p4.特集企画「大盛況を誇るイタリア映画祭」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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イタリア映画祭会場そこは異次元の空間である。とある時期からおいらは常に首を傾げていた。というのも、映画不況が語られている時期でさえ、イタリア映画祭会場だけは常に盛況なのである。今年度もゲストが来ない上映回であろうと完売々のオンパレードである。一度は行ってみたい国イタリアも今では旅行者のリピート率が激減していて、人気も下降線を辿っているそうだが、映画ファンとなるとそこは話しが別で、今も昔も変わらずイタリア映画愛好者はいるようだ。


イタリア映画祭はいまとなっては“G.W.の”と冠がつくほどG.W.の定番イベントの一つとかしたが、お客が殺到するのはけして連休に開催されるからではない。本映画祭は平日も常に完売のポップがはためいているのである。運営側は本映画祭の特性をちゃんと理解していて、ゲストのトークショーやティーチイン、無料のシンポジウムなどを、すべてG.W.前の平日の上映回に設定するのである。つまり、ゲスト目当ての客層は平日の上映回に群がるようになっているのである。イタリア映画愛好者は女性富裕層の割合が高いので、平日でも映画を観られないなどということはないのである。そして、おいらみたいな平日の日中は労働している人間が、ゲストなどなんらのおまけがなくとも連休の中の上映回のチケットに群がるのである。この開催日程を活かした二段構えの売り方で、イタリア映画は常に勝ち組の仲間入りを果たしているのである。


今時、満席の朝日ホールの低い背もたれの狭い座席や臨時で並べられたパイプ椅子で映画を観たいとは思わないはずだが、如何せん、ここに来るお客は本映画祭に通うのを止めない。それは何故か。それが今回映画祭の特集をする切っ掛けともなった、ここに来ている映画ファンだけが理解している「ここでしか観られない傑作が数多く存在する」からなのである。


前にも書いたが、おいらはある時期まで、映画祭の使い方は、普段映画館にはかからないような制作国の国民しか理解できないような内向きの映画・普段外に出てこない映画を観るために映画祭に足を運んできた。それはその年の映画祭の目玉作品クラスは、必ず映画祭後にミニシアターで一般上映される、観る機会が得られるという確信があったからである。がしかし、ある年度、おいらは思い知らされた。イタリア映画も不況の波には勝てず、どれだけネームバリューがあり評価が高い作品であっても、イタリア映画はお客が入らないというそれだけの理由をもとに、一般上映されなくなってきたのである。いや、この言い回しでは語弊がある。「されなくなってきた」のではなく、「ある時期から線をひいたようにされなくなった」のである。


その一線は、2006年に起きた。いつものように、映画祭で観るならマイナー映画だよねと、今となってはタイトルすら憶えてないような映画を観に行っていたおいら。本当に一番に観たかったのは、ジョヴァンナ・メッゾジョルノがヴェネチアで主演女優賞を受賞した上、久々のアカデミー賞外国語映画賞部門ノミネート作品となった「心の中の獣」であった。でもおいらは例年通りたかを括っていたのである。アカデミー賞候補でヴェネチアで演技賞受賞しているなら、必ず映画館で上映されるであろうと。1年経っても2年経っても、そして4年経った今でも公開される気配すらない。


洋画をかけたいミニシアターの苦難はこの頃から始まっていたのである。ともあれ、おいらは確信した。映画ファンが余裕をもって観たい作品が上映されるのを待っていればいい時代は終わったと。観たい作品の動向は貪欲に自分で把握していなければならないのである。2006年以降、おいらが観た映画が一般上映されたことはない。カンヌやヴェネチアの受賞作ばかりかアカデミー賞候補も含まれているのにである。また9.38.87.97.37.1、とおいらの評価を確実にもぎ取っていくのである。数字がすべてではないが、おいらの中で評価のアベレージが圧倒的に高いのがこのイタリア映画祭であることは間違いがない事実である。そんな映画祭を誰が嫌いになれよ。


G.W.はイタリア映画祭と定番化させるのは一般人には難しいことであろうが、世間とは逆に、人口の少なくなった東京に出向いて、イタリア映画祭を観るのも悪くない。そう思うのだ。興味のわいた方は是非来年御検討のほどを。人気の上映回はすぐ売り切れるので要注意です。(つづく)


追記)

因みに、おいらがイタリア映画祭で観た中でベストと思える作品を一本挙げるならば、それは間違いなくソレンティーノの「イル・ディーヴォ」ということになるだろうね。戦後イタリアを代表する政治家の一人、ジュリオ・アンドレオッティ元首相を題材にした政界劇ながら、スタイリッシュでキレまくった映像とテンポに舌を巻くのである。それでいて確かな主演陣の演技がそこにあるので、吹けば飛ぶような軽い映画にはなってない骨太な作品に仕上がっています。一般公開された際は是非どうぞ。


p1.特集企画「きみも映画祭に足を運んでみないか」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1493435641&owner_id=1064357

p2.特集企画「これから楽しみなドイツ映画祭」

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1498107852&owner_id=1064357

p3. 新宿編-世界六十カ国の料理を食べる37・38・42。

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