花と造花 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

たとえば、悲しい境遇の人物がいたとします。

 

演出家やお客様に、

「ちっとも悲しく見えないね」と評価されて、

じゃあ、もっと悲しい気持ちになって演じよう、

とするのは間違いです。

これでは造花の花弁の色を、

もっと鮮やかな色に塗り替えようとする作業と同じです。

 

木や草や花が生き物であるように、

役だって生き物なのです。

木や花を元気にしてやろうと思ったら、

水を与えたり陽に当てたりするでしょう。

 

役の場合はその人物の悲しみの根元を、

見つけてあげることです。

そしてその過酷な境遇を一緒に受け止めてあげることです。

つまり心の奥底を具体的にし、

回りの人間関係を具体的にするのです。

 

俳優が勝手に気分を変えたり、

感情を装飾することではないと思うのです。

 

 

▶︎近景