p8.特集企画「いままさに反転攻勢のとき、東京国際映画祭。」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

東京国際映画祭ほど映画ファンからそっぽを向かれている映画祭をおいらは知らなかった。おいらは基本多勢の反対を行きたい人なので、それだけで東京国際映画祭を応援しようと決めてしまえるわけだけど、東京国際映画祭の生みの親から直接伺ったところによると、そりゃあもう東京国際映画祭を浸透させ、ここまでに成長させるのにはどれだけの財力と労力を用いたかと、どれだけの偏見と戦ったのかと、苦労は計り知れなかったそうだ。それでも現状は本当にギリギリの低空飛行で、良いときはこんなものじゃなかったらしい。まあ毎年通っている人間としてもそういった没落加減は実感としてありますけどね。


たまのブログ


映画ファンが興味を示さない東京国際映画祭。理由はやはり良い作品が揃わないというのが第一だろう。日本映画ファンは既存の評価や評判をもって品定めする傾向が強く、自分から未知数の作品を率先して見るようなことはほとんどない。だから目玉をキャストで売れるハリウッド大作にするしかなかったという運営側的ジレンマがある。そして、メディアをひきつけることができるゲストを複数呼ぶことができ、舞台挨拶付き上映を確保し易い日本映画の上映がスクリーン占有率を高くするのは必然と言ってよかった。そういった工夫で、初期はミーハー客を呼ぶことに成功したけれど、結果、コアな映画ファンには良い作品をかけない映画祭だとのレッテルを貼られてしまった。そして、ミーハー客はすぐ飽きる。そもそも東京国際映画祭のチケット代金は高い。特別上映なら2000円超えるものもあるし、有名所でも基本1800円から1500円くらいで値段設定している。その値段で映画祭という混雑した劇場環境の中、映画を見るメリットはいかほどのものか。例えば、ある年のクロージング上映は「ウォーリー」だったが、映画祭上映から2ヶ月も待てば一般劇場で封切られ、レディースデイ1000円で見られる映画を、何が悲しくて2000円以上払って観ようと思えるのだろうか。理屈抜きで大好きな作品は誰よりも早く観賞したい的コアなファン層しか手がのびないのは当然の帰結であろう。


例えば、昨年の東京国際映画祭の特別招待作品のラインアップ「オーシャンズ」「アバター」「理想の彼氏」「REC/レック2」「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」「よなよなペンギン」「脳内ニューヨーク」「天使の恋」「大洗にも星はふるなり」「曲がれ!スプーン」「風が強く吹いている」「わたし出すわ」「E.YAZAWA ROCK」「僕の初恋をキミに捧ぐ」「スペル」「ゼロの焦点」「PUSH 光と闇の能力者」「サイドウェイズ」「笑う警官」「SOUL RED 松田優作」「カールじいさんの空飛ぶ家」@しょーもな


兎に角、東京国際映画祭の商売の仕方も宣伝の仕方も悪過ぎる。よしもとがバックについている沖縄国際映画祭のほうがメディアに露出しているのはどういうことなのか。いや、理由はわかるよ?でも一応、こっちが日本で一番の映画祭であることは間違いないんだからさ、こんな体たらくでいいのかね?よくないでしょ?困ったものである。


とまあこんな風に書きだしたのも、今回はちゃんと転じる用意ができているからである。そう!特集企画とか言いつつ、何週間にも渡ってお送りしてきたこの映画祭投稿も、この最後の投稿にして、最初の投稿であげた主題にちゃんと戻るのである。それこそ「映画祭で上映された作品がほとんど映画館で上映されない件について」だ!


昔の東京国際映画祭は確かにアピールが弱かったと思う。おいら東京国際映画祭が好きだという映画ファンにいまだ一人しか会ったことがない。でもそれもそのはず、東京国際映画祭で上映されている映画は、映画祭終了後、本当の意味でマイナーな作品を除けば、ほぼすべて映画館できちんと一般公開される。それではこの映画祭にコアな映画ファンが目を光らせる必然性は生まれない。何故なら、映画祭をそっくりそのままスルーしたって自分になんらマイナスが返ってこないから。おいらも東京国際映画祭との付き合い方は、上のような通りなので、タイ映画だったりベトナム映画だったりと、マイナー作品ばかりに足を運ぶという利用の仕方をしていた。


がしかし、p1投稿でも書いたが、いまはもうそういった御時世ではなくなった。ヨーロッパ映画は、面白かろうが有名だろうがかなりの確率で一般公開されなくなったのだ(フランス映画除く)。つまりは、昔なら東京国際映画祭上映=一般公開決定という構図にはめ込まれていた作品たちも、いまではその構図の枠外に置かれることとなった。これは映画ファンにとって大問題である。しかし、こんな御時世の恩恵を一番受けられるであろう映画祭が何を隠そう東京国際映画祭その人なのである。(人じゃないから)


いままで多くの映画ファンは東京国際映画祭のプログラムを手にとって上映作品を確認したりはしてなかったであろう。する必要がなかったのだから当然だ。がしかし、ここ数年徐々に、東京国際映画祭で上映された作品の中には、有名でありながら一般上映されない作品が増えてきている。つまりは、自分がコアな映画ファンだと自認しながら東京国際映画祭をノーチェックにしているようなファンは、必ずといっていいほど痛いめを見ていると断言できる時代がきた。


たまのブログ


上記ポスターは昨年おいらが観てきた、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作にして超大作『バーリア』である。おいらは9.6評価としたが、この大作が一般上映決まらないというのだから驚きだ。世界で上映してないのは日本くらいのものである。めっさ面白いのに一般上映されないんだから、どうですか、お客さん?! こんなことが許されていいのでしょうか。いいわけありませんよね?


