『雨上がり月霞む夜』 西條奈加
江戸時代の大阪。
紙問屋を営んでいた秋成は、火事で店を失い、幼なじみの雨月の庵に居候することに。妖しの見える雨月がうさぎの大妖怪・遊戯と出会ったことから、彼らの運命が動き出す。
江戸怪異譚の傑作『雨月物語』に大胆な現代的新解釈を試みた連作短編集。
『雨月物語』という怪奇小説の存在は知っていましたが、いつ誰が書いたかなどは知らずに読み始めました。
途中で「面白いな~。元になった話も読んでみたいなぁ。」と調べて初めて、『雨月物語』の作者が“上田秋成”だと知りました。
そして、各タイトルも『雨月物語』の中の作品名と同じか似たようなものがつけられていることに気づきました。
あぁ、秋成が雨月と遊戯との体験を元に書いた物語が『雨月物語』になる、というお話か~と思いながら読んでいましたが、なるほど、そうきましたか。
死者の霊などは出てくるけれど、それが直接事件に関わるわけではない、というのが良いですね。
どれもわりと辛くて哀しい話だったけど、一番辛かったのは「菊女の約」でしょうか。
一番好きなのは「磯良の来訪」か「邪性の隠」かな。
秋成は「紺頭巾」の戒安に同情してたけど、私はそこまでは思えませんでした。
当時けして珍しい話ではなかったことはわかっていますが、今だと児童虐待とかグルーミングとかだからな?
雨月の秘密については、なんかBUMPの歌詞っぽいですね、と思いました。
秋成の姉、おわきが良いキャラしてますね。あと、遊戯と蒹葭堂も好きです。
“幽霊や妖怪は、人とは相容れぬ化け物ではなく、執着や苦悩を引きずる弱い存在。いわば世を移す鏡に等しい。”
という文に、あーなるほど。と思いました。