『件名:ごめんなさい。
やっぱりまだ逢えない・・・』
美紅ちゃんの誕生日から2カ月が経ったある日、1週間ぶりにメールが届いた。
あれから2人はますます親密になり、毎日朝と晩は「おはよう」と「おやすみ」のメールを交わしていた。
週末は予定がない限り2人で逢うようになり、逢えない日も必ず電話で話していた。
美紅ちゃんは風俗の仕事を辞めた後、運転免許を活かした仕事をすると言って、自動車の教習所へ通うようになった。
先週はやっと試験に受かったのでお祝いをしようと決めていたのだが、いきなり美紅ちゃんからの連絡が途絶えてしまった。
電話をしても留守電になり、メールを送信しても全く返事が来ない。
――いったいナニがあったンだろう・・・
私は何か美紅ちゃんの機嫌を損ねるコトをしたのだろうか?
それとも、やはりこンなオッサンでは飽きてしまったのだろうか・・・
そのあたりのコトをメールで訊いてみた。
『Re: Re: ごめんなさい
店長からの返済が全く無いの。
と言うか、店長が行方不明になったの。
もう自分が情けなくて、また過食になったの。
こンな醜くなった姿をリンくんには見せられない・・・』
――なンでそンな結論になるかなぁ・・・
私はとりあえず電話に出てもらえるよう、美紅ちゃんにメールで頼み込んだ。
そして、次の日に美紅ちゃんから電話があった。
『リンくんは何も悪くないの。でも、自分でもどうしようもないのヨ。
最近では娘にだって当たり散らしてるし、だからこンな状態でリンくんに逢えないの。』
「いや、それは違う!
私のコトが嫌いになったのなら、それはチャンと受け止める」
『違うの!』
「じゃあ、なンの問題も無い。オレと逢って、思う存分当たり散らしてくれたらいい。」
『そンなの迷惑でしょ?』
「それはオレが決めるコト。
愛する女性の愚痴くらい聴けないようなら、“オトコ”の看板を下ろしますワ。」
『アタシ、肥ったわヨ?』
「大丈夫!80Kgまでなら、まだ抱っこできる!」
『いきなり不機嫌になるわヨ?』
「小話を100コくらい仕入れとくから大丈夫!」
『アタシのコト嫌いにならない?』
「“グー”で殴られても嫌いになれません!」
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あなたを遠くに感じる夜がなぜかあるの
言葉も何も通じない世界の果てのよう
ああ だから 心をあなたにつなげたい
愛して愛して もっと愛し合えば
いつかは答えがわかるのでしょうか
ああ なのに 心はあなたにつなげない
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1時間以上は話し合っただろうか。
迷惑をかけるのが嫌というケド、このまま逢えないほうが私にはずっと迷惑だというコトを理解してくれたようだ。
こうして、ようやく今度の週末は美紅ちゃんの「免許取得のお祝い」をするコトになった。
つづく