恐怖の夜間行。「栗原川林道を抜けて皇海山へ」(後編) | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

(つづき)土曜日に早めの就寝をして、真夜中に起きだし、栗原川林道夜間行計画に着手する。簡単にいうと富士山と同じローテだが、先に睡眠をとってから出発というところが違う。栗原川林道入口は群馬側にあるので、一度日光まで出て、日光連山を大きく北から回り込んでやっとこの到着となる。林道入口までも田畑の間の小道をいくような按配で、看板とナビがなければ到底辿り着けそうにないところであった(夜だしね)。栗原川林道は、不定期に通行止めになっていることがあるとされていたが、通行止めになっていないことは電話で確認済み。電話口の係りの方も危険だと仰っていたとおり、林道入口には、「落石注意」「路肩崩壊」「通行は自己責任で」との看板が乱れた立つ。街頭一切なし。ヘッドライトの灯りだけが頼りの23㎞である。栗原川街道ドライブは、過酷なものとなった。これほど神経すり減らすこともあまりない。車一台がやっと通れる道なのに、モーグルコースのように路面が波打っているのである。つまりは狭い車幅とはいえ、ずっとライン取りを気にしなければならないのである。一つ間違えなくとも底を激しく路面にぶつけてしまう。「どこ」「ぼこ」と何十回とぶつけ、ヘッドライトに照らし出されたヴィッツでは跨げそうもない落石を見付けては、車を止めて、手作業でどかすはめとなった。林道23㎞の行程で一秒たりと気を抜く暇はなく肩が凝る。夜間行の写真は一枚もないけど、この林道を車高の低い車ではけしてトライしないほうがいいとおいらは忠告する。これは無謀なんでなくて実質無理だ。おいらが事務所からレンタルしているヴィッツは、結果的にマフラーが落ちる寸前まで底をぶつけて、修理を余儀なくされました。だからこそ、登山口に着けた時の喜びといったらなかったですけどね。駐車場に止まっていた車もわずかに一台! 感無量。対向車にまったく出くわさなかったことと、全長23㎞ながら、カーナビに林道わきの滝や沢といった目印が載っていたので、迷っていないという核心だけは持ち続けていられたのが救いだった。カーナビがなかったら、23㎞一本道ってわけでもないから、迷ってやしないかと不安になったと思う。いやあ本当に無事でなによりだった。


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しかし、林道を抜ける行程には思いのほか時間を使わされ、1時間程度だろうと見積もっていたが、実際は1時間30分をオーバーするという結果に。昼間でも1時間以上はかかると書いてあったのだから、よく考えれば夜間行ならそれを上回るのは当然の帰結ではないか。考えがそこまでいたらなかったな(おいらのバカバカ)。いうわけで、登山口に到着したころには日の出時刻は過ぎてしまっていた。さっそくアタックすることにする。クライムオン!


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登山口には、「山岳遭難多発」「クマ注意」の看板が。初心者に毛が生えただけのようなおいらをびびらせる小道具としてはまだまだ有用に機能する。そういえば、今日は誰にも皇海山に登ってくると伝えずに来てしまった。もし、遭難しても誰も探す手がかりを得られないに違いない。嫌な予感が走る。7月からずっと同行者有りの登山を続けていたから、単独登山がやけに怖い。いやいやいや、大丈夫だ。これが本来のおいらの姿だ。常に一人だったじゃないか。臆するな。乗り越えるんだ。


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登山口の看板を抜けて林道を少し歩くと、すぐに皇海山登山口の道標があり、沢に入ります。皇海橋登山口からのルートの半分は、沢登りとまでは言わないけれど、沢伝いの続いており、1時間弱は、沢を右へいき左へいきと渡河を何度も繰り返しながらの登山となる。朝早いこともあって、“水場=熊”的な発想のあるおいらは心なし熊鈴を大きく鳴らしたりしながら登っていたけれど、それでもなお、沢伝いを歩く魅力の爽快感に抗えず、幸せな気持ちで一杯になるのであった。登山を始めて“沢登り”というジャンルの遊びもあることを知ったが、そういうのにはまる人の気持ちも理解できるなあ。(自分ではやらないけど)



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沢を抜けてカラマツの林の登山道に入ると徐々に深山の様相を呈してきます。登山口からいくらも歩いていなけれど、なかなかの佇まいです。


