オルガンを基軸としたプログレ・テイスト漂うデンマーク産ヘビィ・サイケがこれ! /ポケットサイズ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

POCKET-SIZEはデンマークで結成されたVo兼G、Vo兼Bs、Kb、Dsの四人から成るバンドで、70年に制作されたアルバムを唯一としている。このCDも2000年代になって多くの発掘音源がリリースされ始めたその中の一枚で、当時のLPは今となっては激レア盤と呼ぶに相応しいものと思われるが、そのアナログ盤も同時に再発された筈。ただ今でも容易く入手出来るか否かは判らず仕舞い。

その内容を捉えればハードロック黎明期に当たるサウンドで、全体的にはオルガンが主導権を握っていると判るサウンドで、曲によってはサイケらしい若干チープなオルガン音もあるが、アヴァンギャルド且つアグレッシヴなソロでリスナーの耳は間違いなく満足させてくれる筈。もちろんG奏者も全編に渡ってヘビィなファズ音で迫っているが、これが明らかにR&Bを昇華した形のヘビィ・サイケといった事になろうか。

リズム隊におけるボトムの効いていない手数の多いドカスカDsの録音に多少まずさが感じられるものの、ハードロック・テイスト満載ともいえる、ソリッド感にも重量感にも富んだウネリまくるBsは◎。特に10分にも及ぶ長尺曲はバンドにおける世界観が反映されたもので、Bsはもちろんの事、特にGとオルガンの活躍が目覚しく映るものとなっている。取り合えず最大の聴きどころといった事になるが、Voにおける歌メロや歌唱法が曲によっては60年代におけるビートロック的要素を醸すものの、全体的には熱唱型Voで、それは楽曲全てに共通する訳ではないので、取り合えず一安心といった処。

疾走感溢れる曲からプログレ・テイスト漂う曲に至るまで、バラエティーに富んだ楽曲(全12曲)の数々は一貫してヘビィ・グルーヴ感に満ち溢れており、当時におけるヘビィ・サイケと呼ばれるサウンドの本質がはっきり曲に具現化されたもので、捨て曲もなく最後まで飽きを来させず楽しめるのが最大の魅力と言った処。

 

          70年アルバム

 

曲によっては録音のまずさが足を引っ張っているのですが、それは全ての楽曲に共通する事ではないし、弱小レーベルでの70年録音といった事を鑑みれば、決してネガティヴ材料にはならないと思えます。北欧のバンドらしく陰影に富んだそのサウンドは、僅かにアシッド感が漂っているのですが、これがB級アルバムが醸す独自性と感じられる部分で、ヘビィ・サイケとして聴くのであれば、ヘビィ・プログレ・ファンの方々からハードロック・リスナーの方々まで文句なくお薦め出来るのではないでしょうか。日本ではほぼ無名に近いバンドなるが故に、ここで初めてバンド名を耳にされた方も多いと思われるのですが、是非一度YOUチューブを検索してサウンドを確認してみて下さい。きっと期待に応えてくれる筈です。