歪み切ったヘビィなファズ音が曲を支配するヘビィ・サイケ・サウンド /アーセン・ヴェッセル | ハードロックは我が人生そのもの

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70年代のハードロックはバンドによる個性もあって、独特なサウンドを創り出しています。その中で特に印象に残ったバンド、あるいはこれだけは是非聴いて欲しいと思えたアルバムを、これから随時紹介していきたいと思います。

EARTHEN VESSELはVoを兼任した二人のKb奏者にG、Bs、Ds奏者が加わった五人編成のアメリカで結成されたバンド。二人のVoの中一人は女性/シャロン・キールで、カバー・アートに映っている写真から窺う限り、がっちりした体格の良い女性といった処。もちろん全員が解散後に活躍したとは聞いていないほぼ無名に近い奏者。アルバムは71年にリリースされたが、当時におけるアナログ盤は取引価格が天井知らずのマニア垂涎の一枚。

その内容は71年であるにも拘わらず、ヘビィな上に歪み切ったファズ音が全編に渡って作品を支配したもので、R&B色の濃いヘビィ・サイケといった処。サウンドを決定付けているのは自ずとG奏者という事になるが、時にはワウ音を交えながらブルージーでメロディアスなソロを炸裂させたりと縦横無尽の活躍。ただ決して上手いとは言えないのが難点、、、女性Voは決してシャウトしない中音域重視のハイトーンで、コーラスを交えながら曲によっては男性Voと一緒に歌い上げるが、この落ち着いた声質に何故か癒される思い。ただ意外にも男性Voの声質や歌唱法がハードロックのそれで、もっとソロで歌ってもよかったのにと思わせる部分。Kbの出番は非常に少ないものの、ソロを取らないだけで僅かに曲の背後で存在感を示している。

リズム隊の中Bsはしっかりボトムを支えているにも拘わらず、Dsサウンドがチープ過ぎて躍動感が感じられず、少し下手くそに映るのが残念。ただ自身がアルバム全六曲中捨て曲もなく楽しめた事を思えば、それなりに完成度の高いアルバムといった事になるのかも、、、、

 

                       

 

全体的にそのサウンドを捉えれば、コーラスを交えた歌唱スタイルにビート・ポップ~サイケ・テイストが感じられるものの、強烈過ぎるファズ音と意外にヘビィと感じられた重量感に富んだサウンドは、間違いなくハードロックと呼ぶに相応しいものです。このアルバムは71年リリースにしては少し時代遅れとも言えるサウンドですが、それが今聴けば逆に新鮮と眼に映りました。自身は忘れた頃に当時に想いを馳せながら歪んだファズ音に聞き入っていますが、ヘビィ・サイケとしてもハードロックとして充分お薦め出来ると思えます。