50年代初期にR&Bが人気を博しても、それはR&Bチャートの中での話であり、ナショナルチャート(ポップスチャート)でのヒットではありませんでした。

そんな中、ついにR&Bからの全米トップ10ヒットが生まれます。

●シュブーン / ザ・コーズ
1954年  全米9位、R&Bチャート1位

この曲は、黒人のR&Bから初のトップ10入りとなったことから「シュブーンが初めてのロックンロール」とする説もあります。     

しかし、ここでこの時代を象徴することが起きます。

この曲を白人グループであるクルー・カッツがカバーし、そちらはなんと全米No.1になったのです。
●シュブーン / クルーカッツ

この1954年から数年は、R&Bの曲を白人がカバーし、オリジナル以上に売れるというのが多々ありました。

いくつか例を挙げます。
(順位はナショナルチャートのもの)

★シンシアリー
●オリジナル 
ムーングロウズ / 55年 20位


●カバー
マクガイヤー・シスターズ / 55年 1位



★アース・エンジェル
●オリジナル 
ペンギンズ / 55年8位(ナショナルチャートで大健闘)

●カバー 
クルー・カッツ / 55年8位(最高順位はオリジナルと同じだが、こちの方が長く滞在)



★エイント・ザット・ア・シェイム
●オリジナル
ファッツ・ドミノ / 55年10位


●カバー
パット・ブーン / 55年 2位


皆さんはどちらが好みでしょうか。

僕は圧倒的にオリジナルです。


どうしてオリジナルの方が良いのに、チャートでは白人が上なのか。

その根幹にあったのは、黒人への排他意識だったと言わざるを得ません。

トイレからバスの座席、食事の場所まで黒人専用、あるいは黒人立ち入り禁止、そんなことが普通にまかり通っていた時代です。

R&Bの曲は良い。
ムーブメントも否定できない。
でも黒人音楽は許容できない(人がいた)。

残念ながらこのようなことが数年続きました。

これはロックンロールの歴史を語る上で避けてはいけないことと思います。

それだけに、ロックンロールの誕生には「音楽が人種差別を乗り越えた」という特別な意味があるのです。

chuma@WDRS