新聞記事を読んでいると(今更感はありますが)ZOZO 前澤社長が「1万円の商品の原価は2000円〜3000円」というツィートをめぐって、さまざまな意見がでているようですが、これはちょっと考えれば何もおかしくないし、ぼったくりでもなんでもない、前澤社長は極めて正しいことを言っているということはすぐにわかります。

 経済評論家の類いの人の何人かは、「販売に色々な経費がかかるから、、、」というようなことをおっしゃっていましたが、そこは論点でなく、問題は「在庫」なのです。

 

 

 例えば、分かりやすく説明すると。。。

 

 2,000円の商品を10個仕入れるとします。仕入れの合計金額は20,000円ですね。この商品を全量10,000円で全量売り切れば、確かに80,000円の利益が出て、なんと利益率は80% !!! 一見、確かに「ぼったくり」にみえなくもありません。

 

 しかし、実態は10個仕入れても普通に売れるのは5個以下(2017年の正規価格の"消化率といいます")、50%をきっています。そうなると、この会社はこの時点で 20,000円の現金を仕入れに使い、5個分の80%の利益の40,000円 (8万円の半分) が手元にのこることになります。

 

  さて、話はここでおわりません。余った 5個を売らないと、最近メディアを騒がせている「破棄損」 につながりますから、セールで50%値引きとします。そうなると、原価は 2,000円でも販売価格は5,000円。利益は1個あたり3,000円で60%にさがります。いま、世の中は8月と12月から2ヶ月間ほどセールとなりますから、12ヶ月のうち1/3は値引き販売の時期になるのです。

 

 さらに、さらに、話はおわりません。いくら値下げをしても全く売れずシーズンを終えるものもあります。優秀なアパレル企業は総仕入の一桁程度ですが、一般的には10%を超えるぐらい余ってしまうのが実態ですから、このケースでいえば、50%の値引きをして5個をうって、3個売れたが2個残って破棄をした、という感じになります。

 

 そうなるとどうでしょう。破棄をすれば、2,000円で二つ仕入れた商品がすべて「お釈迦」になってしまいますから、これは損失になりますね。これを時系列で整理すると

 

1.定価で売ったときの利益 40,000円 (10,000円 - 2,000円)X 5個

2.セールで売ったときの利益 9,000円 (3000円 X 3個)

3.  余った商品の破棄損   -  4,000円 (-2,000円 X 2個)

 

となり、これを合計すると、利益は 45,000円となるわけです

 

つまり、この会社の売上は、65,000円で、利益は45,000円。利益率は70%

今、場所のよいところでは家賃や販売手数料は 30%程度、物流費が5%で、人件費が20%程度ですから、70%から合計の55%を引くと、この会社のネットの利益は、なんと15%程度

 

 さらに、さらに、さらに、この15%は「お店」でかかる利益だけですから、本社にかかる費用や人件費を引くと。。。

 

 どうでしょうか。多くのアパレル企業が赤字になっている理由がよくわかりますね。結局、仕入れたものがほとんど売れればよいのですが、消費者は値引きに慣れてしまい、また、服が世の中に溢れているので必要以上のものを買わなくなったため、破棄が膨大になってきた。この二つの要因から 2,000円の原価のものを10,000円で売っても儲からない構造になってしまっているのですね。

 

 これに似た計算に コンサルティングフィーもありますが、よく高い、高いと批判をされているものも、きちんとこのように計算すれば、世の中の小売り企業は、本当に血みどろの努力をしながら損益ギリギリで仕事をしているのです。