『石挽蕎麦 くろみや』(栃木)-蕎麦漫遊記15。 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

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栃木支部係属の事件が開廷されるのは決まって水曜日。栃木市に店を構える「石挽蕎麦 くろみや」さんの定休日も水曜日。近くまで足を運びながらなかなか味わうチャンスに恵まれなかったお店でしたが、ようやく食べに行くことができました。本店も例の如く、おいらの基本書「再訪そば処栃木の名店を歩く」に掲載されているお店です。


さっそく基本書に紹介されていた“本鴨汁そば”を注文。メニューのいたるところに拘りの文句が並ぶ。鴨は青森から空輸したものしか使ってないとのこと。これはたまりませんな。豊富なメニューはどれも美味しそうで、思わず“人気”とある“そばとうふ”なるものも注文してしまった。


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昼時だからか店内は大層混雑。満席だった1階をさけて2階の座敷に通されたが、そこも満席になってしまった。周りを眺めていたら品物の到着。おお、ビジュアルからして変わった蕎麦が出てきた。これが“外二”という蕎麦になるわけか(違います)。


さて、おいらの基本書記載の情報によると、本店の蕎麦は“二八そば”でなく拘って“外二”で打っている蕎麦とのことである。“外二”というのは十割の蕎麦粉に二割の小麦粉を加えて打った蕎麦とのこと。おいらはこの説明からだけでは、当時“外二”がなんなのか理解できなかった。でも今は分かった。ようするに“二八そば”が全体の1/5がつなぎであるのに対して、“外二”というのは全体の1/6がつなぎということである。結果“二八”より“外二”のほうが蕎麦の味や香りが強い。“外二”でうっている蕎麦屋さんは、この1/5と1/6の違いにこだわるのである。何故“外二”なんて変な言い回しをせざるを得ないかというと、“二八そば”のようにつなぎ20%と割り切れないから。“外二”の蕎麦はつなぎ16.666%なのである。


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さておいて、“外二”は関係なかったが、素晴らしいビジュアルの蕎麦である。そば殻がちりばめられた粗めの挽きに、だまのような白い部分まで見える。栃木市の蕎麦は“だま”のもたらす効能を有効活用する蕎麦屋が多いのかな。同じ栃木市の「一の坊」さんも“だま”で勝負していた。しかし、この白い部分がだまかは正確にはわからない。ともあれ、まず一口だ。箸で蕎麦をつまみあげ、吸い込む。すずzぅうっず~


ぱらぱぱっぱっぱ~


鼻孔を抜ける蕎麦の香り。美味い!


すずzぅうっず。


ぱらぱぱっぱっぱ~


美味い!


すずzぅうっず。


ぱらぱぱっぱっぱ~


美味い!


え? いやあ美味いよ、これは。すずzぅうっず。もぐしもぐし。硬めにうってある蕎麦を噛めしめれば口内に広がる蕎麦の味。美味い! これだけ蕎麦らしい太めの蕎麦をうちながら、喉越しのことも考慮に入れてあり、香りと味、蕎麦の醍醐味を存分に味わえる。素晴らしい。よし、後はつけ汁と相性は如何に。・・・・、蕎麦がな~い


あまりに美味しい蕎麦だったために、つけ汁に浸さずに食べきってしまったのでした。そう、これを書いているたまくんは、「もはや料理に塩分というものを求めていないのです。どんな素材も自身が塩分を保有しており、その塩分を舌でさぐりあててあげれば、ドレッシングだのソースだのと塩分を付加する必要はない。素材にもっとも合う塩分は素材それ自体が内包している塩分であるはずだ」という信条をもっているのです。だから、料理のソースやドレッシングと素材のバランスには相当煩いです。世の中のほとんどのソースとドレシングは邪魔なだけと公言してはばかりません。ゆえに、蕎麦の評価の際にも、つけ汁との相性という一項目が必要不可欠。今回はつけ汁を利用できなかった以上、満点評価は控えざるを得ない。こんなに美味いのに残念。鴨汁単体は上品な味でございました。


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気を取り直して、サイドメニューの“そばとうふ”を食す。


うっうっうっ美味い!


この食感。蕎麦と葛の融合。なめらかにして適度な粘り。舌で転がせばあちらこちらに蕎麦の花が咲く。ぱくっ。美味い!


