- 母の日によせて - | 人は話さずにはいられない「トークケア」

人は話さずにはいられない「トークケア」

栗原未来主宰 日本発の思いやりを形にした”トークケア”。
より多くの方に楽しんでご利用頂けるよう、
スタッフやサービス、その他皆様のライフスタイルに
有効なご案内をしております。

先週、ゴールデンウィークの真っただ中、
母方のお墓参りをしてしてきました。

本来なら3月のお彼岸の予定でしたが、
予定が合わず、この時期に。

新宿区内にあるお寺は緑が濃く茂り
夏のような暑さも風にさやぐ葉音で
涼しげに感じさせてくれます。

母が本堂にお線香をもらいに行く間、
私は水を汲み、花を桶ににさし、
準備をします。

冷たい水が気持よく、
あぁ、季節はもう夏に向かっているんだなと
感じていました。

片手にお線香の煙りをくゆらせ、
もう片方の手にステッキを持ち
ゆっくりと母がこちらに歩いてきました。

その手からお線香を受取り、
水の入った桶を持つと、
「大丈夫?重くないの?」
母が私を気遣ってくれます。

全然平気よ~って軽く流します。

そして祖母たちが待つ墓石に向かって
歩き出します。

先頭は私。
ここ最近は母が行く道を迷ってしまうので、
私が先頭を歩きます。

目指すお墓に着くと
木瓜の木に水を遣り、
「今年は(開花に)間に合わなくて残念ね」と
お互いに顔を見合わせます。
木瓜

あ・うんの呼吸。
母娘ですから(笑)

私たちは毎回ここに辿り着くと
決まってお墓を取り囲むように咲く
春は木瓜の花を、
秋は彼岸花の話をします。

そして祖母たちに近況を報告し、
ゆっくりとその場を後にします。

帰り道は母が先頭です。
目印があるので迷わずに歩けるから。

本当に小さくなった後姿。
石畳をひとつひとつ
踏みしめて歩いていきます。

私は歩調を母に合わせて、
後ろからゆっくりと歩いていきます。

まるで、母の生きてきた軌跡をたどるように。

私は母や祖母から十分すぎる愛情を受け、
今、ここにいます。

私には子供がいないので、
こんなふうに私の軌跡を追う人はいません。

でも、それも一つの人生ですよね。

そんなことをゆるりと考えながら
私も石畳のひとつひとつを
踏みしめて歩いていく。

いつか終わる、その時まで私たちは
人生の歩を進めていきます。

ふと見上げた空は怖いくらい青い。
五月の風と夏の予感が
きゅっと胸に迫ります。

また秋には一緒に来れますように。
いつまでも娘でいられますように。

K