中村仲蔵 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


美しさ、醜さ、残酷さ、気高さ、人情味、

歌舞伎には人間のあらゆる面が詰まっています。

その中でも「仮名本忠臣蔵」の五段目定九郎の名場面は、

目に焼き付いて離れません。


黒羽二重の小袖を引っかけて、

舞台袖で本水を浴びせてから登場してくる定九郎。

鉄砲で撃たれるその刹那、

口から吐き出された真っ赤な血潮が、

白い太股にしたたり落ちます。

人が死ぬ瞬間の黒と白と赤のコントラストの見事さは秀逸です。

この役はほんの10分も舞台に出ていない小さな役なんですが、

他がかすんでしまうくらい見事な工夫になってます。

僕が見たのは中村橋之助さんの定九郎でしたが、

もう惚れ惚れするくらい格好良かったです。


この中村仲蔵というのは実在の人物で、

この役を工夫したときのエピソードが、

そのまま落語にもなっています。

まあ、これはちょっと筆舌には尽くしがたい。

機会があったら是非本舞台を見ることをお勧めします。




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