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はあ、御馳走になるとはこのことだ。満足です。よし、最後にそば湯に舌鼓。これはこれは、はぁあ、これもまたなんと形容してよいのやら。味深く薫り高い。そばを食すということはそば湯を飲むということと同義である。下手したらそば湯のほうが美味いなんて蕎麦屋もある。ここは美味い蕎麦に美味いそば湯を出す。これ以上はあるまい。最上である。


しかし参りましたな、これは。これほどの仕事には滅多にお目にかかれません。職人のこだわりが随所から伝わってくるのに、こだわりが作り手の独りよがりに終わっていないところが良い。客の目線でものを考えることができる、そんな気の良さが感じられる品々だ。これは是非、挨拶して帰らねば。


伝票をもって2階の座席から1階のレジに向かって階段を下りる。ごちそうさま。忙しなく店内を動いている従業員に声をかけレジへ。するとどうですか。奥から店主が暖簾をかき分けて、顔を出す。「ありがとうございました。お口にあいましたか」


キ キ キ キ キタァァァァァァーーーーーーーーーーーー


料理人はかくあるべきとは私の持論である。客が食べている様子を密かに観察していない料理人に未来なし。観察できなければ声をかけて訊くのが鉄則である。外食サービスという世界に天井はない。ある一定のレベルに達しった料理人なら尚のこと、密に客と接触しなければならない。何故なら外食サービスの極意へのヒントはお客しか持っていないのだから。「いやあ、美味しかったです。最近蕎麦を食べ歩いてるんですけど、ここのがダントツです。本当に美味しかった」


【栃木】石挽蕎麦 くろみや/本鴨汁そば ☆☆☆☆★/そば湯 ☆☆☆☆★

    石挽蕎麦 くろみや/そばとうふ ☆☆☆☆☆



明くる日。あまりに感動したので、足がまた向いてしまった。どうしてもここの“かえし”を試してみたくなったのである。料理は結局センスだから、なにかが美味ければ他も美味いということが多い。2回目のこの日は、“ざるそば”と“そばアイス”を注文してみた。あっそうそう単品でかきあげも頼んだんだった。


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到着。しまった。「オーマイガッツ(おお、私の神々)」“もり”じゃなくて“ざる”を頼んでしまったか。蕎麦の上に刻み海苔がてんこもりじゃないか。とほほ。ともあれ、そのようなことで落ち込んでいる場合じゃない。“ざる”は“ざる”で美味そうじゃないか。まずはつけ汁なしでいただきましょうか。箸でそばを数本つまみあげ、以下省略。


んーなるほど。蕎麦は難しい。一筋縄では処理させてもらない。この日の蕎麦は前回の蕎麦と味がまったく違う。毎日その日の蕎麦をうっているから、この日の蕎麦の出来が悪かったのかもしれない。しかし、おいらは違う意見を提示したい。すなわち、茹で過ぎである。前回より茹で過ぎてしまったことにより、すべてのバランスが逸してしまったのである。しかし、これは果たして本当に同じ蕎麦なのか。あの絶品とも評したくなるほどの絶妙なバランスが崩れてしまっている。もう一度言おう。蕎麦は難しい。いうわけで、噛めば蕎麦の味はしっかりと口内に広がるものの、香りや喉越しが若干薄れた蕎麦は、ただの美味しい蕎麦という形容する以外に道がなくなってしまった。食は気からくるものなのだ。


まあでもいいじゃないか。今日は“かえし”を試しにきたのだ。この蕎麦ならつけ汁に後腐れなく浸すことができるぞ。“かえし”はキレのある甘酸っぱい、なんともいえないオリジナリティ。ふーむ、これはよくワカリマセンな。蕎麦との相性もまずまずであった。


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サイドメニューからの“そばアイス”もなかなかのお味でございました。蕎麦とアイスを融合させる必然性はないけどね。(おわり)


【栃木】石挽蕎麦 くろみや/ざるそば ☆☆☆☆

    石挽蕎麦 くろみや/かきあげ ☆☆☆★

    石挽蕎麦 くろみや/そばアイス ☆☆☆☆


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【素材情報】

そば粉:茨城県金砂郷産

つ ゆ:本がえし/本カツオ、宗田ガツオ、サバ、利尻昆布

薬 味:葱、本わさび


【蕎麦まとめページ】

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