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中間地点前に嬉しいハプニング。紅葉にはまだ早いと思っていた皇海山でしたが、若干の色付きをおいらに見せてくれました。このぐらいのグラデーションもいいね。しかし、日本百名山なのに登山道自体は3.6㎞しかないのか。そりゃ団体客がどっと押し寄せるはずだよ。登山口までバスで運んでもらえるのだから、これほど簡単な百名山もないのではないか。


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ともあれ、中間地点を過ぎると水の涸れた沢を登るはめになるのだが、この沢が何本かにわかれており、案内の不備で右の沢にいく左の沢にいくか二択を迫られる状況によく陥った。登ったことのある人になら、どちらを行っても構わないと知っていようが、初めて登りにきた人間は悩まざるを得ない。案内がちゃんとしていれば、もっと気楽に登れるのにと少し残念。この沢を登り詰めて、最後の急登もトラロープに頼りつつクリアすると、そこが不動沢のコルで、始めて眺望らしきものを得られる場所に出ます。


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皇海山のお隣さんの鋸山がはっきりと姿を現します。ここまでくれば山頂までは1㎞もありません。登山自体はやはり簡単な山と言わざるを得ません。


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不動沢のコルから山頂までは、まさに深山そのものの景色が目を楽しませてくれます。夜間行を強行した甲斐もあって、登山客とすれ違うようなこともなく、誰もおらず、山は静謐な雰囲気をまとっており、静けさが身の根に染みいってくるようです。ああ、来て良かったね。


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突然、庚申二柱大神の銅碑が現れる。つまりはここが山頂ということ。いきなりなのでいくらかビックリする。あらもう山頂に着いたの?みたいな。鋭角な山ではないから山頂に近づいている実感がわかなかったのだ。山頂も幾分葉が秋色に染まっていたかな。


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山頂はこぢんまりとした空間が広がっており、木立に囲まれて、眺望は南に若干広がっている程度であったが、おいらはニヤニヤしていた。いやだって、どんなサイトにも皇海山はツアー客が多く、登山道も山頂も人だらけだと不満が零してあったのに、おいら山頂まで人っ子一人会わなかったよ。山頂も完全に独り占め。これも夜間行決行の成果である。


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御満悦で記念撮影♪


帰路はピストンで来た道戻ることにする。余裕があったら隣の鋸山にも登ろうと思っていたんだけど、下りていると登山客が沸くように登ってきていたので、この日はこれで止めて急いで下りてしまうことにした。本当に団体さん20名以上のツアーの皆さんなんかと鉢合わせになったりして、交差するのに一苦労する場面もチラホラ。まあでもおいらも何時かはツアーに頼らなければ登れない山にもアタックするのだろうから、ツアー客に対してどうこうということはない。皆好きなように山を楽しんでくれればいいだけ。


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いうわけで、登山口に下山してみると、駐車場は一変していてびっちり埋まっていた。団体さんを乗せてきたであろうバスなんかも止まっている。登っている時は信じられなかったけど、やっぱり何処のサイトも書いている通り、登山客の多い山なんだなあ。一緒に登るはめにならなくて本当に良かった。“静かなる山 皇海山”満喫致しました。帰りの栗原川林道もヴィッツのお腹を散々擦りながら帰った。栗原川林道を抜けたあたりには、東洋のナイアガラと呼ばれる“吹割の滝”という有名な観光スポットがあるらしく寄ってみることにした。


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真上から覗く。確かになかなか立派な滝である。


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下におりて滝壺にも近づいてみた。水しぶきが凄い


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道すがら立ち並んでいる野菜直売所で、野菜類を大量購入して(今時誰もがお土産は菓子類でなく地元の野菜類をあげたほうが喜ぶ)、次回登る日光白根山の麓に沸いている白根温泉で疲れを癒して宇都宮に戻りました。山経験の少ないおいらにとっては、皇海山もやはりいままで登ったどの山とも違って大層楽しかったですね。そして、恐怖を乗り越えて一人夜間行を成し遂げたことは、大いなる財産になりました。書いている現時点においても“栗原川林道夜間行”以上に勇気のいる登山箇所にはいまのところ出会っていません。無理を通してみるというのもたまには必要ということです。まあでも、ヴィッツでアタックしたのが誤りだったのは間違いない。そこは反省して繰り返さないようにせねば。(おわり)