頭がよくて利口なこと、
才能が優れていることを「賢い」と言います。
しかし、昔はこの言葉は、
ちょっと違う意味で使われていました。
「日本書記」や「万葉集」などに、
すでにこの言葉は出てきますが、
それは頭がよくて利口であるという意味ではありません。
天雲をほろに踏みあだし鳴る神も
今日にまさりてかしこけめやも
万葉集の中にあるこの歌の意味は、
天雲をばらばらに踏み砕いて鳴る雷でも、
今日以上に恐れ多いことがありましょうか、ですが、
その「かしこけ」は実は恐ろしいことを意味します。
つまり「賢い」という言葉は、
もともとは恐るべき霊力、威力のあるさまを表したもので、
それに対して人々は畏まった(かしこまった)のです。
そこから「かしこい」という言葉が生まれ、
のちに転じて、頭がよいこと、
能力にすぐれていることを意味するようになったのです。
賢いことは恐いこと、確かにそうかも知れません。