リアル | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

リアルとは何か。

 

観客としては、

見ていてこれは芝居だからとかドラマだからとかを忘れて、

まるで現実を目の当たりにしているように、

錯覚させてくれるもの。

たとえば、舞台を見ているうちに、

アパートの一室を覗き見しているような錯覚に陥るような。

 

作り手としては、

観客(視聴者)に向って何かを表現して見せるのではなく、

相手役に向って戦いを挑む、

相手役の心を揺さぶる、ダメージを与える。

 

僕が最初にショックを受けたのは、

70年代のアメリカン・ニューシネマでした。

それまでのハリウッドの絢爛豪華で、

美男美女が出て来る作り物の映画ではなく、

当時、まったく無名だった、

ダスティン・ホフマンやアル・パチーノや、

ロバート.デニーロたちが登場して来た、

リアルで汚くて生々しい映画たち。

その後、80年代になって作られた、

「普通の人々」という映画にはさらに度肝を抜かれました。

それまで映画を見ていて、

あんなに不快にさせられたことはありませんでした。

 

人間にはスイートな面とグロテスクな面があります。

この両方が表現されて、

初めてリアルと言えるのではないでしょうか?

60年代、アメリカに一人のスターが登場します。

「エデンの東」や「理由なき反抗」

で知られるジェームス・ディーンです。

しかし彼の場合、相手役は存在しません。

一人リアル、一人グロテスクです。

 

その後、ダスティン・ホフマンやアル・パチーノたちが、

相手役と共有したり戦ったりをやり始めて、

本物のリアルを確立していきました。

「ゴッド・ファーザー」などは、

まさにリアル演技の金字塔のような映画です。

 

最近、「クレイマー・クレイマー」

という映画を見直して見て、

改めてその演技のお手本のような、

クオリティの高さに驚きました。

70年代~80年代に、

リアルな演技は彼らによって確立されていたんですね。

60年代にビートルズが、

ポップミュージックを確立させたように。

 

DVDの特典映像では主演のダスティン・ホフマンが、

インタビューに答えて当時を振り返っているのですが、

彼の演技方法は実に秀逸です。

僕の説明よりも、彼の言葉に耳を傾ける方が、

きっとリアルとは何かがわかると思います。

俳優を目指している人は必見の映画&インタビューです。

 

 

▶︎下北沢