劇場鑑賞2月上旬(2009)できるだけ感想を書き加えてみた | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

1. 『ロルナの祈り』 / ベルギー==

 恵比寿ガーデンシネマ 6.8

演出も丁寧でストーリーラインも非常に分かり易い。形式がダルデンヌ兄弟らしいのは変わらずだが、じつは今までのダルデンヌ兄弟の作品とはまったく違う。作り込んだ画の挿入の頻度の増加や、観客の心象を誘導するようなストーリーテリングは、フィクションならではの醍醐味にこれから挑戦するぞというダルデンヌ兄弟の意思表示ではないだろうか。だから本作のダルデンヌ兄弟の作品に昔と同じものを求めらてももう困る。ストーリーから外れたような写実的な時間が限りなくなくなってきているし、寡黙なシーンでもすべて今作ではストーリーに添っている。これは成長なのか退化なのか。今後のダルデンヌ兄弟からも目が離せません。


2. 『懺悔』 / ソ連

 岩波ホール 6.9

1984年製作のスターリン批判ともとれる問題作で、その後に誕生するペレストロイカの象徴的存在ともなった歴史的な作品らしい。日本ではずっと未公開だったのですが、ようやく劇場公開される運びとなりました。というわけで早速鑑賞。なるほど、冒頭説明したような政治的背景は確かにそうだが、ファンタジーと現実の間に漂っている地に足がついてないような不安定な感触を政治的主張とミックスして形に仕上げてある。独裁者役の役者もヘンテコで上手いし、独裁批判とは言っても、一度として拷問シーンが出てこず、ストーリーの運び方が巧みで上手く計算してある。よくある弾劾映画などではなく、見る側を幻惑するような映画で興味深かった。


3. 『ワンダーラスト』 / イギリス

 ヒューマントランス渋谷 6.1

マドンナ初監督作品。原題は「Filth and Wisdom」で直訳すると「堕落と知恵」。人生のパラドックスを主題にしている作品で、下書きは主題通りに出来上がっているのだが、如何せん演出デビューということもあって、思い通りに色が配色されていかないようなチグハグとした映画になってしまっている。ただ荒削りながらデビュー作品として考えれば十分な魅力を備えてもいた。得意の音楽の分野を有効利用しているのは“逃げ”だと思わないけど(逆に見所)、冒頭に“主題”を主人公に語らせてしまうのは逃げだったと思うよ。


4. 『20世紀少年 第2章 最後の希望』 / 日本

TOHOシネマズ宇都宮 1.8

おいら的にはまったく観る価値のない作品であった。たぶん本章観なくても第3章を楽しむことは可能だろう。本作は何一つ最終章へ向けて橋渡ししていない。正しく中継ぎされていたとしても主題がなければ評価しないおいらだが、今回は中継ぎとしてもなんら最終章への布石たるべき要素が見当たらないから困る。そういうストーリーに原作がなっているからというだけで作られてしまった作品である。なにより主役の新人の女の子があまりにも演技が下手。たんに役者がたどたどしく努力しているのを見せられるほど苦痛なことはない。小泉響子役の木南晴夏が頑張っていただけに残念でならない。まあでもおいらは本作をアリだと思う。本作は無駄な大作感や豪華キャスト、それに主題のなさなどから、将来的にはカルト化する可能性がある。だって、数々の漫画のカットを忠実に映画で再現するなんてことだけに力入れているんだもの。はっきりいってカルト以外のなにものでもないよ。これこそ「海猿」じゃないけど、中間の第2章をドラマにすれば良かったのに。映画→ドラマ→映画というパターンで。


5. 『チェ 39歳別れの手紙』 / =スペイン

TOHOシネマズ宇都宮 6.8

「チェ 28歳の革命」を観ていなくても楽しむことができる単体作品の体をなしてはいる。けれど実際問題、主題を理解するためには前作を観ている必要があると思う。前作が“明”なら本作は“暗”。前作を観ていないとただただ“暗”を見せられるだけだから、やはり“明”の後の“暗”としてこその本作である。描き方は前作と同じで、単純化された英雄チェではなく、一人の男として最後まで描かれていた。ソダーバーグの仕事には確かで唸る。


6. 『マンマ・ミーア!』 / =

 MOVIX宇都宮 2.8

舞台版「Mamma Mia!」のファン以外は観てはいけません。本作は「Mamma Mia! Festival」です。参加資格は、「Mamma Mia!」を愛していること。区別なく誰でも唄って踊って騒ぐことができます。キャスティングの統一感のなさや一体感のなさなど気にしないでください。歌唱力も関係がありません。大きな声で唄って全身を使って踊ったもの勝ちです。一緒にどんちゃん騒ぐ気がないのなら立ち去りましょう。そういう映画です。


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7. 『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』 / =

TOHOシネマズ宇都宮 7.0

完成度も高く素晴らしい作品だった。俳優も見事に演じているし、監督の意図もよく分かった。が、本作が舞台的だという批判は免れることはできないだろうね。レオとケイトの応酬は見応え十分だけど、人間はあんな風には会話しない。原作から離れていないことがよく分かる。いい意味で、原作に忠実に主題も含めて映像化したということなんだろう。けども、結局映画で舞台的だと、登場人物は世間に埋没した一般人ではなく、選ばれた人間になってしまうから、主題と相反していないこともない。それに、自分の妻でもあるウィンスレットとの仕事だけに、客観性(商業性とか芸術性)に欠ける結果になったかもしれない。ただ、これだけシンプルに卒なく、個性的な才能をまとめ上げた監督の腕は賞賛していい。


8. 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

TOHOシネマズ宇都宮 6.4

おいらはこの映画を個人として大いに楽しんだ。御大層な演出は避けて素敵なエピソードがそのまま提示配列してあって、後味が素晴らしい。おいらが気に入ったのはティルダ・スウィントンのエピソード。がしかし、エピソードが配列してあるだけの作品なので、話しにのめり込まなければ3時間退屈するだけの可能性がある。感情移入型の映画ファンも面食らうかも。本来ならもっと流れのある構成にすべきだったのだが、CG&メイク版ブラピを差し替える違和感をなくすため、一々、エピソード終了後に病室に戻らなければならないという映像的な誓約がそれを許さなかった。そいう意味で誓約化の中でよくやったといえるが、絵本の朗読を聞かされているような本作は、“映像”を求めてきた人間に否定されたら甘んじて受け入れるべきだろう。ここからは余談だが、本作のような映画(おいらはコラージュ映画と命名した)が“あり”なら、これから役者は徐々に不要になっていくことは目にみえている。スターの顔をスタントマンに貼り付ければ、スタントシーンも対象を正面から撮ることができるし、ハリソン・フォードに演技だけしてもらって、その顔を切り取って、CGで若返らせる処理をした後、フォードと同じ体型の俳優にその顔を貼り付ければ、ハンソロのエピソード0的武勇伝などを映画化することも可能になる。リマスター好きのルーカスのこと、やらないとはいいきれまい。いうわけで、本作はある意味で映画界の分岐点になるかもしれない映画だと思う。今後に要注目しなければ。


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