p1.特集企画「きみも映画祭に足を運んでみないか」 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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日本で映画ファンなんぞをやっていると、最近思うことがありませんか?「映画館にかかる洋画が面白くなくなってきた」とか「ミニシアターが昔のように独自路線の洋画を上映しなくなったなあ」とか。皆様方のそういった感想は間違いではありません。面白い映画は、事実、映画館でかかり難くなっています。面白いのになんで!とお思いかもしれませんが、面白い映画だろうとなんだろうと配給会社も商売ですから売れないものは買えない。よって上映されません。


なんでそんな風になってしまったのかと紐解けば、答えは一目瞭然。DVDが売れなくなったからです。今も昔も、映画ファンは映画館に映画を観には行っていません。だから、問題の核心はそこじゃない。問題の核心は、一時期のミニシアターブームを支えていたのが、あくまでDVDの売上げだったということ。映画ファンは映画館に足を運ばなくてもDVDなら買うという、なんちゅーか、しょーもない方程式がある時期確立されていた。そして、DVDの売上げでなんとか収支をトントンに持ち込めるぞというのを御旗に、多くの配給会社は独自路線の映画を買い付けられるようになったのです。そして、そんな状況から大ヒット作が飛び出して、ミニシアターブームのような現象が起きた。


しかし、今やDVDは売れず、そもそも映画館での売上げだけが頼みとなってしまった。こういった状況下では、どんなに面白い映画だろうと赤字がほぼ確定しているので、独自路線の作品なんてなかなか買い付けてくることはできません。結果、ミニシアターはシネコンの二番館に成り下がったというわけだ。では、映画館にかからなくなった傑作良作は日本では観ることができなくなったのか。いやさ、違う。コアな映画ファンたちは、現状をちゃんと把握しており、映画祭に足を運ぶようになった。東京では様々な映画祭が開催されていて、世界の傑作がちゃんと上映されている。昔は映画祭で話題をさらった映画は必ず映画館にもかったものだが、そんな話しは今や昔。今ではその年の映画祭の主役ともいうべき話題作ですら、映画祭の中だけで「やんややんや」と盛り上がりをみせ、祭りが終われば本国へ送り返される始末だ。嘘だと思っていますか?いやさ本当の話なのですよ。


例えば、おいらと映画祭の付き合い方の変遷を見てもらえれば分かってもらえると思います。おいらが映画祭に足を運ぶとき、それは日本の映画館ではかからないようなマイナーな映画を観るためでした。その国の本土の人にしか理解できないテーマをあつかった作品を見るのが勉強にもなるし楽しかった。でも今ではそんな悠長なことを言っていられなくなった。その年の映画祭の目玉作品ですら、必ずといっていいほど日本で上映されなくなったのだ。だから、最近では好んでマイナー作品を見ているようなゆとりはなく、兎に角、映画祭の主役級のチケットを取らなくてはいけなくなった(競争率が激しい)。


昨年おいらがイタリア映画祭でチョイスした作品は『ゴモラ』『イル・ディーヴォ』の2作品。映画通ならタイトルを耳にしたことがあるだろう有名な2作品です。前者は2008年のヨーロッパ映画祭で作品監督両賞を受賞した話題作で、アカデミー賞の前哨戦も賑やかしましたし、カンヌでも審査員特別グランプリを受賞しました。後者もカンヌで審査員特別賞を受賞し、またアカデミー賞にもノミネートされた話題作です。がしかし、両作品とも昨年の映画祭で上映されて一年以上経過しましたが、公開の話は聞こえてきません。つまるところこれが現状なのです。そして、真にイタリア映画が好きな人間は、映画祭で両作を観賞済みだから、700名を超える潜在的なターゲット層がもはや劇場公開時に足を運ばない可能性が高いという、この現状が逆説的に解釈されるようになったから致命的にこういった映画は上映されなくなった。あとこういった作品は下手にネームバリューがあるだけに買い付けるにも値がはるので、ますます手が出しづらい。


という訳で、世界をにぎわしているヨーロッパ映画は、映画館で上映されない可能性のほうが高くなっています。見たい人は映画祭に足を運ばなければならないという暗黙の了解的ルールが、業界の中ですらもはや確立されてしまった。そんなこんなで、今日からは、都内で開催されている四大映画祭を特集して鋭意紹介していこうと思っております。良い映画を観なければ良い映画ファンは育たない。その一助になれれば幸いです。(つづく)