では、人間のこういう意識の仕組みを、
どうやって演技に反映させるのか。
俳優は人間のこういう意識の仕組みを、
まずは知っているだけで良いと思うのです。
たとえば、自分の将来に不安を抱えている人物がいたとします。
結果、彼はその不安を紛らわすために、
趣味や、遊びや、恋愛に逃避したりしています。
このとき俳優は不安を感じないように、
思いっきり趣味や、遊びや、恋愛に没頭すれば良いのです。
彼の無意識の中に「怒り」があることを引き出してやるのは、
その俳優自身ではなく、実は相手役です。
相手役が、彼の「怒り」を刺激し、
誘発し、さらけ出させるのです。
つまり、お互いが相手の無意識を攻撃(刺激)する、
現時点ではこんなふうに考えています。
演劇を英語で言うと「play」です。
僕はずっと以前からどうせ遊ぶなら、
チームプレイをやりたいと思って来ました。
しかし、チームプレイというのはみんなで仲良くするとか、
連携して物語を紡いでいくということではありません。
人間の無意識に迫っていき、
さらにそれを乗り越えていくのがドラマであるならば、
相手の無意識の中に踏み込み攻撃(刺激)することが演技、
それこそがチームプレイだと思うのです。
出演者全員がこの仕組みを把握し、実行していけば、
舞台はもっともっと刺激的で深いものになると思うのです。