他にもイタリア映画祭投稿でも書いた「ゴモラ」とか、マイク・リーの「ハッピー・ゴー・ラッキー」とか、スティーブ・マックィーンの「ハンガー」とか、公開されていませんな。「ハンガー」なんてめっさ見たいけど、東京国際映画祭で見逃したおいらにもう鑑賞チャンスは訪れないでしょう。非常に残念だ。


というわけで、もはや東京国際映画祭は映画ファンが無視していい映画祭ではなくなった。映画ファンは、ヨーロッパ映画にかぎっては、観たい映画は一般公開を待たずに率先して映画祭に足を運ばなければならない。そして、映画祭運営側も率先してヨーロッパ映画をラインナップに加えていくといいだろう。とくに、今年のドイツ映画祭で上映されたカロリーネ・リンクの新作を東京国際映画祭でも上映するといいと思うよ。というか、おいらにリンクの新作を観せてくれ。リンクの新作が日本で観られたのがドイツ映画祭上映時しかなかったなんてのは、国の恥である。是非、もう一度東京国際映画祭でかけるべきだ。頼む!というか、お願いします!


という具合で、いまや一部映画ファンのヨーロッパ映画に対する我慢も限界にきているのである。そういう渇望をうまく手玉に取れば、東京国際映画祭は飛躍にのびる可能性があると思う。事情はわかるけども、日本映画なんて流している場合じゃないんだって!


そういえば、昨年おいらが観てきたフルーツ・チャン監督の新作『愛してる、成都』も一般上映されてないなあ。チャン監督が来日するというので観に行っただけだったが、今となってはナイスな選択であったというほかない。しかし、フルーツ・チャン監督にあれほどのファンがついているとは思いもしなかったな。フルーツ・チャンの作品が好きだと公言しても誰それ?と一笑にふされるだけなのに、東京国際映画祭でチャン監督を待っていたファンの多かったこと。


たまのブログ


まあでもやはり評価の高い監督さんだけに、偉そうだったけどねえ(笑)。まあでもチャン監督にサインをもらえたのはちょっと嬉しかったり。


でね、東京国際映画祭は、サインをもらえる機会がないと考えている人が多いと思うけど、じつは東京国際映画祭も至極簡単にサインをもらえるようなシステムになっております。他欧州映画祭のようにゲストと交流をもつというようなことはできないけども、サインをもらうぶんには簡単だ。方法が知りたい人は映画祭のチケットを購入して僕と握手♪


で、さらに言ってしまえば、東京国際映画祭だって、映画人と交流を持とうと思えば持てるとおいらは言ってしまいたい。大体映画祭期間中は、映画人が町に溢れている。「リトル・ミス・サンシャイン」のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督は、渋谷の町を普通に歩いていたし、「タブロイド」のセバスチャン・コルデロ監督も六本木を普通に歩いておった。まあ確かに外国人を前にしてあの人監督さんに違いないと確信を持つのは難しいとこだけど、そこはなんとか勢いでのりきってしまうしかない。


たまのブログ


「エクスキューズミー」と言ってしまえば広がる世界。まあその後にとても困るはめになるのだが。コルデロ監督に「タブロイド」のチラシを差し出して、「おまえはこの作品の監督じゃないか?そうだったらサインしてくれ」とカタコトの英語で伝える。すると、コルデロ監督滅茶喜んで、この日本版ポスターに興味津々(アメリカには映画チラシという文化がそもそもないんです)。チラシに記載されている文句が気になって仕方ないよう。これはなんて書いてあるのだ、これはなんて書いてあるのだと、しつこく聞いてくる。「心の闇まで、TVカメラは届くのか-」なら、あ~え~、ハートね、ハート。ハートトゥダークサイド、キャンメディア メイクハンディング?お~け~?(お~け~じゃないから)


兎にも角にも、このように映画祭はとても楽しいものです。おまけに最近は東京国際映画祭でしか観られない有名な、とても有名な欧州映画が増えてきている。皆さん、一度東京国際映画祭との付き合い方を再考されては如何でしょうか。きっと映画趣味がまた一段と楽しくなることを請け合いますよ。な、感じでこの特集企画もこれでおしまい。あー形どうあれ終わってよかった。(めでたしめでたし)


=====


p1.特集企画「きみも映画祭に足を運んでみないか」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1493435641&owner_id=1064357

p2.特集企画「これから楽しみなドイツ映画祭」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1498107852&owner_id=1064357

p3.新宿編-世界六十カ国の料理を食べる37・38・42。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1499007406&owner_id=1064357

p4.特集企画「大盛況を誇るイタリア映画祭」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1510646684&owner_id=1064357

p5. 『ドブロ』(クロアチア共和国料理)-世界六十カ国の料理を食べる50。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1515709116&owner_id=1064357

p6.特集企画「稀にみる幸福な関係。相思相愛のフランス映画祭」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1517013684&owner_id=1064357

p7.特集企画「ゲストにもっとも身近≪「みぢか」の誤り≫なフランス映画祭。」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1527031396&owner_id=1064357