G奏者成毛滋の腕が遺憾なく発揮された誰もが認める和製パワートリオ /フライド・エッグ | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

FLIED EGGは当時における和製ロックとしてもロック・ギタリストとしても、草分け的な存在の一人であるKb兼G奏者の成毛滋を中心に結成されたバンドで、それにBs奏者である高中正義とVo兼Ds奏者の角田ヒロが加わったハードロック・トリオ。成毛滋は若くして他界されたが、他の二人はハードロック・ファンのみならず誰もが一度は耳にした事のあるアーティストで、高中はギタリストとして後に有名になり、角田は元々ジャズ・シーンで活躍していた当時でも知名度の高いパワー・ドラマー。しかも今でもカラオケで歌われている名曲「メリー・ジェーン」は角田が作者。これから紹介するアルバムは72年にリリースされたデビューアルバムで、このバンド名義では同じ72年にライブ・アルバムもリリースされたが、それは自身の好みから避けて通るとして、今回紹介するのは1stアルバム。

このアルバムは三人の奏者における個性、あるいは技量やセンスが余す事無く発揮されたもので、特にオルガンやシンセなども操るG奏者の独壇場とも言えるもの。そのサウンドは成毛による硬質且つ艶のあるディストーション・ギターが全編に渡って冴えまくったものであるが、彼のGサウンドの特長はそのG音(レスポール)もさることながら、J・ペイジに影響を受けたと直ぐ判るリフや速弾きフレーズで、K・ヘンズレイやK・エマーソンにインスパイアされたと判る少し歪んだオルガンも多用されているが、全体的にはハードロック然としながらも、KbやシンセにSEまで導入されている事から、少しプログレッシヴとも映るサウンド。

主役となるG奏者の最も得意としたのは、他のアーティストにインスパイアされた曲の良い部分だけを切り取りながら楽曲構成する事で、それが故に曲自体のクォリティは非常に高いものとなっているが、良く言えばオマージュ、悪く言えばパクリ。もちろんその中にはあからさまにZEPP(GソロやGフレーズ)、ヒープ(ワウワウを通したハイ上がりのG音や主旋律)、それにK・クリムゾンやEL&P(タルカス)からと直ぐ判るオルガンによる主旋律の一部やGフレーズもあったりするが、秀逸なアレンジも含めて別な意味で圧倒的完成度を誇るアルバムの一つとなっている。もちろん重量感に富んだリズム隊も文句の付けようのないサウンド及び技量で、角田や高中による英詩発音による渋く味のあるVoやコーラスワークは、馴染み易い歌メロも含めてリスナーの耳を捉えて放さない。それにしてもバラエティーに富んだ楽曲群は最後まで飽きを来させず聴けるし、しかも全く捨て曲もなく安心して聴けるのは成毛によるアレンジの賜物で、Gの技量も一流と言えるがアレンジャーとしての腕は間違いなく超一流。それに加えて各楽器における録音バランスが良く、この72年にしてはサウンドがクリアーな部分も◎。 とにかく素晴らしい出来栄えである事だけは確かで、ハードロックとしてもヘビィ・プログレとしても70年初頭にデビューした和製ハードロック・バンドの中では、技量及びセンス共に最高峰に位置するバンドと言えようか。ただ唯一残念な部分があるとすれば、先に触れた様に楽曲における圧倒的完成度とは裏腹に、他のバンドからの借り物が多いが故にオリジナリティに若干欠ける事だけ。

 

             72年1stアルバム

 

自身はリアル・タイムで70年代における多くのハードロック・アルバムに触れて来たせいもあってか、聴き慣れたフレーズやリフは直ぐ誰々が元ネタと判るだけに、多少のダメ出しは自身における更なる欲と捉えて頂ければとそれでよいと思います。これだけの作品を残しながら日本や海外での評価が低かったのは、同じ時代に活躍したフラワー・トラベリン・バンドやファーラウトが余りにも独自性のある楽曲で勝負した事にも関わってくると思えるのですが、個人的には単純に練られた楽曲そのものがカッコイイといった理由から名盤と位置付けているアルバムで、背中を押してでもお薦めしたい一枚です。間違いなくハードロック・ファンの方やヘビィ・プログレ・ファンの方々の期待に応えてくれる筈ですが、このアルバムは再発を繰り返している事から今でも容易く入手出来るのではないでしょうか。