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『もう! 着いたら電話しなさいって、約束したでしょう! あれだけ言ったのに、なンで電話の1本くらい出来ないのぉ!』
ここは東南アジア某国のゴルフ場。私は会社の上司とハーフの9ホールを上がって、これからクラブハウスで昼食を食べるところだ。
現地に到着後、眞知子サマから何度も着信があったみたいだが、掛け直すコトを躊躇っているうちに、今また着信があった。
一昨日、6回目のレーザー脱毛をしてもらう時に、『フライト前と到着後は必ず電話、あとは3時間おきにメールして、帰りのフライト前と帰国後には電話をしなさい』と、眞知子サマから耳にタコが出来るくらい言われた。
そうは言っても、なンせ取引先や自社の役員と行動するワケだから、目の前でダラダラ電話なンか出来るワケも無く、ましてやラウンド中に私用電話なンかもってのほかだ。
『それで! 今はどこで、何をしてるの!?』
――――――ゴルフしてるって言うの怖いなぁ(>_<)
『ウソついてもダメよ! 写メも送ってもらうから!』
――――――こら、アカン。全部お見透しや。
スケジュールの都合上、と言うよりは、最初からこンな行程だったようで、“視察は行かないンですか?”と尋ねる私に向かって、本部長は変なモノを見るような目で言った。
「あン? 視察? そンなモン、明日、明日! マジメに仕事ばっかりしてたら、キミ、出世でけへンで!」
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正直に現況を報告する私に、眞知子サマは大音量で叫ンだ。
『ほらみなさい! オトコって、そうしてウソばっかり言うンだから! もう絶対に赦さないンだから!!』
ガチャ!ツー、ツー、ツー・・・
顔から血の気が引いていくのが自分でも解った。
「なンや、キミ。ヨメはンに怒られたンかいナ。こっちまで声が聞こえてたデ。わははは!」
「え、ええ、まぁ」
―――――笑いごっちゃないで、ホンマ。どないしょう・・・
そのあと、何度メールをしても返事は無し、電話しても“電源が入っていないか電波の届かない・・・”の状態が続いた。
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夕食を食べても砂を噛ンでるようで全く味がわからず、その後に来たこのカラオケバーも全然楽しめない。
眞知子サマに嫌われるというのがこンなにツライとは、今まで想像も出来なかった。
「では、皆さン、今夜はそろそろお開きです。お目当ての娘は決まりましたか?」
―――――なに?なンのこっちゃ?
「なンや、キミ、手ブラで帰るつもりか?」
どうやらこの店、カラオケバーは隠れ蓑で、本体は女性をお持ち帰りさせる売春宿だったようだ。
―――――やっぱり眞知子サマの言ったとおりか・・・
「いや、いや、いや! わ、私は、け、け、けっこうです」
あわてて答える私に向かって、みンなまるで珍獣でも見つけたような表情で見た。
「え? アンタ、ひょっとして変態かぁ? それとも、ホモ?」
「まぁ、まぁ、昼間あンだけ怒られてたら、勃つモンも勃たンわナ。ガハハハハ! 早よ帰って寝り」
「あ、明日は10時にロビー前集合ですヨ。寝坊しないように、って、独り寝の主任には関係無いか。ハハハハ!」
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自分の部屋に帰った私は、酒はだいぶ飲ンでいたハズなのになかなか寝つけず、溜息と寝返りばかりしていた。
―――――はぁ~。眞知子サマぁ。ごめンなさい。
ナミダがポロポロ流れたが、それでも疲れていたようで、私はいつの間にか寝入ってしまった。
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ドン!ドン!ドン!ドン!
けたたましくドアを叩く音で私は飛び起きた。
―――――えらい早いナ。まだ8時前やで?
ダ!ダ!ダ!ダ!
『開けなさい!リン!いてるンでしょう!』
―――――え? 眞知子サマの声? え?え? まさか!?
つづく