ロンドンで観た、ビルマ元捕虜の自伝『The Railway Man レイルウェイ・運命の旅路』 | ロンドン在住イメージコンサルタント、テート小畠利子のつれづれ日記

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イメージコンサルティング&養成『トーキングイメージ』代表、テート小畠利子です。ロイヤルアスコットパッケージ•ロンドンフェイスヨガ等も提供。著『知的に見える男、バカっぽく見える男』新潮新潮、女性を美しく見せる「錯覚の魔法」』文春新書。最近は主に愛犬成長記?

新年早々、新作映画が次々と公開されていますが、
『The Railway Man』(邦題『レイルウェイ・運命の旅路』)を先日観ました。

第二次世界大戦中、タイとビルマを結ぶ『死の鉄道』敷設に携わった
英国人元捕虜、Eric Lomax エリック・ロマックスが
1995年に出版した自伝を映画化したものです。

多くのイギリス兵をはじめ、連合軍捕虜が
ビルマで憲兵隊に過酷で劣悪な扱いをされたことは聞いていました、
特にイギリスに住み始めてから。

重い映画に違いない、ということは覚悟しつつも
もしや、残酷な拷問場面ばかりだったらどうしようと不安でしたが、
その場面は映画の一部に留めていました。
でも、銃でバンバン!と撃って終わり、というものとは違い、
拷問は残酷で、まともに見続けることは難しく、
何度も眼をそらしてしまいました。

戦後、何十年たっても、受けた拷問はエリックの頭から離れず、
連夜まさに『悪夢』にうなされる日々。
ある日、彼が拷問を受けた収容所で通訳をしていた日本兵、
永瀬隆が生存していることを知るエリック。
それも、まさにそのビルマの捕虜収容所の案内係をしているとは・・・。

復讐をするつもりで永瀬に会いに行くエリック。

しかし、永瀬は永瀬で、戦争は何十年も前に終わっているものの、
ずっと苦しみ続けていたのでした。
自分を含む日本軍がどれほどの捕虜虐待を行ってしまったか。
当時、正しい情報が自分たちには
全然伝えられていなかったことも知るのでした。
永瀬はのち、ビルマに戻り、罪滅ぼしのつもりで
100回以上の巡礼を行うのでした。

恨んでも恨みきれないほどの敵国の象徴のような永瀬ではあったものの
その永瀬はエリックに心からの謝罪をし、
永瀬も自分と同じく戦後ずっと苦しんできた事実をエリックは知り、
長い苦しみを経たのち、和解と許しの境地に二人はたどり着くのでした。

"I have suffered much but I know you have suffered too.
Sometimes the hating has to stop."
『私は大変苦しんできた。
でも、あなたも苦しんできたことを知っている。
時には憎むことをやめないといけない。』


エリックのこの言葉は心に沁みます。



最初は、ロンドンの映画館で
日本人の私がこの映画を観るのはどうだろう?
と一瞬、戸惑いましたが、
日本人だからこそ観に行く義務があると思いました。

前列に二人、日本人らしき人が座っていましたが
見回す限り、映画館はいわゆる『白人』で満席でした。
映画が終わり、涙をぬぐっていた私をじっと見つめる人がいたり
化粧室で遭った女性には、眼をそらされた気もしないでもないですが、汗
誰にもなじられることなく、平穏に終わりました。

『慈悲』と『許し』を主なテーマに置いた映画のように思われましたが、
私はこの映画を観終え、次のことを強く感じました:

『戦争』は想像を絶する不幸と損失を人類に与えるもので、
何があっても避けなくてはいけない。

過ちを二度と繰り返さないためにも、
私たちには後世に『事実』を伝えて行く義務がある。

そして事故や戦争を経験することで
『トラウマ』の後遺症で苦しむ人たちのアフターケアが必要。


大惨事のあと、どう対処するかは各自さまざまなのでしょうが、
もうご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
広島の原爆被爆者である私の父は、このエリックと同様
ほとんど誰にも真相は語ることなく、
50年間、記憶から抹消しようとしていました。

父の原爆の記録はこちらでご覧になれます。
父の『広島に於ける原爆被爆の記録』

父の原本と私の英訳した記録はロンドンにある
Imperial War Museum 帝国戦争博物館と
ワシントンDCにあるSmithsonian’s National Air and Space Museum
スミソニアン国立航空宇宙博物館に
2000年より進呈・保管されています。

エリックの未亡人、Patti パティがテレビでインタビューされていましたが、
永瀬が亡くなる2011年まで二人は連絡を取り合い、
夫婦共々、何度か会ったそうです。
残念ながら映画が完成する前年の2013年10月、
エリックも亡くなります。
パティの話だと、かなり事実に基づいて映画が作られていたことに
エリックは満足していたそうですが
再び過去が甦る気がするので、映画が完成しても観ない、
と言っていたそうです。

エリック役のコリン・ファースの演技はいつもながら見事でしたが、
永瀬役の真田広之も立派だったと思います。
また、ゆっくりと聞き取りやすい、あまり癖のない英語で話していました。
あの語り口なら外国の人にも問題なく理解してもらえると思います。

逆に日本語の語り口のところでは画面の下に英訳がなく、
一緒に観に行った友達に、
『あの日本兵達はなんて言ってたの?』とあとで聞かれ、
一部、理解できなかった部分もあったようです。

日本人としても観る価値のある映画だと思います。