時代遅れのサウンドではあるがファズ音を特長とするヘビィサイケとして今聴けば非常に新鮮 /エニグマ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

AINIGMAはドイツで結成されたKb兼Vo、G兼Bs、Dsの三人から成るバンドで、アルバムは73年にリリースされたものが唯一となっているが、独産である事やB級アルバムといった事から、間違っても当時国内アナログ盤はリリースされていない筈。

その内容は73年になってもG音が歪み切った荒々しいファズ音といった、かなり時代遅れ感は否めないサウンドで、チープと感じられる少し懐かしくも感じられるオルガン音が更にそれに拍車をかけているものの、曲の背後では主旋律を追いながら常に鳴り響いており、G奏者程ではないもののソロに限れば同等の自己主張。それが故に紛れもなくヘビィサイケと受け取れるサウンドとなっており、逆に今になって聴けばそれが新鮮で堪らない魅力となって映るもの。中でも18分にも及ぶ長尺ナンバーはメンバーにおける技量の全てが詰まったもので、Dsソロの必要性までは感じられないものの、バンドの本質が表れた一番聴き応えのある曲。ただ楽曲としての完成度まで問われれば少し返答に困るが、全体的にはクラシカル・テイストやジャズ・テイストまで感じさせてくれる楽曲構成で、楽曲そのものが少しダウナーと感じられると同時に、意外にヘビィとも感じられた事から、サイケを少し引き摺るヘビィ・プログレと言った処。結果的に何がこのアルバムの魅力かと言えば、ヘビィなファズ音とサイケを醸す懐かしいオルガン音で彩られたサウンドそのものと言った事になろうか、、、、

                 73年アルバム

 

このアルバムにおけるオリジナル・アナログ盤はプレス数が少な過ぎてレア度が余りにも高く、とても今では手が出せない状況にありますが、既にCDも再発されているので容易く入手可能な状況となっています。自身は再発アナログ盤を90年代に入って購入したのですが、カバーアートが初回プレスとは全く異なるものの安価で購入出来ました。73年における録音にしては各楽器における分離も悪く、おまけにクリアーさにも欠け、更にモノラル録音の様にも感じられるステレオ感の乏しいサウンドや、余りにもナロウレンジと言える録音の悪さが、味気なさ過ぎるモノクロ・カバーアートと並んで購入時における足を引っ張る材料と思えるのですが、音楽業界における今までの評価(悪い!)とは裏腹に、その内容だけを捉えればヘビィサイケとして間違いなく楽しめるし、個人的には是非にとまでは行きませんが、充分お薦め出来るアルバムだと眼に映りました。それが故に少しだけ音の良い海賊盤として割り切って聴く事が肝心かと思えます。