認知、判断、行動 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


いま取り組んでいる「大きな銀杏の樹の下の小さな泉」に、

こんな場面があります。

工場で働いている青年と弁当屋の店員の少女が、

喫茶店で緊張しながら初デートをしています。

台本では、


光雄「あ、あの」

早苗「な、なに?」

光雄「いや、あの」

早苗「う、うん」

光雄「今日の白身魚の西京漬……」

早苗「うん」

光雄「美味しかったな」

早苗「そう」

光雄「ほんと美味しかった」


と続いていくのですが、

俳優はまず「あ、あの」という台詞を、

どうやって喋ろうかと苦心します。

しかし演技に大事なのは「認知、判断、行動」です。

まず台詞を工夫するというのは行動から始めるということです。

ここに認知、判断はありません。

「あ、あの」の前にやるべきことがあるのです。


まず、男優は彼女の体を舐め回すように見ます。

彼女のくちびるが色っぽいなあとか、

おおきなおっぱいだなあとか、

思ってたより肌が白いんだなあとか、

出来るだけ具体的に彼女を観察します。

これが認知です。

ふと顔を上げると彼女もこちらを見ていた。

やばい!

じろじろ見ていたのがバレたかも!

どうしよう!どうしよう!
これが判断です。

そして初めて行動の、

「あ、あの」

となるわけです。

これが認知、判断、行動。

人間の生理に合った演技なのです。



▶︎みりん