『今日もカラオケですかぁ?』
レストランを出た2人は、とりあえず先週に利用したカラオケボックスに向かって歩いている。
美紅ちゃんはさっきまで泣いてたクセに、今は満面の笑顔で私の腕にしがみついている。
――今泣いたカラスが、ってヤツかいナ(^^;;
美紅ちゃんは私よりも4歳年下の32歳だと言ってたが、見た目はやはり20代後半にしか見えない。
こうして連れ立って歩いていると周りの目がとても気になるが、彼女はいっこうに気にしていないようだった。
「いや、まさかス○バやド○ールであンな話は出来ないやろう?」
『じゃあ、ホテルへ行きませんかぁ?』
――え?
そりゃあ2人っきりになるならその方が好都合だが、私の良心回路がどこまで機能するか自信が無い。
『ね?そうしましょう!
ハイ、決まり‼︎』
そう言うと美紅ちゃんは私の腕を掴んだままグイグイと引っ張りだした。
――これじゃ、アベコベやがナ・・・
「じゃあ、先ずはシナリオを考えようか。」
ココは繁華街の外れにあるラブホの一室。
土曜日の真昼間なのに利用客は多いらしく、この部屋が空くまで30分ホド待たされた。
待合室にいる間に借用書を読ンでみたが、店長はどうやら金融屋にいたらしく、細かい契約内容が明記されていた。
逆に言うと契約違反がいくつもあるので、債務不履行を理由に一括返済を迫るコトが出来そうだ。
「これはネ、借用書じゃなくて金銭消費貸借契約書と言って・・・」
『・・・。』
「聴いてる?」
『イヤ!』
「ナニが?」
『先に告白でしょう!
そンな話は後でも出来るじゃない。
早くアタシを口説いて‼︎』
――な、なンじゃ、そら?
美紅ちゃん、だんだん敬語じゃなくなって、急に立場が逆転したような気がする。
「え、え~、おほん。」
『早くぅ!』
「では、石川美紅さん。
貴女のコトが大好きです。
私と付き合ってください!」
『はぁい!喜んで♡』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
♪今だけを 愛だけを きみだけを みつめよう
もう かえらぬ過去を ただ 悔やんでみたり
もっともっと 変われる明日を ただ 皮肉ってたり
心 怯むうちに 時は流れていった
今だけを 信じよう
『え~。できませんよぉ!なンでですかぁ?』
「いや、その手の甲にあるタコ。
俺の拳ダコと似ているケド、ちょっとちがうなぁ・・・」
『・・・・・。』
「ん?どうかした?」
美紅ちゃんの表情がみるみる険しくなってきて、今にも泣きだしそうになっている。
私は何か触れてはいけないモノに触れてしまったのだろうか?
『正直に言いますネ。コレは吐きダコなンです。』
言い終わった途端、美紅ちゃんは顔を覆って泣き出した。
――吐きダコ?ってなンや?
ってか、泣くようなコトなンか?
もう かえらぬ過去を ただ 悔やんでみたり
もっともっと 変われる明日を ただ 皮肉ってたり
心 怯むうちに 時は流れていった
今だけを 信じよう
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なンとなく押し切られた感はあるし、どこかヒトの弱みに付け込んでいるような気がして後ろめたかったのだが、美紅ちゃんも私のコトを求めてくれているのならこんなに幸せなコトは無い。
私は期せずして若くて可愛い彼女が出来てしまった。
ところで・・・・
――ん、拳ダコか?
ずっと気になっていたのだが、美紅ちゃんの手にあるこのタコのようなモノはなんだろう。
さっきはテーブルの向かい側で良く見えなかったが、今は隣に密着しているのではっきりと赤い痣のようなものがわかる。
「ひょっとして、美紅ちゃんも空手やってるの?」
なンとなく押し切られた感はあるし、どこかヒトの弱みに付け込んでいるような気がして後ろめたかったのだが、美紅ちゃんも私のコトを求めてくれているのならこんなに幸せなコトは無い。
私は期せずして若くて可愛い彼女が出来てしまった。
ところで・・・・
――ん、拳ダコか?
ずっと気になっていたのだが、美紅ちゃんの手にあるこのタコのようなモノはなんだろう。
さっきはテーブルの向かい側で良く見えなかったが、今は隣に密着しているのではっきりと赤い痣のようなものがわかる。
「ひょっとして、美紅ちゃんも空手やってるの?」
『え~。できませんよぉ!なンでですかぁ?』
「いや、その手の甲にあるタコ。
俺の拳ダコと似ているケド、ちょっとちがうなぁ・・・」
『・・・・・。』
「ん?どうかした?」
美紅ちゃんの表情がみるみる険しくなってきて、今にも泣きだしそうになっている。
私は何か触れてはいけないモノに触れてしまったのだろうか?
『正直に言いますネ。コレは吐きダコなンです。』
言い終わった途端、美紅ちゃんは顔を覆って泣き出した。
――吐きダコ?ってなンや?
ってか、泣くようなコトなンか?
つづく