘じておかなければならない危険な遊びなのである。


山に登り続ければ山馴れしていく自分。しかし登る山は常に初対面のようなもので、自分が登ってきた山とは別物なのである。山馴れしてようがどうしようが、次の山を登るスキルを持っているかどうかは登ってみないと解らない。山は水物なのだ。だからこそ、山遊びをする人間は、常に自分のスキル向上を図って、勉強していかなければならない。地図読めなくてもへっちゃらじゃないか。○○持ってなくても大丈夫だ。山馴れすればどんどん自分に甘くなっていく。山に登れば登るほど、逆に、あれも学ばなければ、あれも準備しなければと、山に登っていない時から学び準備をしていかなければ、次の山も同じように無事に戻ってこられるかはじつのところ解らない。おいらは今回のミスで山馴れして甘えが生まれていた自分を悟り、酷く恥ずかしくなりました。山が好きで数こなしていくのなら、登った数だけスキルや情報を身に付けていけるような自分にならなくてはならない。上手に誤魔化し誤魔化し登ったところで、それがいったいなんになろう。@反省


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そんなこんなで、想定していたより相当後ろのほうだった火口原。余力僅かの甲さんのペースの遅さもあいまって、同じ風景がずっとループしているような印象をうける。そう、ここはまるで“猿の惑星”。宇宙船を求めて、漂流しているかのよう。(おいらが何時か映画を撮るようなことがあったなら、ここでロケしてやろう。@これは余談だ)


兎にも角にも、居場所は正確に把握できていなくても、進んでいるのは分岐のない単なる一本道のルート。歩き続ければ、必然のごとくにゴールに近づける。でも樹林帯に入って川上温泉の看板を目にした時の嬉しさといったらなかった。人気のない登山ルートだけに、植物をかき分けながらでなければ進めない樹林帯だったけれど、もうゴールが直ぐそこであると思えば、俄然元気もわいてくる。おいらをさしおいて、うっほほ~いっと下へ下へと進んでいく甲さん。


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そして到着。川上温泉登山口。ああ、良かった。なんとか下山できました。今回は甲さんの①高所恐怖症、②登りより下りのほうが苦手という体質③体力面、などなど富士登山にむけて多くの問題が浮上した。けれど最大の収穫は、おいら自身がこのミスの多い登山をうけて、大きく意識改革できたことであろう。山に登ってその時その時山の魅力を味わうだけなら、誤魔化し誤魔化しでもやっていけるけど、おいらはもっと大きな意味で山を愛す人になりたいのだ。そういう目標があるのなら、常に食い気味でスキルアップしていかなければならないだろう。この磐梯越えはいい意味で転機となる登山になりました。誰がなんと言おうとも、結局おいらはこの登山までは山素人そのものだったのだ。そして、これを境にしておいらは山初心者を脱するべく、鋭意励むようになります。意識改革を果たせた山登りたまの今後の活躍も乞うご期待♪(おわり)